電荷分布が与えられたときに電場を求める方法は、今まで学習した3つの方法
- 電場の重ね合わせを使う方法
- ガウスの定理を使う方法
- スカラーポテンシャルを微分する方法
がある。復習を兼ねて、それぞれの方法について説明しておく。静電場の問題
を一般化すると、図
1のようになる。体積

の中に、電
荷が密度

で分布している場合、位置

での電場

を求めるのである。
最初の方法は、クーロンの法則をそのまま適用して、電場を計算することで
ある。これは、最も原始的で最も効率の悪い方法であるので、通常は使われな
い。
クーロンの法則
と電場の定義式
から、離散的な電荷

の場合、電場は
である。これを連続的電荷分布

、すなわち電荷密
度に置き換えた場合、
となる。このベクトルの式を、成分で書き表すと、
となる。もちろん、

という関係を用いている。この式(
5)を使えば、
電荷密度分布が分かっていれば、どんな静電場の問題でも解けるといえる。し
かし、実際に積分が面倒なので、ほとんどの場合、この式を使うことは無い。
通常、このような積分はうんざりするほどの手間がかかり、コンピューターで
ないと計算できないであろう。
クーロンの法則を直接使って計算するような問題は、次のようなものがある。
- 問
- 距離
離れて、2つの電荷
と
が存在する。その2つの電
荷の直線上での電場を求めよ。
先週の授業でやったように、クーロンの法則から、ベクトル解析の知識を使う
とガウスの法則
|
 |
積分形 |
(6) |
|
 |
微分形 |
(7) |
を導くことができる。実際に、電場を計算する場合、この積分系を使うことが
多い。
例えば、次のような単純な例を解く場合である。この単純な例ですら、クーロ
ンの法則を直接適用して、計算できないことが分かる。対称性の良い問題の場
合は、ガウスの法則は強力である。
- 問
- 半径
の球の中に、電荷密度
で電荷が一様に分布している。
球の内外での電場を求めよ。
3つめの方法は、スカラーポテンシャルを求めて、それを微分することにより
電場を計算する方法である。この方法が、最も汎用的で、複雑な問題を解く場
合、一般的に用いられる。
先週、示したようにスカラーポテンシャルは、
 |
(8) |
と定義される。このスカラーポテンシャルが満たす方程式は、この式を微分形
のガウスの法則に放り込めば導くことができる。これは、ポアソン方程式
と呼ばれる、偏微分方程式である。今までの、クーロンの法則やガウスの法則
から電場を計算する場合、ベクトルの演算が必要で大変であった。しかし、こ
のポアソン方程式は、スカラーなので、計算量が減り楽である。ただし、電場
を求める場合、このスカラーポテンシャルの微分が必要ではある。
先週述べたように、このポアソン方程式の一般解は、
である。微分方程式(
9)、あるいは積分の式
(
10)を計算して、スカラーポテンシャル

を求める。そして、電場は、それを微分すれば求められる。
 |
(11) |
次のような問題に、このスカラーポテンシャルを適用できる。
- 問
- 半径
の円板に面密度
で電荷が一様に分布していると
き、円板の中心軸にそって、円板の中心から
の距離での電場を求
めよ。
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Yamamoto's laboratory著者:
山本昌志
Yamamoto Masashi
平成16年9月28日