先週の講義では,2次元を用いて座標変換の具体的な行列を示した.ここでは,より一般
的な3次元の座標変換の行列の性質を示す.ここでは,3次元で議論を進めるが,さらに高
次元でも成り立つ.このあたりの話は,文献 [
1]を参考にした.
図8のように3次元座標の原点を固定して,それを回転させたとする.
ここで,それぞれの軸には単位ベクトルの関係を考える.それぞれ
の軸の単位ベクトルの大きさは1で,直交している.従って,元の座標系では,
となる.最初の3つの式が,ベクトルの大きさが1であること示している.次の3つの式が直行関係を表している.同じように回転した座標系でも
である.それらは基底ベクトルにとることができるので,任意のベクトルを線形和
で表現できる.回転した軸の単位ベクトル
![$ \boldsymbol{i},\boldsymbol{j},\boldsymbol{k}$](img240.png)
も,元の座標の単位ベクトルの線形和で表すことができる.すなわち,
である.
これら,単位行列を表す係数
の性質を調べる.そこで,回転した座標の単位行列の内積を計算する.先ほどの直交関係を利用すると,
となる.ベクトル
![$ \boldsymbol{i}$](img246.png)
の大きさは1なので,
![$\displaystyle a_{11}^2+a_{12}^2+a_{13}^2=1$](img247.png) |
(52) |
を導くことができる.ほかの軸でも同様な操作を行うと,
|
![$\displaystyle a_{21}^2+a_{22}^2+a_{23}^2=1$](img248.png) |
|
![$\displaystyle a_{31}^2+a_{32}^2+a_{33}^2=1$](img249.png) |
|
(53) |
が得られる.次に,他の軸との内積を計算する.それは,
となる.ベクトル
![$ \boldsymbol{i}^\prime$](img253.png)
と
![$ \boldsymbol{j}^\prime$](img254.png)
は直交しているので,
![$\displaystyle a_{11}a_{21}+a_{12}a_{22}+a_{13}a_{23}=0$](img255.png) |
(55) |
である.同様に,
|
![$\displaystyle a_{21}a_{31}+a_{22}a_{32}+a_{23}a_{33}=0$](img256.png) |
|
![$\displaystyle a_{31}a_{11}+a_{32}a_{12}+a_{33}a_{13}=0$](img257.png) |
|
(56) |
が得られる.ここで,得られた結果をまとめると,
となる.ここで,
![$ \delta_{ij}$](img259.png)
はクロネッカーの記号と呼ばれ,
![$\displaystyle \delta_{ij}= \begin{cases}1 & \text{$i=j$\ の場合} \\ 0 & \text{$i\neq j$\ の場合} \end{cases}$](img260.png) |
(58) |
と言う意味がある.
ここで,行列
として
![$\displaystyle \boldsymbol{A}= \begin{bmatrix}a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{bmatrix}$](img262.png) |
(59) |
を導入する.転置行列は,
![$\displaystyle \boldsymbol{A}^T= \begin{bmatrix}a_{11} & a_{21} & a_{31} \\ a_{12} & a_{22} & a_{32} \\ a_{13} & a_{23} & a_{33} \end{bmatrix}$](img263.png) |
(60) |
となる.すると,式(
57)は
![$\displaystyle \boldsymbol{A}\boldsymbol{A}^T=I$](img264.png) |
(61) |
と書き直すことができる.ここで,
![$ \boldsymbol{I}$](img265.png)
は単位行列である.この式から,行列
![$ \boldsymbol{A}$](img266.png)
は直交行列となっていることが分かる.この式から,転置行列が
![$ \boldsymbol{A}$](img267.png)
の逆行列になっていることがわかる.すなわち,
である.
この行列
をつかうと,回転した座標系の単位ベクトルを表す式(50)は,
![$\displaystyle \begin{bmatrix}\boldsymbol{i}^\prime \\ \boldsymbol{j}^\prime \\ ...
...\begin{bmatrix}\boldsymbol{i} \\ \boldsymbol{j} \\ \boldsymbol{k} \end{bmatrix}$](img270.png) |
(63) |
![$ \boldsymbol{A}^{-1}=\boldsymbol{A}^{T}$](img271.png)
なので,
となる.
この行列
は座標軸を回転させたとき,座標の成分の変換を表すことを示す.いま,任意の位置ベクトル
を2つの座標系で考える.これは,どちらの座標系から見ても同じベクトルなので,
と書くことができる.したがって,
となる.これらが等しくなるためには,左右のベクトルの係数が等しくなる必要がある.したがって,
である.これを,行列を使った表現にすると,
![$\displaystyle \begin{bmatrix}x^\prime \\ y^\prime \\ z^\prime \end{bmatrix} = \...
...a_{13} & a_{23} & a_{33} \end{bmatrix} \begin{bmatrix}x \\ y \\ z \end{bmatrix}$](img288.png) |
(68) |
となる.すなわち,単位ベクトルの変換を表す行列は,座標変換を表す行列と同じである.
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Yamamoto's laboratory著者:
山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年5月9日