FPGAとは
FPGA (Field Programmable Gate Array) は，後から中身の回路構造を書き換えられる電子部品です．一般的な電子回路では，部品を一度作ると動作は固定されますが，FPGAではその制約がありません．プログラムを書き込むことで，ハードウェアそのものの動作を変更できる点が大きな特徴です．
FPGAの内部には，LUT（論理テーブル），フリップフロップ，そしてそれらを結ぶ可変配線が大量に配置されています．設計者は「どの論理をどの配線で接続するか」を記述し，その情報をコンフィグレーションデータとして書き込みます．書き込み後，FPGA内部は実際にその回路構成へと変化します．
この点でFPGAは，ソフトウェアを実行する装置ではなく，書き換え可能なハードウェアと考えるのが正しいです．内部では命令を順番に解釈・実行するCPUは存在せず，信号は回路網をそのまま流れます．そのため，多数の処理を同時に並列実行でき，遅延も小さくなります．
一方，マイコンはCPUを内蔵した小さなコンピュータであり，C言語などで書かれた命令を順次実行します．制御や通信などの汎用用途ではマイコンが扱いやすいですが，高速処理や厳密なタイミング制御ではFPGAが有利です．用途に応じて両者を使い分けることが重要です．
仕組み
FPGAは，内部の回路構造を後から書き換えられる「書き換え可能なハードウェア」です．その仕組みの中心にあるのは，SRAM (静的RAM) による回路制御です．
FPGAの内部には，論理を実現するLUT，状態を保持するフリップフロップ，そしてそれらを結ぶ大量の配線とスイッチが配置されています．これらの配線の接続・切断は，MOSトランジスタで構成されたスイッチによって行われます．スイッチのON/OFFは，SRAMに記憶された1ビットの情報で制御されます．SRAM の値が「1」であればトランジスタがONになり，配線が接続されます．「0」であればOFFとなり，配線は切断されます．LUTも本質的には小さなSRAMで構成されています．入力信号がアドレスとなり，対応するSRAMビットが出力されます．これにより，ANDやORなどの論理回路を自由に構成できます．多くのFPGAはSRAM方式のため，電源を切ると回路構成は消えます．電源投入時に外部メモリから設定データを読み込み，回路が再構成されます．
FPGAではCPUの命令実行は行われません．信号は構成された回路網をそのまま流れるため，多数の処理を同時に並列で実行できます．
このようにFPGAは，メモリの内容によってハードウェアの形そのものを決めるデバイスです．これがFPGAを理解するための最も重要な基礎概念です．
主なメーカーと特徴
表1 に FPGA の主なメーカーと特徴を示します．
| メーカー | 主な FPGA/SoC 系シリーズ | 特徴 | 得意な用途 | 代表的な開発ツール |
|---|---|---|---|---|
| AMD（旧Xilinx） | Versal / Zynq / UltraScale+（Spartan / Artix / Kintex / Virtex など） | ハイエンド?ミドルまで幅広い。データセンター/通信向けの高性能帯が強い。 | 通信機器、計測・画像処理、高速I/O、アクセラレータ | Vivado / Vitis |
| Intel（旧Altera, 現 Altera ブランド） | Agilex / Stratix / Arria / Cyclone / MAX | ハイエンド（Agilex/Stratix）?コスト最適（Cyclone/MAX）まで。SoC系も充実。 | 通信・産業機器、FPGAアクセラレーション、組込みSoC | Quartus Prime |
| Lattice Semiconductor | iCE40 / MachXO / ECP / Avant（Nexus系など） | 低消費電力・小型・低?中規模に強い（エッジ/モバイル寄り）。 | 小型機器のI/O拡張、ブリッジ、低電力画像/センサ周り、制御補助 | Lattice Radiant / Lattice Propel など |
| Microchip（旧Actel/Microsemi） | PolarFire / SmartFusion2 / IGLOO2 / ProASIC3 | フラッシュ系（不揮発）を売りにする製品が多く、低電力・即時起動・信頼性/セキュリティ重視の文脈で語られることが多い。 | 産業・医療・防衛/航空など、信頼性やセキュリティ重視の組込み | Libero SoC |
| GOWIN（Gowin Semiconductor） | Arora（GW2Aなど）/ LittleBee（GW1N系など） | 低コスト帯の選択肢として流通。シリーズによりSRAM系/フラッシュ系があるとされる。 | コスト重視の組込み、ブリッジ、教育/試作 | Gowin EDA |
| Efinix | Titanium / Topaz / Trion | 小型・低電力・組込みアクセラレーション志向を打ち出す。シリーズごとに規模感が異なる。 | エッジAI、画像・計測、組込みアクセラレーション | Efinity |
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| 2025年12月13日 | ページの新規作成 |