電磁気学で表れる電流は、2種類ある。荷電粒子の移動から生じるものと、電
場の変化から生じる。前者を伝導電流、後者を変位電流と言う。ここでは、伝
導電流のみを取り扱うことにする。
電線に電池を接続すると、伝導電流が流れる。電池をつなぐことで、電線内に
電場が生じ、自由電子が電場による力を受け移動するのである。この電子の移
動が電流となる。金属中では電子であるが、水溶液中ではイオンの場合もある。
荷電粒子であれば、種類は関係なく、それが移動すれば電流となる。
電流
の大きさは、そこを通過する単位時間当たりの電荷量
である。式で表現する
と、
となる。これで、電荷と電流の関係を示すものである。
- 金属中の電子の移動の速度は非常に遅い。大体の速度を求めよ。
平行な2本の電線に同じ方向に電流を流すと、各々の電線が引き付けあう力、
引力が働く(図
1)。反対方向に電流を流すと、斥力が働く。
実験の結果、その力は、
ということが分かった。ここで、

は長さ

に働く力の大きさ、

は真空の透磁率、

と

は電流、

は電流の大きさである。
いずれもスカラー量、ただし、電流については正負の符号で、同方向か反対方
向かを表す。ベクトルを用いた詳細については、静磁場の授業で述べる。
この力は、モーターを動かす力となって利用されている。電流を制御すること
により、磁場の強さ制御し、モーターの力をコントロールするのである。
真空の透磁率
は、
 |
(3) |
と定義されている。力は別の方法で定義されている(

)。したがっ
て、式(
2)を用いると電流を定義できる。すなわち、1[m]
離した平行の電線に

[N]の力が働くとき、そこに流れている
電流を1[A]と定義する。表
1にmksA単位系(SI単位系)の定義を示
す。
電流が定義できたので、式(1)を用いて、電荷の定義ができる。
表 1:
SI基本単位系(物理学辞典より)
物理量 |
単位の名称 |
単位記号 |
定義 |
長さ |
メートル |
m |
光が(1/299792458)秒間に真空中を伝わる距離。 |
質量 |
キログラム |
kg |
国際キログラム原器の質量。これは1
気圧、最大密度の温度にある水1リットルの質量にほぼ等しい。 |
時間 |
秒 |
s |
C
の原子の基底状態の2つの超微細準位の間の遷移に対
応する放射の9192631770周期の持続時間。 |
電流 |
アンペア |
A |
真空中1[m]間隔で平行に置かれた無限に小さい円断面積を有する無限に長
い2本の直線導体上のそれぞれを流れ、これらの導体の1[m]ごとに
[N]
の力を及ぼしあう一定の電流。 |
熱力学温度 |
ケルビン |
K |
水の三重点の熱力学温度の1/273.16 |
物質量 |
モル |
mol |
0.012[kg]の Cの中に存在する原子の数と同数の要素体を含む系の物質
量 |
光度 |
カンデラ |
cd |
周波数が
Hzの単色放射を放出し、かつ、ある方向での
放射強度が(1/683)[W/sr]であるような光源の、その方向での強度。 |
電荷が作る場は、その部分に働く力から定義できた。単位電荷の受ける力の方
向と大きさが電場である。同じような考え方で、電流が作る場、磁場というも
のを考えることができる。単純な例として無限に長い電線が作る磁場を考えよ
う。図
1のように、平行に置かれた2本の電線を考える。一方
の電線には、電流

が流れており、それが

離れた位置に作る磁場を求める。

離れた位置に試験電流

を置いたとき、それに、単位長さあたり

と
いう力が加わったとする。そのときの磁場

の大きさとの関係は、
となる。これから、磁場

の大きさが分かる。これが、磁場の定義である。
実際、磁場を求めるためには、電流を置いて、それが受ける力を測定するしか
ないのである。
本当は、力
と磁場
、電流
はベクトルであるが、ここではスカラーで
書いている。左辺はベクトル、右辺にベクトルが掛け算で出てきているので、
ベクトル積が関係することは想像できる。これについては、後の授業で詳細に
行うので、ここでは気にしないで欲しい。
磁場
のことを、磁束密度という。式(4)から、磁束密度の
単位は[
]となる。MKSA単位系で書くと、
[
]となる。通常はこれらに代わって、
[
]や[T]という単位が使われる。
はウェーバと
はテスラと読む。
- 磁場の単位が、mksA単位で[
]となること
を示せ。
この磁場の定義式(4)と式(2)から、長
い電線が作る磁場は、
 |
(5) |
となる。磁場の方向は、図
2の磁束線の接線方向である。な
ぜ、そのような方向を向くかは、後の講義で示す。
この磁場を表す方法は、電場を表す方法と同様の方法がある。それぞれの方法
を、図
3と
4に示す。これは、直
径6[cm]の無限に長い銅線に電流を1[A]流し、一辺200[cm]の鉄でその銅線を囲っ
たときの磁場の様子である。
図3は、その点での磁場のベクトルが矢印で示している。
4の方は、磁束線を表し、磁束線の接線が磁場のベク
トルの方向である。そして、磁束線の密度が磁場の強さを表す。
ホームページ:
Yamamoto's laboratory著者:
山本昌志
Yamamoto Masashi
平成16年9月27日