実際に電場を計算するためのもう少し便利な式を導いておこう.静電場をあらわす一般化
されたクーロンの法則の式(
10)は
と書いてもよい.体積分の積分変数は
![$ \boldsymbol{r}^\prime$](img86.png)
で,勾配
![$ \nabla$](img87.png)
の微分の変数
は
![$ \boldsymbol{r}$](img88.png)
と異なるから,微分と積分を入れ替えることができる.ここで,右辺にある体
積積分を
![$\displaystyle \phi(\boldsymbol{r})=\frac{1}{4\pi\varepsilon_0} \int_{V^\prime} ...
...{r}^\prime)}{\vert\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r}^\prime\vert} \mathrm{d}V^\prime$](img89.png) |
(20) |
とする.これは,全ての空間--宇宙全体--にわたっての積分である.この積分の値
![$ \phi$](img90.png)
をスカラーポテンシャルと言う.このスカラーポテンシャルを導入することにより,
電場は,
![$\displaystyle \boldsymbol{E}=-\nabla \phi$](img91.png) |
(21) |
と簡単に計算できる.以前,任意のベクトル場は管状と渦無しの場に分解できると述べた.
この式から,静電場は渦無しのベクトル場で,管状の部分が無いことが分かる.
次にスカラーポテンシャルの性質を調べる.電荷
を静電場の中に置くと,
と
いう力を受ける.その力に抗して,その電荷を
点から
点まで,移動させるのに必要
な仕事
は
となる.以前,勾配
![$ \nabla $](img102.png)
の積分のところで説明したように,この積分は経路に依存
しない.積分の両端の場所のみによって,この仕事量
![$ W$](img103.png)
は決まるのである.仕事量
![$ W$](img104.png)
は,
![$ A$](img105.png)
点に比べたときの
![$ B$](img106.png)
点での電荷
![$ q$](img107.png)
が持つエネルギーの増加をあらわしている.
![$ q\phi$](img108.png)
を位置によるエネルギー,すなわちポテンシャルエネルギーと解釈することがで
きる.よく考えると,この
![$ \phi$](img109.png)
は電圧の定義とも等しい.ポテンシャル
![$ \phi$](img110.png)
と言っ
ているが,これは電圧と言い替えても差し支えない.
式(18)から,電場の周回積分はゼロと分かっている.従って,
となる.これは,微小区間での電位差
![$ \nabla \phi \cdot\ell$](img112.png)
を足しあわせて,任意の閉
じた経路を積分するとゼロになると言っている.これは,回路で使うキルヒホッフの法則
の片割れである.式(
23)は静電場で適用され,キルヒホッフの法則は
交流のように時間的に変化する回路でも成立する--と言う反論がある.通常の回路の大
きさは,その動作周波数の波長に比べて,十分小さい.そのため,電磁気学的に見ると,
ほとんど静電場で近似できる.したがって,波長よりも十分小さい普通の回路では,式
(
23)は良い近似となる.一方,波長が短くなり,回路と同程度の大きさに
なると,もはやキルヒホッフの法則は成り立たなくなる.
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Yamamoto's laboratory著者:
山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年7月12日