1 はじめに

1.1 ジョージ・ブール

ブール代数は、コンピューター科学の基本中の基本です。その代数の創始者が ジョージ・ブール(イギリス 1815-1864)です。ブルーバックスの「10人の大数 学者-現代数学を築いた人々-」[1]に書かれて いるくらい業績のある人です。

ブルーバックスでは、次のように書かれています。

イギリスの小都市リンカーンに生まれた。職人の子として生まれたが、ブー ルは貧乏人の行く「ナショナルスクール」を出て、独学で数学を勉強する。 彼は語学の才能にも恵まれていたようで、小学校の助教諭をし、数学の変分 法についての論文を初めての仕事として書く。更に不変式論、微分方程式の 演算子法にも貢献し、アイルランドのコーク大学の教授になる。何よりもブー ルの名を今日まで不滅にしたのは、ブール代数としてコンピュータ理論に適 用されている記号論理学の創造である。彼は有名な書「思考の法則」を書い た。残念にも若くして50才でなくなった。
更に、日本評論社の「現代応用数学の基礎」 [2]には、次のように書かれています。
イギリスの貧しい階層で、ほとんど独学で数学を学び、産業革命の要求から そのころに生まれた初等公教育で、小学校の臨時講師をしていたのがブール である。その業績がアカデミズムに知られるようになってからも、彼の関心 は初等教育とともにあり、ときに大学アカデミズムと対立した。彼の仲間に は、バベッジやド・モルガンなどがいて、差分解析や計算機のような、あま りアカデミックでないことに関心があったが、それはコンピュータ科学のさ きがけだったし、初等数学の代数的考察は現代数学の契機のひとつでもあっ た。イギリスの草の根アマチュアリズムの根強さを感ずる。

これからすると、かなり魅力的な人物であったように思われます。

1.2 何ゆえブール代数を学習するか?

コンピューターを代表とするデジタル回路は、それぞれが単純な機能をもつ何 万、あるいは何百万もの回路から構成されています。ある機能を有する回路を 設計する場合、エンジニアーは費用最小の回路を考えます。ブール代数は、こ の回路を設計するときに使われ、費用最小の回路を見出すためにに非常に有用 です。例えば、ブール代数を使うことにより、図1に示すよう に回路が単純化できます。

ブール代数という数学の規則に従えば、回路を単純化することも、あるいは複 雑な回路を設計することも可能になります。ブール代数という道具を使って設 計すると、技巧に頼ることなく、決められた手順に従うことで目的の回路設計 が出来ます。要するにスイッチの回路を数式で表すことができるのです。

ここで示したのはただのスイッチですが、学習するデジタル回路はほとんど同 じです。ただ、スイッチとは呼ばずにゲートと呼びます。

図 1: (1)と(2)の回路は等価であることがブール代数により確認できま す。$ A, B, C$のスイッチは1の閉で0のとき開です。 $ \bar{A}, \bar{B},
\bar{C}$は逆です。
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/Switch.eps}

我々はデジタル回路を設計する道具としてブール代数を使いますが、それ以外 にもこの数学的手法は有効です。もともとは論理的思考の道具として考えられ たので、それへの適用は簡単です。ブール代数を一通り学習した後、論理的思 考にどのように役立つか考えることは良いことです。



ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年8月20日


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