電気で最初に勉強するのは、なんといってもクーロンの法則(Coulomb law)で
ある。クーロンの法則については、教科書の3章真空中の静電場のところで詳
しく述べるので、法則そのものについては、さらっと聞いて欲しい。その代わ
り、基本的な物理の考え方
- ベクトルとスカラー
- 作用反作用の法則
- 単位
- 場
- 重ね合わせの原理
を理解して欲しい。
教科書では、クーロンの法則は
と書いている。これは、図
1のように表すことができる。
この式が言っていることは、電荷の積が負の場合引力、正の場合斥力となる。
力の大きさは距離の2乗に反比例し、電荷の積に比例する。
クーロンの法則について、次のことについて考察してみよう。
- 世の中に電荷が2つしかないとする。この場合、それぞれの電荷の大き
さ調べる手立てはあるか?。
- それでは、電荷が3つある場合はどうか?
- 電子の電荷は
[C]である。電子の電荷が
なぜ負になっているか、考えてみよう?
- クーロン力は、距離の-2乗に比例する。なぜ、-2という丁度の数字な
のか?。これは必然か?。-2.0001では不都合なのか?
- クーロン力は、各々の電荷の積の1乗に比例する。なぜ、1という丁度
の数字なのか?。これは必然か?。1.00001では不都合なのか?
- クーロン力の方向は、2つの電荷の延長線上である。延長線上である必
然はあるか?。他の方向を向くとどのような不都合があるか?
数式を記述する場合、右辺がスカラー量であれば左辺はスカラー量でなくては
ならない。右辺がベクトル量であれば、左辺はベクトル量でなくてはならない。
電磁気学を学ぶときには、どれがスカラーでどれがベクトルか良く考えるのが
コツである。
それでは、式(1)について、以下を確認せよ。
- そもそもベクトル(vector)とは?。スカラー(scalar)とは?。分かりや
すい例を挙げよ
- ベクトルは方向と大きさを持つと言われる。方向と大きさはどのよう
に表現できるか?
- 式(1)で使われている変数をベクトルとスカラー
に分けよ。
- 左辺にある
は、何を表しているか?
- と
との関係は、どうなっているか?
- なぜ位置を表すのに、位置ベクトル(position vector)というベクトル
量が使われるのか?。そもそも、位置はベクトルなのか?
これで分かったと思うが、太文字で書かれているのベクトルである。教科書も
そうなっているし、今後私が渡すプリントもそのように表現する。
ベクトル
をそれぞれの電荷の位置ベクトル
と
を用いて表すと、
|
(2) |
となる。これを利用して、クーロンの法則を書き換えると、
となる。この
は2の電荷に働く力である。次に1の電荷に働く力
を求めよう。1の電荷についてもクーロンの法則が成り立つは
ずであるから、この力を求めるためには式(
3)の添え字
の1と2を入れ替えればよい。したがって
である。
式(3)と式(4)を比べると、
|
(5) |
の関係があることが分かる。この式は、2つの電荷に働く力の大きさが等しく、
向きが反対であると言っている。これは、作用・反作用の法則と呼ばれるもの
である。
数学では単位を気にすることは無いが、自然科学では単位は非常に重要である。
自然科学において、等号や不等号で表せる関係式の両辺の単位は、全く同じで
ある。単位の異なるもの、たとえば面積と質量は比較できないからである。そ
れと同じように、加算や減算を行う場合、その2つの演算対象も同じ単位でな
くてはならない。一方、積や除算の場合は、演算対象の単位は異なっても良い。
導いた式が正しいか否か調べる場合、まずは単位を確認することから始めよ。
教科書に書かれているように、比例係数
|
(6) |
と、普通は書かれる。真空の誘電率の値とその単位は
|
(7) |
である。
遠隔作用については、教科書に書いてあるとおりである。図
1の電荷1が電荷2に及ぼす力が、媒介が無くても伝わる
と考えるのが遠隔作用である。この解釈は受け入れがたく、通常は使われない。
ニュートンが万有引力の法則を発表したとき、それは遠隔作用で、なかなか受
け入れがたかったようである。何もない真空を通過して、力が伝わることに人々
は難色を示したのである。日常、見たり感じたりする力は、何かの媒質が
介在するものである。液体や固体、気体を通して力は感じるものである。でも、
当時は磁石による力は分かっていて、それは遠隔作用に思える。人々はどのよ
うに考えていたのか興味がある
2。
気とか超能力とか言う人は、遠隔作用を支持しているように思えるが、いかが
なものか。
近接作用と電場の考え方は、教科書に書いてあるとおりである。これが、現代
的な考え方である。
図1の電荷が直接に作用するのではない。ま
ずは、その近くの空間の物理的な状態を変化させ、それ変化が次々と伝
わり、に達した時点で、それに影響を及ぼす。は空間(場)に作用を及ぼ
し、は空間から作用を及ぼされるのである。これは、明らかに遠隔作用
ではなく、近接作用と呼ばれる。これが場の考え方である。
観測される結果が遠隔作用と同じであれば、ただの言い換えに過ぎない。遠隔
作用と近接作用の決定的に異なることがある。それは、作用が伝わる時間であ
る。遠隔作用では瞬時に影響が伝わるが、近接作用では有限の時間が必要であ
る。観測の結果、影響が伝わる速度は、光速度と同じである。
それでは、クーロン力を伝える電場というものを考える。ある場所に電荷
を置く。すると、その電荷は
の力を受けたとする。場の考
え方では、そこの電場
が作用して、力が生じたとする。すなわち、
|
(8) |
である。これが電場の定義と考えても良い。
- 電場の定義とクーロンの法則を用いて、電荷が作る電場を表す式を
求めよ。
クーロンの法則、式(
1)から、電荷の作用は加算できるこ
とが分かる。これは、2つの電荷に作用するクーロン力は、他の電荷に影響さ
れないことを意味する。重ね合わせの原理の例として、3つの電荷がある場合
を考える。1番目の電荷に働く力は、2番目からの影響と3番目からの影響を足
し合わせたものになる。すなわち、
|
(9) |
となる。これは、3個の場合であるが、いくら電荷があってもこれは成り立つ。
- この力の重ねあわせが成り立てば、電場の重ね合わせの原理が成り立
つことを示せ。
この辺については、教科書の補足にとどめる。
万有引力の法則は、
|
(10) |
である。ここで、
は万有引力定数、
と
は質点の質量、力
と位置や
距離を表す
や
は、図
1とほとんど同じである。
これは、クーロンの法則と似ている。
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Yamamoto's laboratory著者:
山本昌志
Yamamoto Masashi
平成16年9月27日