1 はじめに

以前、常微分方程式の数値計算の学習を行った。数学の授業で学習したように 常微分方程式は、変数が1個である。それに対して、2個以上のものを偏微分方 程式と言う。実際、自然現象は常微分方程式よりも、偏微分方程式で記述され る場合が多い。常微分方程式が役に立たないと言っているのではなく、より広 範囲には偏微分方程式が使われているということである。自然界が、$ (x, y,
z)$の3次元と時間$ t$を合わせた4次元で成り立っているためである。

ここでは、偏微分方程式、特にラプラス方程式を差分法というテクニックで数 値計算する方法を学習する。偏微分方程式は、いろいろなものがあるが、最初 に学習する分には、意味がわかりやすいラプラス方程式が良いと言うことで教 材に選んだ。例えば、図1の静電磁場や、図 2の熱の問題に、この方程式は表れる。

図 1: ポテンシャルを求める問題。
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/potential.eps}
図 2: 温度を求める問題。
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/temperature.eps}

1は、紙面と垂直方向に無限に長い正方形の金属筒に、 電線が2本通っている。正方形の筒は0Vにアースされており、2本の電線はそれ ぞれ、30Vと-20Vである。この状態で、筒内部のポテンシャル(電圧)の分布を 求めなさいという問題である。

2は、紙面方向に非常に長い豆腐があり、その周りは0 ℃の水で満たされている。そして、その豆腐に30℃と-20℃の金属棒が突き刺 さっている状況である。豆腐内部の温度分布を求めなさいというのが問題であ る。

これらは、物理的には異なる問題であるが、ポテンシャルや温度が満たす方程 式は同じである。方程式が同じならば、解は同じである。これらが満たすのは ラプラス方程式

$\displaystyle \nabla^2 \phi = 0$ (1)

と言われるものである。$ (x,y,z)$の3変数の偏微分方程式である。ここでは、 3次元の問題は大変なので、

$\displaystyle \frac{\partial^2 \phi}{\partial x^2}+ \frac{\partial^2 \phi}{\partial y^2}=0$ (2)

の2次元の偏微分方程式を数値計算により求めるものとする。ここでの学習の 最後には、図3を求める。
図 3: 差分法により計算された、ポテンシャルや温度のグラフ。
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/solution.eps}



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著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年8月21日


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