3 現代の情報の特徴
知識を共有し,それを維持,発展させることにより,人類は文明を築き,繁栄を謳歌して
いる.この知識の伝達や加工に,情報技術は極めて重要な役割を担ってきたことは言う
までもない.文明の発達に従い,様々なテクノロジーが発明され使われてきた.それは,
言葉に始まり,文字の考案,印刷機の発明,新聞,テレビやラジオなどのマスメディアの
拡張へと続いた.これらは,ほぼ数十年前に完成したと言ってもよいだろう.
これら古典的な技術で取り扱われる情報伝達には,大雑把に言って以下のような特徴がある.
- 特定の者が情報の発信者になり,大衆は情報を受信するのみである.
- コピーは難しく,それを重ねると情報は劣化してしまう.
- ほとんどの情報は一過性であり,いずれは消滅してしまう.
紙やTV,ラジオの技術を考えるとこれらのことはすぐに理解できるであろう.これらは,
全てアナログ技術
1である.
これに対して,ここ10年ほどで爆発的に発展した情報化社会の特徴は,コンピューターを
利用していることである.現代では,コンピューターを経由したデジタルデータとして
情報は流通している.諸君が使っているこのテキストや,PowerPointのスライドにもコン
ピューターを使って作成した.それどころか,携帯電話すらそれが関わっている.さらに,
現代の大部分のコンピューターはインターネットを通じて,世界中のコンピューターとつ
ながっていることも大きな特徴である.このように現代の情報は,世界中につながったコ
ンピューターを通して,デジタルデータ
2として受け渡しされるのである.
コンピューターを利用することにより,現代の情報は過去とは全く異なる様相を呈する.
それには,次のような特徴がある.
- 誰でもが,世界に向けて瞬時に情報発信ができる.
- コピーが容易で.いくら複製しても情報の劣化がない.
- コンピューターを使って発信された情報は消すことが不可能である.
諸君も知っているように,誰でもがwebページをつくり,世界中へ情報を発信できる.さ
らに,webページの複製も,ボタン一つで可能である.これらのことから,最初の2つの
特徴は理解できるであろう.一方,情報の消去不可能ということはなかなか理解できない
かもしれない.webページを公開して,それを誰かがアクセスすると,そのコピーがいろ
いろなコンピューターに作成される.スムーズに情報交換を行うために,インターネット
ではそういう仕組みになっている.もとのwebページを消しても,そのコピーは残るので
ある.
これらの特徴がどのような影響を与えるか,過去と対比して具体例をもって示す.
- 過去
- 10年ほど前であれば,他人を誹謗中傷(悪口)しても,マスメディア(新聞,
TV等)を使わない限り,その影響の範囲は限定的であった.学校内や町内に
噂が広がる程度である.そして,それはいずれ忘れ去られる.
- 現代
- 一方,webページでそれを行えば,瞬時に世界中に悪口を広めることができ
る.そして,一度,インターネットに流れた情報を完全に消すことは不可
能となる.消すことができない悪口を世界中に広めることになる.
この単純な例から,現代の情報技術を使った場合の影響の深刻さが分かるだろう.過去の
技術に比べ,影響の範囲が空間的・時間的に格段に広くなっている.しかも,誰でもが
その影響を行使できるのである.だからこそ,情報モラルを身につけ,正しい使い方をし
なくてはならない.
現代では,誰でもが多くの情報を得ることもできるし,公表することもできる.テクノロ
ジーが進化したおかげで,情報に関する個人の力(影響力)が強くなった.それは,良いこ
とばかりとは限らない.悪い方向に影響力を行使する人もいるし,誤った使い方をすれば
社会に迷惑をかけることになる.そうならないために,次節以降で,情報技術を使う場合
の基本的な心構えを述べる.
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まとめ(現代の情報の特徴)
- インターネットを使った情報は,瞬時に世界中へ流れる.
- 一度,インターネットへ流れた情報を回収することは不可能である.流
れた情報は永久に残り,誰でもが引き出せる.
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Yamamoto's laboratory著者:
山本昌志
Yamamoto Masashi
平成18年4月11日