2 テイラー展開から三角関数の諸公式

2.1 テイラー展開

2.1.1 任意のデータを冪級数で表現

$ (x,y)$$ N$個の任意のデータ点を通過する関数を考える.全てのデータ点を通る関数は, $ N-1$次関数で記述できる.データ点が2つならば1次関数,3つならば2次関数のようにで ある.諸君は,これまでの学習で2点から直線を,3点から2次関数を決めたりしているだ ろう.図1のように勝手に決めた10個の点から,9次関数を決めることもで きる.なぜならば,$ N-1$次関数

$\displaystyle f(x)=a_0+a_1x+a_2x^2+a_3x^3+a_4x^4+a_5x^5+\cdots+a_{N-1}a^{N-1}$ (6)

には$ N$個の係数があり,それらの係数は$ N$個の点により一意に決定できるからである.
図 1: 勝手に決めた10点を9次関数で表現.
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{program/pow10.eps}

2.1.2 任意の関数のテイラー展開

前節では,どんな任意のデータでも冪乗の関数で表現できることを示した.データの数が 非常に多くなって,無限までになったらどうなるだろうか?.データの数が無限というの は,データが連続するもの,すなわち関数と考えることができる.例えば,三角関数は無限 個の$ (x,y)$のデータの集まりである.このようなデータに対しての先ほどの問いかけに ついて,私は答えられない.しかし,直観あるいはコンピューターの助けを借りて,厳密 ではないにしても,実用上問題ない結果を得ることができる.

もし,ある関数が無限個のデータの集まりと考え,

$\displaystyle f(x)$ $\displaystyle =a_0+a_1x+a_2x^2+a_3x^3+a_4x^4+a_5x^5+\cdots$    
  $\displaystyle =\sum_{n=0}^\infty a_nx^n$ (7)

と表すことができるとしよう.$ f(x)$は三角関数であったり,指数関数,あるいは対数関 数である.この式の左辺は,冪級数と呼ぶ.この式は,任意の関数を冪球数に展開して いるのである.証明は数学の時間に任せるとして,任意の関数はこのように冪級数に展開 できる.

任意の関数$ f(x)$が式(7)のように冪級数に展開できるならば,そ の係数$ a_n$をどうやって決めるのか?--という問題がのこる.有限個の場合のように, 連立方程式から係数を計算することはできない.無限次元の連立方程式など 解けないからである.そこで,連続な関数という性質を使う.元の式(7),お よびその両辺を繰り返し微分すると次の式が得られる.

$\displaystyle f(x)$ $\displaystyle =a_0+a_1x+a_2x^2+a_3x^3+a_4x^4+a_5x^5+a_6x^6+\cdots$ (8)
$\displaystyle f^\prime(x)$ $\displaystyle =a_1+2a_2x+3a_3x^2+4a_4x^3+5a_5x^4+6a_6x^5\cdots$ (9)
$\displaystyle f^{\prime\prime}(x)$ $\displaystyle =2\times1\times a_2+3\times2a_3x+4\times3a_4x^2 +5\times4a_5x^3+ 6\times5a_6x^4\cdots$ (10)
$\displaystyle f^{(3)}(x)$ $\displaystyle =3\times2\times1\times a_3+4\times3\times2a_4x+5\times4\times3a_5x^2+ 6\times5\times4a_6x^3\cdots$ (11)
  $\displaystyle \qquad\vdots$    
$\displaystyle f^{(n)}(x)$ $\displaystyle =n!a_n+\frac{(n+1)!}{1!}a_{n+1}x+\frac{(n+2)!}{2!}a_{n+2}x^2 +\frac{(n+3)!}{3!}a_{n+3}x^3+\cdots$ (12)

これらの式で$ x=0$とすると,右辺第2項より高次の項は全てゼロとなる.これを利用して, 式(7)の展開係数は

  $\displaystyle a_0=f(0)$   $\displaystyle a_1=f^\prime(0)$   $\displaystyle a_2=\frac{f^{\prime\prime}(0)}{2\times1}$   $\displaystyle a_3=\frac{f^{(3)}(0)}{3\times2\times1}$   $\displaystyle \cdots$   $\displaystyle a_n=\frac{f^{(n)}(0)}{n!}$   (13)

と得られる.$ 0!=1$とすると,最後の式である $ a_n=f^{(n)}(0)/n!$$ n=0$を含めて一般的 に成り立つ.式(7)を合わせて,

$\displaystyle f(x)$ $\displaystyle =f(0)+f^\prime(0)x+\frac{f^{\prime\prime}(0)}{2!}x^2+\frac{f^{(3)...
...}x^3 +\frac{f^{(4)}(0)}{4!}x^4+\cdots=\sum_{n=0}^\infty\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n$ (14)

となる.これで,任意の関数を冪級数で展開する方法が分かった2.このようにある関数を 冪球数で展開する方法をテイラー展開と言う.

式(14)は,不思議な式である.一般に,左辺の関数の定義域は $ [-\infty,\infty]$と広い.それに対して,右辺の冪級数は$ x=0$の値のみできまる.無 限にひろがる関数が$ x=0$のときの性質で決まる--という不思議なことになっている.
まとめ(テイラー展開)
  • 任意の関数は,冪級数に展開--テイラー展開--できる.

    $\displaystyle f(x)=f(0)+f^\prime(0)x+\frac{f^{\prime\prime}(0)}{2!}x^2 +\frac{f...
...}x^3+\frac{f^{(4)}(0)}{4!}x^4+\cdots =\sum_{n=0}^\infty\frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n$    



2.1.3 三角関数と指数関数のテイラー展開

先の説明では,どんな関数でも冪球数に展開できると言った.そこで,三角関数と指数関 数をテイラー展開3してみよう.

式(14)の$ f(x)$$ \sin x$とすると,

$\displaystyle \sin x$ $\displaystyle =\sin(0)+\cos(0)x-\frac{\sin(0)}{2!}x^2-\frac{\cos(0)}{3!}x^3 +\frac{\sin(0)}{4!}x^4+\frac{\cos(0)}{5!}x^5-\frac{\sin(0)}{6!}x^6+\cdots$    
  $\displaystyle =x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}-\frac{x^7}{7!}+\frac{x^9}{9!} -\frac{x^{11}}{11!}+\cdots$    
  $\displaystyle =\sum_{n=1}^{\infty}(-1)^{n+1}\frac{x^{2n-1}}{(2n-1)!}$ (15)

がえられる.いままで,三角関数は幾何学的な意味で使われてきた.幾何学的に考えた三 角関数の場合,任意の$ x$での$ \sin x$の計算は大変難しい.それに対して,式 (15)の右辺には幾何学的な意味はなく,解析的である.したがって, どんな$ x$に対しても$ \sin x$の計算が可能である.これは,まことに便利と言わざるを 得ない.

でも,本当かなー--という疑問が湧く者もいるだろう.正直,私も信じられない.この ような時,私はコンピューターを使って確かめることが多い.式(15) の右辺を $ x,x^3,x^7, x^{15}, x^{31},x^{51},x^{101}$まで,展開の項数を変化さて 計算してみた.その結果を図2に示す.展開の項数が増加するごとに$ \sin x$を正確に表していることが分かるであろう.これで,テイラー展開は正しいと信じた.

同じことを$ \cos x$で行うと,次の結果が得られる.

$\displaystyle \cos x$ $\displaystyle =\cos(0)-\sin(0)x-\frac{\cos(0)}{2!}x^2+\frac{\sin(0)}{3!}x^3 +\frac{\cos(0)}{4!}x^4-\frac{\sin(0)}{5!}x^5-\frac{\cos(0)}{6!}x^6+\cdots$    
  $\displaystyle =1-\frac{x^2}{2!}+\frac{x^4}{4!}-\frac{x^6}{6!}+\frac{x^8}{8!} -\frac{x^{10}}{10!}+\frac{x^{12}}{12!}-\frac{x^{14}}{14!}+\cdots$    
  $\displaystyle =\sum_{n=0}^{\infty}(-1)^{n}\frac{x^{2n}}{(2n)!}$ (16)

指数関数$ e^x$もテイラー展開できる.

$\displaystyle e^x$ $\displaystyle =e^0+e^0x+\frac{e^0}{2!}x^2+\frac{e^0}{3!}x^3+\frac{e^0}{4!}x^4 +...
...\frac{e^0}{6!}x^6+\frac{e^0}{7!}x^7+\frac{e^0}{8!}x^8 +\frac{e^0}{9!}x^9+\cdots$    
  $\displaystyle =1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\frac{x^4}{4!}+\frac{x^5}{5!}+\frac{x^6}{6!} +\frac{x^7}{7!}+\frac{x^8}{8!}+\frac{x^9}{9!}+\cdots$    
  $\displaystyle =\sum_{n=0}^{\infty}\frac{x^n}{n!}$ (17)

これらの三角関数と指数関数のテイラー展開の式から,それぞれの関数の値を解析的に計 算ができるようになる.いままで,三角関数は幾何学的に,指数関数は乗算の延長??のよ うに定義されていた.このような定義では,解析に値を計算することに困難をきたす.そ れに代わり,このテイラー展開の式がそれぞれの関数の定義と考えると,計算が格段に簡 単になる.このように定義しても,いままで使ってきた三角関数や指数関数の性質は失わ れない4.そこで, これからは三角関数と指数関数の定義として,テイラー展開の結果を使う.

まとめ(三角関数と指数関数テイラー展開)
  • 三角関数と指数関数は,次のようにテイラー展開できる.

    $\displaystyle \cos x$ $\displaystyle =1-\frac{x^2}{2!}+\frac{x^4}{4!}-\frac{x^6}{6!} +\frac{x^8}{8!}-\...
...{x^{12}}{12!} -\frac{x^{14}}{14!}+\frac{x^{16}}{16!}-\frac{x^{18}}{18!} +\cdots$    
    $\displaystyle \sin x$ $\displaystyle =x-\frac{x^3}{3!}+\frac{x^5}{5!}-\frac{x^7}{7!} +\frac{x^9}{9!}-\...
...{x^{13}}{13!} -\frac{x^{15}}{15!}+\frac{x^{17}}{17!}-\frac{x^{19}}{19!} +\cdots$    
    $\displaystyle e^x$ $\displaystyle =1+x+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\frac{x^4}{4!} +\frac{x^5}{5!}...
...^6}{6!}+\frac{x^7}{7!}+\frac{x^8}{8!} +\frac{x^9}{9!}+\frac{x^{10}}{10!}+\cdots$    



図: $ \sin x$のテイラー展開.図中の整数は展開の次数を示す.
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{program/sin.eps}

2.2 オイラーの公式

三角関数と指数関数のテイラー展開の式(15)と(16), (17)はよく似ている.若干異なるが,虚数単位$ i$を使うとさらに似て くる.かなり便宜的に思えるが,次のように書くことができる.

$\displaystyle \cos x$ $\displaystyle =1-\frac{x^2}{2!}+\frac{x^4}{4!}-\frac{x^6}{6!} +\frac{x^8}{8!}-\...
...{x^{12}}{12!} -\frac{x^{14}}{14!}+\frac{x^{16}}{16!}-\frac{x^{18}}{18!} +\cdots$    
$\displaystyle i\sin x$ $\displaystyle =ix-i\frac{x^3}{3!}+i\frac{x^5}{5!}-i\frac{x^7}{7!} +i\frac{x^9}{...
...{13}}{13!} -i\frac{x^{15}}{15!}+i\frac{x^{17}}{17!}-i\frac{x^{19}}{19!} +\cdots$    
$\displaystyle e^{ix}$ $\displaystyle =1+ix-\frac{x^2}{2!}-i\frac{x^3}{3!}+\frac{x^4}{4!} +i\frac{x^5}{...
...}{6!}-i\frac{x^7}{7!}+\frac{x^8}{8!} +i\frac{x^9}{9!}-\frac{x^{10}}{10!}-\cdots$    

ますます,三角関数と指数関数が似てきた.これらより,

$\displaystyle e^{ix}=\cos x+i\sin x$ (18)

が得られる.これが,オイラーの公式と呼ばれるものである.虚数を介して,三角 関数と指数関数がこんなにも簡単な式で結ばれているのである.これは便宜的に記述した だけの式に見えるが,科学技術の問題を考えるときに極めて有用である.これを使うとや やこしい計算をすること無く,様々な問題が解ける.諸君はできるだけオイラーの公式を 利用せよ.

オイラーの公式から,

  $\displaystyle \cos x=\frac{e^{ix}+e^{-ix}}{2}$   $\displaystyle \sin x=\frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i}$   (19)

と書くこともできる.

もともと,三角関数は幾何学的に定義された.それに対して,指数関数は解析的に定 義された.そして,虚数は方程式を解くために導入された.これら,勝手に定義されたも のが,こんな単純な式で関係づけられるのは驚きである.

2.3 三角関数の諸公式

オイラーの公式を使うと,この節で示すように三角関数に関する公式が簡単に得られる. この単純な方法を憶えておくと,後々,便利である.これだけでもオイラーの公式の御利 益が分かるだろう.

2.3.0.1 加法定理

$ e^{i(\alpha+\beta)}=e^{i\alpha}e^{i\beta}$を使うと,三角関数の加法定理が得られ る.オイラーの公式を使うと,指数関数の $ e^{i(\alpha+\beta)}=e^{i\alpha}e^{i\beta}$は,

$\displaystyle \cos(\alpha+\beta)+i\sin(\alpha+\beta)$ $\displaystyle =(\cos\alpha+i\sin\alpha)(\cos\beta+i\sin\beta)$    
  $\displaystyle =(\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta)+i(\cos\alpha\sin\beta+\sin\alpha\cos\beta)$ (20)

となる.両辺が等しいということは,実部と虚部が等しいということである.したがって,

$\displaystyle \cos(\alpha+\beta)$ $\displaystyle =\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta$ (21)
$\displaystyle \sin(\alpha+\beta)$ $\displaystyle =\cos\alpha\sin\beta+\sin\alpha\cos\beta$ (22)

が得られる.これは,三角関数の加法定理そのものである.

2.3.0.2 倍角の公式

$ e^{in\theta}=(e^{i\theta})^n$を使うと,2倍角や3倍角$ \cdots$の公式を得ることがで きる.例えば,$ n=2$とするとこの指数関数は,

$\displaystyle \cos(2\theta)+i\sin(2\theta)$ $\displaystyle =(\cos\theta+i\sin\theta)^2$    
  $\displaystyle =(\cos^2\theta-\sin^2\theta)+2i\cos\theta\sin\theta$ (23)

となる.これもまた,実数部と虚数部の各々が等しいので,

$\displaystyle \cos(2\theta)$ $\displaystyle =\cos^2\theta-\sin^2\theta=1-2\sin^2\theta=2\cos^2\theta-1$ (24)
$\displaystyle \sin(2\theta)$ $\displaystyle =2\cos\theta\sin\theta$ (25)

を得る.これは倍角の公式である.同様の手順で,$ n=3$

$\displaystyle \cos(3\theta)+i\sin(3\theta)$ $\displaystyle =(\cos\theta+i\sin\theta)^3$    
  $\displaystyle =(\cos^3\theta-3\cos\theta\sin^2\theta)+i(3\cos^2\theta\sin\theta-\sin^3\theta)$ (26)
  $\displaystyle =(4\cos^3\theta-3\cos\theta)+i(3\sin\theta-4\sin^3\theta)$ (27)

3倍角の公式

$\displaystyle \cos(3\theta)$ $\displaystyle =4\cos^3\theta-3\cos\theta$ (28)
$\displaystyle \sin(3\theta)$ $\displaystyle =3\sin\theta-4\sin^3\theta$ (29)

が簡単に得られる.

2.3.0.3 半角の公式

式(24)を使っても簡単に求められる.式 (19)から計算することもできる.

$\displaystyle \sin^2\left(\frac{x}{2}\right)$ $\displaystyle =\left[\frac{e^{i\frac{x}{2}}-e^{i\frac{x}{2}}}{2i}\right]^2$ (30)
  $\displaystyle =\frac{e^{ix}+e^{-ix}-2}{-4}$ (31)
  $\displaystyle =\frac{1-\cos x}{2}$ (32)

同じことをすれば,余弦に関する公式 も得られる.

$\displaystyle \cos^2\left(\frac{x}{2}\right)=\frac{1+\cos x}{2}$ (33)

2.3.0.4 積を和に変換する公式

加法定理を上手に使えば,三角関数の和を積に変換する公式は得られる.次のようにして 計算することもできる.

$\displaystyle \cos\alpha\sin\beta$ $\displaystyle =\frac{e^{i\alpha}+e^{-i\alpha}}{2}\times\frac{e^{i\beta}-e^{-i\beta}}{2i}$    
  $\displaystyle =\frac{e^{i(\alpha+\beta)}-e^{-i(\alpha+\beta)}-e^{i(\alpha-\beta)} +e^{-i(\alpha-\beta)}}{4i}$    
  $\displaystyle =\frac{1}{2}\left[ \frac{e^{i(\alpha+\beta)}-e^{-i(\alpha+\beta)}}{2i} -\frac{e^{i(\alpha-\beta)}-e^{-i(\alpha-\beta)}}{2i}\right]$    
  $\displaystyle =\frac{1}{2}\left[\sin(\alpha+\beta)-\sin(\alpha-\beta)\right]$ (34)

積を和に変換する残りの公式

  $\displaystyle \cos\alpha\cos\beta= \frac{1}{2}\left[\cos(\alpha+\beta)+\cos(\alpha-\beta)\right]$ (35)
  $\displaystyle \sin\alpha\sin\beta= -\frac{1}{2}\left[\cos(\alpha+\beta)-\cos(\alpha-\beta)\right]$ (36)
  $\displaystyle \sin\alpha\cos\beta= \frac{1}{2}\left[\sin(\alpha+\beta)+\sin(\alpha-\beta)\right]$ (37)

も同様に導くことができる.良い練習問題なので,諸君は自力で導いてみよ.

2.3.0.5 積を和に変換する公式

これは,ちょっと変わっていて,次のようにする.

$\displaystyle e^{i\alpha}+e^{i\beta}$ $\displaystyle =e^{i(\alpha+\beta)/2}e^{i(\alpha-\beta)/2}+ e^{i(\alpha+\beta)/2}e^{i(-\alpha+\beta)/2}$    
  $\displaystyle =e^{i(\alpha+\beta)/2}\left[e^{i(\alpha-\beta)/2}+ e^{-i(\alpha-\beta)/2}\right]$    
  $\displaystyle =\left[\cos\left(\frac{\alpha+\beta}{2}\right)+i\sin\left(\frac{\alpha+\beta}{2}\right)\right]$    
  $\displaystyle \qquad\qquad\times\left[\cos\left(\frac{\alpha-\beta}{2}\right)+i...
...t(\frac{\alpha-\beta}{2}\right)-i\sin\left(\frac{\alpha-\beta}{2}\right)\right]$    
  $\displaystyle =2\cos\left(\frac{\alpha-\beta}{2}\right)\left[\cos\left(\frac{\alpha+\beta}{2}\right)+i\sin\left(\frac{\alpha+\beta}{2}\right)\right]$    
  $\displaystyle =2\cos\left(\frac{\alpha-\beta}{2}\right)\cos\left(\frac{\alpha+\...
...i\cos\left(\frac{\alpha-\beta}{2}\right)\sin\left(\frac{\alpha+\beta}{2}\right)$ (38)

ところで,この式の右辺は,次のように書くこともできる.

$\displaystyle e^{i\alpha}+e^{i\beta}$ $\displaystyle =\left(\cos\alpha+i\sin\alpha\right)+\left(\cos\beta+i\sin\beta\right)$    
  $\displaystyle =\left(\cos\alpha+\cos\beta\right)+i\left(\sin\alpha+\sin\beta\right)$ (39)

もちろん,式(38)と(39)の両式の右辺は等しい.したがっ て,各々の実数部と虚数部が等しくなり,

$\displaystyle \cos\alpha+\cos\beta$ $\displaystyle =2\cos\left(\frac{\alpha-\beta}{2}\right)\cos\left(\frac{\alpha+\beta}{2}\right)$ (40)
$\displaystyle \sin\alpha+\sin\beta$ $\displaystyle =2\cos\left(\frac{\alpha-\beta}{2}\right)\sin\left(\frac{\alpha+\beta}{2}\right)$ (41)

が得られる.これは,三角関数の和を積に直す公式である.同様にして, $ e^{i\alpha}-e^{i\beta}$を 計算すると,もう一組の公式

$\displaystyle \cos\alpha-\cos\beta$ $\displaystyle =-2\sin\left(\frac{\alpha+\beta}{2}\right)\sin\left(\frac{\alpha-\beta}{2}\right)$ (42)
$\displaystyle \sin\alpha-\sin\beta$ $\displaystyle =2\cos\left(\frac{\alpha+\beta}{2}\right)\sin\left(\frac{\alpha-\beta}{2}\right)$ (43)

が得られる.
ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成18年10月27日


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