1 電流と磁場の関係の歴史

最初に磁石による力、磁力を発見したのは誰かは分からないが、その解析的な 研究の先鞭をつけたのは、コペンハーゲン大学のエルステッド教授(Hans Christian Oersted, 1777-1851)であろう。彼は、1819年から1920の冬に、電 気学や磁気学の講義をしていた。当時、電流と電荷の間には何か関係があると 考えていた人がいた。どちらも、触るとビリッとするからである。なんとも、 頼りない理由ではあるが、そう考えたのは偉い。ただ、エルステットの方は、 少し変わっていて、電流と磁石になんらか関係があると考えたようである。

どのようにして、この考えに至ったかは分からないが、電流を流すと方位磁石 は力を受けて、方向が変わると考えた。磁石は力を受けて、電流と同じ方向、 あるいは反対の方向に向くと考えた。これはもっともなことで、電線に流れて いる電流が、磁石の北の先端が受ける力は、対称性から考えて、右や左である わけがない。電流と同じ方向か、その反対である。そこで、学生の前で、図 1のように、磁石と電線を配置して、スイッチを入れた。 結果は、期待に反して、磁石は動かなかったのである。これは、磁石の方向と 電流が作る磁場の方向が一致していたために動かなかったのである。ここで、 電流を反対にすれば、磁石が180度回転して、それはドラマチックなことが起 きたはずであるが、なぜかエルステットは、反対に電流を流していない。それ にしても、1/2の確率でエルステットは運がなかった。

しばらく、自分の考えがうまくいかないことに、悶々としていたエルステット は、何を思ったか、あるいは実験を間違えたか、磁石と電線を同じ方向に向け て、電流を流した。そうすると、磁石が90度回ったのである。これには、エル ステットも驚いたに違いない。対称性から考えて、どうしてもありえないこと が起こったのである2。 1820年の春のことである。エルステットはなかなか納得がいかなかったが、実 験を繰り返し、その事実を認めた。そして、その発見について、その年の7月 に報告書を書いた。

この報告書が他の研究所に届くや否や、多くの実験が行われ、新たな発見が相 次いだ。

図 1: 東西に電線を張る
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図 2: 電線を南北に張る
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ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成16年10月22日


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