3 フーリェ級数の例

フーリエ級数の係数を求める方法が分かった.本当に,任意の周期関数を三角関数の和に なっているかを,p.224の例題1と例題2を使って確かめる.

3.1 矩形波

これまでの結果を利用して,図2のような矩形波をフーリエ級数で 表す.これは,教科書のp.224の例題1である.

$ a_n$$ b_n$を求める積分の範囲は, $ [-\pi,\pi]$である.しかし,図 2の関数は,$ x=0$で不連続になっている.そのため,$ [-\pi,0]$$ [0,\pi]$に分けて,積分を実施する.そうすると,

$\displaystyle f(x)=\frac{4}{\pi}\sum_{k=1}^\infty\frac{\sin(2k-1)x}{2k-1}$ (15)

が得られる.積分は,教科書を見て自分でも計算すること.
図 2: 周期$ 2\pi$の矩形波
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/rectangular.eps}

この式の右辺は,本当に図2のような矩形波になっているのだろう か?.コンピューターを使って計算してみる.ここで,フーリエ級数の部分和$ S_n$

$\displaystyle S_n=\frac{4}{\pi}\sum_{k=1}^n\frac{\sin(2k-1)x}{2k-1}$ (16)

とする.ちゃんとしたフーリエ級数であれば, $ n\rightarrow\infty$とすべきであるが, コンピューターでは無限大は無理なので,有限の$ n$まで計算する.計算結果を図 3から図8に示す.$ n$が大きくなると,矩形波 に近づく.この例で示すように,たとえ不連続な関数であっても三角関数で 展開できる.図9を見て分かるように,部分和もきれい な$ 2\pi$の周期関数になっている.

ここでの計算結果は,驚くべきことである.図2のような不連続な 関数は,式(15)のように三角関数を使って取り扱うことができる-- という事実6を 表している.このような不連続な関数は,電気回路ではしばしば現れる.デジタル回路の パルスは,矩形波である.今,諸君はパルスを解析する手段を得たことになる.電気回路 でおなじみの交流--サイン波-- の解析手法を用いて,パルスが解析できる!!!.

図 3: 方形波:$ S_1$
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/rect_wave_1.eps}
図 4: 方形波:$ S_2$
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/rect_wave_2.eps}
図 5: 方形波:$ S_3$
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/rect_wave_3.eps}
図 6: 方形波:$ S_{10}$
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/rect_wave_10.eps}
図 7: 方形波:$ S_{100}$
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/rect_wave_100.eps}
図 8: 方形波:$ S_{10000}$
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/rect_wave_10000.eps}
図 9: x軸を拡大した$ S_{10}$のフーリエ級数.
\includegraphics[keepaspectratio, scale=0.8]{figure/long_rect_wave.eps}

3.2 三角波

つぎに,図10のような三角波(教科書のp.224-225の例題2)をフーリエ 級数で表す.これも, $ [-\pi,\pi]$の範囲で,積分を行い$ a_n$$ b_n$を求める.先ほど 同様,$ x=0$で不連続な関数なので,積分は$ [-\pi,0]$$ [0,\pi]$の2つの部分に分ける. そして,教科書に示しているように部分積分を使うと,

$\displaystyle f(x)=\frac{4}{\pi}\sum_{k=1}^\infty\frac{\cos(2k-1)x}{(2k-1)^2}$ (17)

が得られる.
図 10: 周期$ 2\pi$の三角波
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/triangle.eps}
式(17)の部分和を図11から16に 示す.矩形波より収束が早いことが分かるだろう.これまでの2つの結果から,フーリエ 級数は正しそうである--ということが感覚的理解できるであろう.本当は,自分でプロ グラムを書いてみることが重要であろう.プログラムの得意な者はトライせよ.

図 11: 三角波:$ S_1$
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/tri_wave_1.eps}
図 12: 三角波:$ S_2$
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/tri_wave_2.eps}
図 13: 三角波:$ S_3$
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/tri_wave_3.eps}
図 14: 三角波:$ S_{10}$
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/tri_wave_10.eps}
図 15: 三角波:$ S_{100}$
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/tri_wave_100.eps}
図 16: 三角波:$ S_{10000}$
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/tri_wave_10000.eps}

ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成18年12月1日


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