1本の直線電流
のつくる磁場
は
となる。この式から、半径
での線積分は
となる。この結果は、磁場が直線電流からの距離の
に比例することから、
容易に予想できる結果である。重要なことは、直線電流からある距離離れた磁
場の線積分は、距離に依存しないことである。
これは、ガウスの法則、点電荷の作る電場の面積分が、距離に依存しないのと
同じである。この場合も、最初、球の中心に点電荷を置き、一般的に閉じた面
で成り立つことを示した。同じことを、ここでも行う。教科書の方法を詳しく
説明する。積分路を変形させると、
と書くことがで
きる。磁場の方向、すなわち
の方向は、に平
行で、とには垂直となる。したがって、積分は先ほどと
同じで、
となる。閉じた線路での積分はいつも同じ値になる。今までは、1本の直線電
流であったが、磁場は重ねあわせができるので、複数本でも成り立つ。あるい
は、電流がデルタ関数のように離散的ではなく、連続的な分布で、ある密度
(
)として存在する場合も成り立つ。これらは、磁場が重ね合わせの原
理が成り立つからである。したがって、
となる。右辺は、線積分を囲む電流の総和になっていることに注意が必要であ
る。
ところで、この積分の外側の電流の寄与はどうなるのであろうか?。外側の電
流であろうとも、この積分路には磁場を発生させる。結論を先に言うと、
- 外側の電流による磁場はあるが、積分を行うとゼロになる。
である。このことは、電荷でやったのと同じことを行えばよい。
式(
4)の積分範囲を十分小さくすれば、その微分の法
則が得られる。面積分の面の法線方向は電流の方向として、その範囲を非常に
小さくすると、式(
4)は
となる。
が積分範囲の面積である。これの極限と取る操作をすると、
|
(6) |
となる。この式の左辺は、回転の定義であるので、
と書き改めることができる。スカラーの式がベクトルになったことは、少しカ
ンベンしてほしい。ちゃんとすれば、これらの曖昧さもなくなるはず。
あるいは、式(4)をストークスの定理を用いて、
と変形する。これから、式(
7)を導くことができる。
これで、磁場の回転が求まったわけである。安心するのはまだ早い。磁場を決
めの式は、もうひとつ必要である3。磁場の発散を求めなくてはならない。
今まで、考えてきた、1本の長い電線が作る磁場を考えよう。磁場は、電線の
周りに回転としてできる。このような場合、どのような微小の体積を考えても、
その発散はゼロである。要するに、どんな部分をとっても、入ってくる磁場の
フラックスと出て行くフラックスは等しい。これは、たとえ、電線を取り囲ん
だ体積を考えても、そうなる。
電場の場合は、電荷から電気力線が出ていて、どこか無限遠点に行くか、反対
の電荷に吸収されていた。磁場の場合、磁力線は閉じた線である。このことが
正しいとすると、磁場の発散
|
(9) |
となる。いままで、この式に反する観測結果は得られていない。したがって、
この磁場に関する発散の式は正しいとする。この式は、電荷に相当する磁荷は
無いと言っている。
これで、磁場に関する回転と発散の式が得られたので、磁場を計算することが
できるようになった。とりあえず、めでたい。
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Yamamoto's laboratory著者:
山本昌志
Yamamoto Masashi
平成16年10月22日