電話が発明されたのは、1876年のことです。しばらくの間、電話での長距離通
話はできませんでした。というのは、電線の抵抗などにより、音声信号の電力
が途中で減衰するからです。それを回避するためには、どうしても減衰した音
声信号を元の大きさに戻す増幅器が必要となります。まず、その問題を解決し
たのが真空管の一種である3極管の発明です。1906年のことです。これにより、
長距離の通話が可能になりました。
初期、特定の加入者へ電話回線を接続するためには、電話交換手と言われる人
が電線をつなぎ変えていました。しかし、加入者が増加すると間に合わなくな
り、リレーと呼ばれる電気機械式のスイッチが使われるようになりました。
この、真空管とリレーで電話は大きく発展しましたが、それぞれに問題を抱え
ていました。
- 真空管のヒーターは電球のフィラメントのようになっています。電球
が球切れを起こすように、真空管も球切れが生じます。数多くの真空管
を使うと、その球切れは重大な問題になります。例えば、世界最初の電
子計算機ENIACは、約20000本の真空管が使われていました。平均寿命を
2000時間とすると、6分に1個の割合で故障します。これは、問題だー。
- 次の問題は、リレーです。リレーというものは機械的な接点があり、
それがついたり離れたりすることでスイッチになっています。これをと
てつもない回数ONとOFFを繰り返すと、接点の接触不良が生じ、もはや
スイッチとして働かなくなります。大量の電話回線があると、それに応
じたリレーがあり、絶えずその故障に悩まされます。これも問題だー。
というようなわけで、フィラメントの無い増幅素子、機械動作の無いスイッチ
が求められていました。増幅素子とスイッチは同じ素子で可能です。これらを
実現するために、米国のATTのベル研では固体増幅素子の開発がはじまりまし
た。
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著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年8月22日