前回の授業で示したように,ベクトルの成分は座標軸に依存している.座標軸が異なると,
その3成分は異なる.座標軸を回転させた場合,ベクトルの成分の変換は,座標系の変換
と同じである.具体的には,座標系を
と回転させる.この回転を
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(41) |
と行列を用いて表現する
3.
座標系の時のベクトル
の成分を
,
座標系では
とする.これらの成分の関係は,
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(42) |
となる.式(
41)と式(
42)を見て分かるよう
に,回転に対して座標の変換とベクトルの成分の変換は全く同じように取り扱われるので
ある.このように座標の回転と同じように,その成分が変換されるものをベクトルと定義
する.これは,ベクトルが,空間に固定された幾何学的な矢と思えば当たり前のことであ
る.そんなに当たり前でもないかも・・・
スカラー量は,座標の回転により変化しない量と定義する.たとえば,ベクトルの大きさ
の2乗
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(43) |
はスカラー量である.この量は座標系の回転に関係なく一定の値である.ベクトルは空間
に固定された矢であり,その長さの2乗であるから当然のように思える.実際にそれを確
認してみよう.式(
41)と式(
42)の回転を表
す行列とベクトルを
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(44) |
と表現する.すると,
である.そして,
である.回転後の座標系でのベクトルの大きさの2乗は
となる.回転前後で,ベクトルの大きさは変化しない.従って,これはスカラー量である.
スカラー量は座標系が回転しても,その値は変わらない.このように回転に対して不変な
量をスカラー量と定義する.あるスカラー量が与えられたとすると,この場合,座
標系を言う必要はない.空間のある点の温度は,座標系を回転させても変化しない.ベク
トルの成分の場合,座標軸が異なるとそれは変化するのと大きな違いである.
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Yamamoto's laboratory著者:
山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年5月9日