他人に冷淡な者は知能が弱い

ウィキペディアによると,これはウィンストン・チャーチルが謹言にしていた言葉とのことです.私もこの言葉を忘れずに生きたい.他人に,暖かく接したい.

全ての人に,暖かく接することは簡単なことではない.とても難しいことです.誰しも,僻み(ひがみ) や妬み、嫉妬の感情があります。これらの感情が全く無い人間もつまらない.全てを悟った,あるいは諦めた老人なら分かる.この感情を適度に持ってい生きたいとも思う.

これで俺達は皆くそ野郎だ

第二次大戦中,米国は原爆の開発(マンハッタン計画)を進めていました.その過程で,終戦まじかの1945年7月16日に,ニューメキシコ州で人類最初の核爆発の実験「トリニティ実験」を行いました.実験は上手くいき,計画通り核爆発が起きました.それを見た実験責任者: ケネス・ベインブリッジ はマンハッタン計画を主導したオッペンハイマーに対して,「”Now we are all sons of bitches.”(これで俺達は皆くそ野郎だ)」と言ったとのこと.

トリニティ実験の爆発直後の火の玉。爆発から16ミリ秒後,火球は200メートル幅.地平線に沿った黒点は木々である.[引用元:トリニティ実験]

この言葉を聞いた時,私はかなり驚きました.巨額な経費ととんでもなく多くの人を動員して,やっと出来上がった原爆の成果 (科学技術の成果) を見て,感慨ひとしおというのが普通の感覚です.特に科学者にしてみれば,世界初の大規模核反応の実験に携わったことは,かなり光栄なことだったはずです.しかし,ケネス・ベインブリッジ は,それがもたらす悲劇を冷静に見抜いていたんでしょうね.こんなに人とお金をかけて,「糞ったれ,なんていうものを作ってしまったんだ」(ブログ筆者主観) と.

少なくとも,科学を志す人はこの言葉の意味を一度は考えてもらいたいと思います.

ハングリーであれ.愚か者であれ.

2005年のスタンフォード大学の卒業式でのスティーブ・ジョブスのスピーチについて,お話します.多くの人,とくに若い人にこのスピーチを聞いて(読んで)もらいたいと考えています.インターネットの検索で「ジョブス スタンフォード スピーチ」とすると見つけることができるでしょう.

このスピーチには有名なフレーズがあります.

Stay Hungry. Stay Foolish.
(ハングリーであれ.愚か者であれ.)

先日の NHK の日曜討論で江崎玲於奈 (1973年ノーベル賞) さんが,「日本に欠けているのはベンチャー企業をやるアントレプレナー(起業家).アントレプレナーは企業と研究者を結び付ける最も重要なもの.」と言っていました.その時,ジョブスのこの言葉を思い出しました.

研究を成功させるためには,研究者を束ねて一つの方向に向かわせる必要があります.これがリーダーの最も重要な仕事です.そのリーダーに求められる資質は,研究能力とは別物です.このスピーチのフレーズこそがリーダーに求められる条件と思います.

研究のアウトプットの評価 (世間が求めているもの) が変わってきています.かつては,新しい発見はそのまま評価されました.20世紀中頃まで,学術的にブレークスルーとなるような発見が相次いだからです.しかし,ここにきてそのような発見はまれになりつつあります.その一方で,世間には研究で飯を食っている大量の研究者がいます.そのような人たちに,世間は「役に立つものを創りだして欲しい」と願っています.それを実現するためには,江崎玲於奈さんが言われる「アントレプレナー(起業家)」が必要になります.

ステーブ・ジョブスは,世界で最も成功したアントレプレナーです.彼は研究者ではありません.技術者としても今一歩だったかもしれません.にもかかわらず,研究者や技術者を束ね,画期的な製品をたくさん創りました.どうしてそんなことができたのでしょうか? このスピーチを聞くと(読むと),それが少しわかったような気になります.