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2 方程式

2.1 コンデンサーの性質

コンデンサーを規定する重要な性質にキャパシタンス(静電容量)があるのは,十分承知し ていると思う.これを計算する方法は,いろいろある.その中で,私が好んで使う方法は, エネルギーから計算する方法である.これは,電場の状態がキャパシタンスを決めるとい う意味で非常に物理的意味が分かりやすい.空間に電場 $ \boldsymbol{E}$ が分布している場合,その エネルギー $ \boldsymbol{U}$

$\displaystyle U_s$ $\displaystyle =\frac{1}{2}\int\varepsilon \boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{E}dV$    
  $\displaystyle =\frac{1}{2}\int\varepsilon \boldsymbol{E}^2dV$ (1)

となる. $ \frac{1}{2}\varepsilon\boldsymbol{E}^2$ が静電場のエネルギー密度になっている.信 じられない,それならば次元解析をしてみよ.

また,よく知られているように,コンデンサーの電圧$ V$ とキャパシタンス$ C$ , そして,そこにたまっているエネルギーの関係は,

$\displaystyle U_c=\frac{1}{2}CV^2$ (2)

である.コンデンサー内部では,それらは図1のような関係になっ ている.これからも分かるように,コンデンサーの内部には式 (1)が示す静電場のエネルギーが蓄えられている.一方,電 気的には,式2が示すエネルギーが蓄えられている. これらのエネルギーは,当然等しいので,

$\displaystyle \frac{1}{2}\int\varepsilon \boldsymbol{E}^2dV=\frac{1}{2}CV^2$ (3)

という関係がある.この式の左辺の電場はいろいろな方法で計算でき,静電場のエネル ギーを求めることができる.一方,電圧$ V$ は予め与えられているので,このエネルギーをつ かって,静電容量が計算できる.要するに,静電場$ E$ を求めることができれば,静電容 量$ C$ が計算できるのである.

いままで,よく分からなかった静電容量というものは,コンデンサーに蓄えられるエネルギーを示す 指数と考えて良い.私は,この考え方が好きである.なにしろ,分かりやすい.

図 1: コンデンサーの様子
\includegraphics[keepaspectratio, scale=0.8]{figure/capcitance.eps}

2.2 コンデンサー内部の電場

先に示したとおり,コンデンサー内部の電場が分かれば,そのキャパシタンスを求めるこ とができる.それは簡単ではないか,電圧$ V$ を電極間距離$ L$ で割れば,$ E=V/L$ と求め られると言う人がいる.これは,コンデンサー内部で誘電率が一様な場合は正しい.そん な単純な問題は,いままでさんざん学習してきたし,つまらない.ここでは,もう少し難 しい問題を解くことにする.

誘電率が,3次元($ x,y,z$ の関数)で変化すると計算が大変なので,1次元問題に限ること にする.2次元や3次元も考え方は同じであるが,計算は大変である.ここで,計算するコ ンデンサー内部は,図2のとおりとする.誘電率は,座標$ x$ の関数で, 変化するものとする.

このような場合の電場はどうなるのであろうか?.一つの方法は,ポアッソン方程式 2

$\displaystyle \nabla^2(\varepsilon\phi)=0$ (4)

を解くことである.ここで,$ \phi$ はポテンシャルで,電圧のことである.少し気取って 書いているのである.この微分方程式を $ \phi(0)=V_0,\phi(L)=V_1$ の境界条件で解けば良 い.そうすると必要なものが全て計算できるので,静電容量を計算できる.しかし,今回 は,この方法で計算しないことにする.

ポアッソン方程式の代わりに,コンデンサー内部の電場は,そのエネルギーが最小になる ように分布すると言う原理を使う.当然,このばあいでも,境界条件 $ \phi(0)=V_0,\phi(L)=V_1$ は課せられている.コンデンサーの内部のエネルギーは,1次元 なので,

$\displaystyle U_s$ $\displaystyle =\frac{1}{2}\int\varepsilon \boldsymbol{E_x}^2dV$    
  $\displaystyle =\frac{S}{2}\int_0^L\varepsilon \boldsymbol{E_x}^2dx$ (5)

と書ける.

このポテンシャル分布をコンピューターに計算させるために,コンデンサーの内部を細か くN等分に区切る.この様子を図3に示す.すると,エネルギーは

$\displaystyle U_s$ $\displaystyle =\frac{S}{2}\int_0^L\varepsilon \boldsymbol{E_x}^2dx$    
  $\displaystyle =\frac{S}{2}\int_0^L\varepsilon \left(\frac{d\phi}{dx}\right)^2dx$    
  $\displaystyle =\frac{S}{2}\sum_{i=1}^{N}\frac{\varepsilon_i+\varepsilon_{i-1}}{2} \left(\frac{\phi_i-\phi_{i-1}}{h}\right)^2h$    
  $\displaystyle =\frac{Sh}{2}\left[ \cdots+ \frac{\varepsilon_i+\varepsilon_{i-1}...
...varepsilon_{i}}{2} \left(\frac{\phi_{i+1}-\phi_{i}}{h}\right)^2 +\cdots \right]$ (6)

となる.

静電場のエネルギーが最小になるためには,微分がゼロになる必要がある.このエネルギー をポテンシャル$ \phi_i$ で微分すると

$\displaystyle \if 11 \frac{\partial U_s}{\partial \phi_i} \else \frac{\partial^...
...2} \left(\frac{\phi_{i+1}-\phi_{i}}{h}\right) \right]\qquad(i=1,2,3,\cdots,N-1)$ (7)

となる.$ U_s$ が最小値になるためには, $ \if 11 \frac{\partial U_s}{\partial \phi_i}
\else
\frac{\partial^{1} U_s}{\partial \phi_i^{1}}
\fi
=0$ となる必要がある. また,コンデンサーの両端の電圧は固定されているので, $ \phi_0=V_0$ $ \phi_N=V_1$ である. 従って,これらをまとめると

\begin{equation*}\left\{ \begin{aligned}&\phi_0=V_0 &-\left(\varepsilon_{i-1}+...
...ilon_{i+1}\right)\phi_{i+1}=0 &\phi_N=V_1 \end{aligned} \right.\end{equation*}

となる.要するに,この連立1次方程式を計算すれば,任意の誘電率の場合のコンデンサー内部のポテ ンシャル(電圧)が得られる.ポテンシャルが分かれば,電場が分かり,そうすると内部の エネルギーが計算できる.従って,静電容量が求められるわけである.

じつは,ここで示した計算方法は有限要素法と呼ばれている.

図 2: コンデンサー内部
\includegraphics[keepaspectratio, scale=0.8]{figure/in_capa.eps}
図 3: 分割の様子
\includegraphics[keepaspectratio, scale=0.8]{figure/finite.eps}

ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
2005-12-09


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