1 はじめに

1.1 身近にある論理回路

現代社会では、コンピューターをはじめ数多くのデジタル回路が使われていま す。一般家電においてさえ、デジタル回路が使われていないものは無いと言え ます。デジタル回路は、演算をする回路や記憶する回路から構成されています。 これらの演算や記憶2 の回路は、論 理素子というものを組み合わせて作ることができます。論理素子を組 み合わせて作られた回路を論理回路と言います。これからは、その論理 素子を組み合わせた回路の学習をします。

実際の論理素子は、図1のような外観のICの形で販売され ています。その中身の回路については、いろいろな種類がありその例を図 2に示します。近頃の電子機器では、このような論 理素子をそのまま使うことはまれですが、皆さんも見たことがあるでしょう。 これらのIC は1個あたり数十円で売られています。実際の工業製品では、それ よりもずっと安く仕入れて製品に組み込んでいます。

図 1: 論理回路用IC
\includegraphics[keepaspectratio, scale=0.6]{figure/IC_packeg.eps}
図 2: 論理回路用のICの例。$ V_{CC}$には電力+5[V]を供給し、GNDは0[V]のグ ランドに接続する。
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/logic_IC.eps}

1.2 組み合わせ回路と順序回路、そしてコンピューター

最も基本的な論理素子は、ANDとOR、NOTです。それらを表すMIL論理記号を図 35に、その動作を表 23に示します。こ の3つの回路を組み合わせることにより、どんな演算も可能な回路ができます。 お望みの入出力関係の回路ができます。非常に驚きですが、これは今まで学習 した通りです。どんな真理値表でも論理式で表せたのですから。このように、 入力に対して、そのまま1対1で応答する回路を組み合わせ回路と言います。残 りの授業ではこの組み合わせ回路について学習します。

一方、そのとき入力のみで応答が決まらず、以前の結果も合わせて演算を行い 出力が決まる回路を順序回路といいます。この順序回路は、記憶する回路が組 み込まれています。このようなものをフリップ- フロップ回路といいます。こ の記憶する回路が、ANDやOR、NOTの素子でできます。これも驚くべきことです。 順序回路の学習が完了して、時間があればこれについても講義を行います。

どんな演算もできて、記憶すらできるのですから、コンピューターが可能とい うことです。この3個の素子、ANDとORとNOTでコンピューターが作れるのです。 驚きでしょう。コンピューターは非常に複雑な機械ですが、元をただせば非常 に単純な回路の組み合わせです。インテル社の最新のCPUであるPentiumは約 7700万個のトランジスタが使われています。論理素子は、数個のトランジスタ で可能ですから、そのCPUの中の論理素子の数は大変なものです。

図 3: OR素子
\includegraphics[keepaspectratio, scale=0.7]{figure/OR.eps}
図 4: AND素子
\includegraphics[keepaspectratio, scale=0.7]{figure/AND.eps}
図 5: NOT素子
\includegraphics[keepaspectratio, scale=0.7]{figure/NOT.eps}

  • 1. OR回路の動作
  • 2. AND回路の動作
  • 3. NOT回路の動作
  • 表 1: OR回路の動作
    入力[V] 出力[V]
    $ A$ $ B$ $ C$
    0 0 0
    0 5 5
    5 0 5
    5 5 5
    表 2: AND回路の動作
    入力[V] 出力[V]
    $ A$ $ B$ $ C$
    0 0 0
    0 5 0
    5 0 0
    5 5 5
    表 3: NOT回路の動作
    入力[V] 出力[V]
    $ A$ $ B$
    0 5
    5 0
       


    ホームページ: Yamamoto's laboratory
    著者: 山本昌志
    Yamamoto Masashi
    平成19年8月20日


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