式(
5)は,無限に長い電流が作る磁場である.これが
分かると,微小な長さ
![$ \mathrm{d}z$](img48.png)
が作る磁場の式が欲しくなる.磁場は全ての電流を積分
して得られる--となると理論を考えるのに大変都合が良い.図
13のような状況を考える.図中の点
![$ \mathrm{P}$](img49.png)
の作る磁場は,
式
5から分かっている.ここの磁場は,
![$ \mathrm{d}z$](img48.png)
が
作る磁場
![$ \mathrm{d}B$](img50.png)
を足しあわせたもの--積分--になるはずである.したがって,
![$\displaystyle \frac{\mu_0}{2\pi}\frac{\boldsymbol{I}\times\boldsymbol{R}}{R^2}=\int_{-\infty}^\infty f(\boldsymbol{I},\boldsymbol{r})\mathrm{d}z$](img51.png) |
(16) |
となる
![$ f(\boldsymbol{I},\boldsymbol{r})$](img52.png)
があるはずである.このように表すと,
![$ \mathrm{d}z$](img48.png)
が作る磁場
![$ \mathrm{d}B$](img50.png)
は
![$\displaystyle \mathrm{d}B=f(\boldsymbol{I},\boldsymbol{r})\mathrm{d}z$](img53.png) |
(17) |
となる.ここまでくれば,
![$ f(\boldsymbol{I},\boldsymbol{r})$](img52.png)
の関数形を求めることあ重要な問題となる.
ビオとサバールはここまで考えて歴史に名前を残した.だれでもここまでたどり着ければ,
関数形を見つけることはできるであろう.科学史に名前を残すためには,時代の最先端に
たどり着くことが如何に大事か--がわかる.
がベクトルなので,
もベクトルになる必要がある.幸いな
ことに,磁場
は電流
とも位置
にも垂直である.そこで,微小磁場
は,ベクトル積
に関係がある--と類推できる.また,遠
距離
が離れると,磁場が小さくなることも理解できるであろう.問題は距離の何乗で
小さくなるか?--である.ここでは,距離の2乗としてみよう.間違っていれば,1乗に
したり,3乗にしてみて,正しい関数形を探せばよい.科学史に名前を残すことを考える
と,これくらいの努力をしてもよいだろう.これまでの直感から,
![$\displaystyle \mathrm{d}\boldsymbol{B}=k\frac{\boldsymbol{I}\times\boldsymbol{r}}{\vert\boldsymbol{r}\vert^3}\mathrm{d}z$](img59.png) |
(18) |
とかける.比例定数の
![$ k$](img60.png)
は後から調整すればよい.
この式を地道に積分を行う.計算する積分は
![$\displaystyle \boldsymbol{B}=k\int_{-\infty}^\infty\frac{\boldsymbol{I}\times\boldsymbol{r}}{\vert\boldsymbol{r}\vert^3}\mathrm{d}z$](img61.png) |
(19) |
である.ベクトルの積分となっており,通常はやっかいである.しかし,幸いなことに,
![$ \boldsymbol{I}$](img55.png)
と
![$ \boldsymbol{r}$](img56.png)
はいつも同じ平面内にあり,
![$ z$](img62.png)
の位置が変わってもベクトル積の向
きは変化しない.したがって,スカラーの積分を行った後,方向を考えればよい.
この結果と式(
5)を比べる.先の述べたように方向
は合っている.また,係数
![$ k$](img60.png)
を
![$\displaystyle k=\frac{\mu}{4\pi}$](img70.png) |
(21) |
とすれば,大きさも合う.したがって,微小領域
![$ \mathrm{d}z$](img48.png)
がつくる微小磁場
![$ \mathrm{d}
\boldsymbol{B}$](img71.png)
は
![$\displaystyle \mathrm{d}\boldsymbol{B}=\frac{\mu}{4\pi}\frac{\boldsymbol{I}\times\boldsymbol{r}}{\vert\boldsymbol{r}\vert^3}\mathrm{d}z$](img72.png) |
(22) |
と考えても良い.普通,これをビオ-サバールの法則と言う.また,
![$ \boldsymbol{I}\mathrm{d}z$](img73.png)
を
![$ \mathrm{d}\boldsymbol{I}$](img74.png)
として,
と書かれる場合もある.
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Yamamoto's laboratory著者:
山本昌志
Yamamoto Masashi
平成18年6月22日