3 付録


3.1 指数関数の級数和

式(17)に示された $ \frac{1}{N}\sum_{j=0}^{N-1}e^{i \ell x_j}$は 以下のように等比級数の和を考えることにより導くことができる。

$\displaystyle \frac{1}{N}\sum_{j=0}^{N-1}e^{i \ell x_j}$ $\displaystyle =\frac{1}{N}\sum_{j=0}^{N-1}\left(e^{i \ell\frac{2\pi}{N}}\right)^j$    
  $\displaystyle =\frac{1}{N}\frac{1-e^{i\ell\frac{2\pi}{N}N}}{1-e^{i\ell\frac{2\pi}{N}}}$    
  $\displaystyle =\frac{1}{N}\frac{1-e^{2\pi i\ell}}{1-e^{2\pi i\frac{\ell}{N}}}$ (31)

$ \ell$は整数なので分子は常にゼロで、分母は$ \ell/N$が整数でないときはゼロではない。 従って、$ \ell/N$が整数でないとき( $ \ell\neq 0$の場合)、この式はゼロになることが分 かる。一方、$ \ell/N$が整数のとき($ \ell=0$の場合)、分母もゼロとなる。このときの式 の値を評価するために、分母分子をテイラー展開して、$ \ell\to 0$の極限を考える。

$\displaystyle \lim_{\ell\to 0}\frac{1}{N}\frac{1-e^{2\pi i\ell}}{1-e^{2\pi i\frac{\ell}{N}}}$ $\displaystyle =\lim_{\ell\to 0}\frac{1}{N}\frac {1-(1+2\pi i\ell-4\pi^2\ell^2+\cdots)} {1-(1+2\pi i\frac{\ell}{N}-4\pi^2\frac{\ell^2}{N^2}+\cdots)}$ (32)
  $\displaystyle =\lim_{\ell\to 0}\frac {-2\pi i\ell+4\pi^2\ell^2+\cdots} {-2\pi i\ell-4\pi^2\frac{\ell^2}{N}+\cdots}$    
  $\displaystyle =1$    

以上より、式(17)が求められた。しかし、最後の$ \ell\to 0$の極限 の操作はかなり強引に思えるが、数学の専門家はどう考えるか興味がある。


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著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年6月29日