連立方程式の最後の問題は、フーリエ級数に関係した問題です。そこで、その
問題について簡単に解説しておきます。
フーリエ級数は、フーリエ(1768-1830 フランス)が熱伝導の方程式を研究して
いるときに発見した級数です。今は、もっぱら波(振動も波と考える)の問題に
適用されています。
フーリエ級数とは、つぎのように区間[]で定義された任意の関数を
とで展開したものです。
この式が正確に成り立つためにに課せられる条件は、はたかだか
有限個の有限な不連続点しか持たず、また有っても有限個の極値、極大値また
は極小値を持つことです。科学技術で用いられる普通の関数はこの条件を満足
します。有限個の有限な不連続点も許されのです。これは、非常に驚くべきこ
とです。今までほぼ無視してきた不連続点が取り扱えるというのは面白いこと
です。
このように関数を展開することはいろいろな場面で使われます。皆さんは、フー
リエ級数以外にも冪乗に展開するテイラー展開というものをすでに学習してい
るはずです。場面に応じて都合の良い展開を使えばよいのです。
本当に任意の関数が、式(1)に展開できることの
証明は数学の教科書に譲ることにして、その展開の係数、フーリエ係数
とを求める方法を示します。これこそが、フーリエ級数やフーリエ変換、
あるいはコンピューターによる離散フーリエ変換(DFT)または高速フーリエ変
換(FFT)の実際の計算です。
この展開係数の理論的な式は、三角関数の次の性質を使いことにより求めるこ
とができます。ただし、 とは1以上の整数とします。
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まずは、のを計算します。そのために、式(1)
の両辺を区間[]をで積分すればよく、
となります。これから、
と計算できます。
は、関数の区間[]の平均値
になっていることに気が付いてほしい。これを技術者は直流成分と言います。
つぎに、を求めよう。式(1)の両辺にを書けて、区間[]をで積分します。すると、
となります。これから、直ちには計算できて、
となります。ここで、この式と式(8)を比べます。すると、
となることが分かります。式がひとつ節約できたことになります。同様に、
は、両辺にをかけて、積分を行います。すると、
となります。したがって、は、
と求めることができます。この式と式(11)からフーリエ係数
が計算でき、式(1)の展開が可能となるわけです。
これまでは、関数の区間[]としてきましたが、式
(1)はその区間の外側でも計算できます。外側の
値が気になるところですが、これは三角関数の性質により直ちにわかります。
フーリエ級数を形成する三角関数は、の周期を持ちますので、フーリエ
級数も同じ周期を持つことになります。したがって、区間[]の形が
その外側で周期的に現れることになります。波と一緒です。
フーリエ級数は、あらゆる関数は三角関数からできていると言っています。そ
の三角関数は、原点をを境に対称なと反対称なに分けることができ
ます。このことから、どんな形の関数でも対称関数と反対称な関数に分解でき
ることを意味しています。
もし、元の関数が原点を境に対象な形をしているならば、そのフーリエ級数は
の和のみで書かれることになります2。一方、原点を中心に反対照な関数であれば、
の和のみで表現できます。これは、やを求める式からも
理解できます。
ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年8月21日