すでに行列の固有値と固有ベクトルについては、学習しているはずであるが、忘れている
者も多いと思うので復習をしておく。ただし、ここでは取り扱いの面倒な行列、例えば複
数の同じ固有値(縮退)を持つような行列などは考えないものとする。
行列
の固有値を
、固有ベクトルを
とすると、それらには、次
の関係がある。
![$\displaystyle \boldsymbol{A}\boldsymbol{x}=\lambda\boldsymbol{x}$](img4.png) |
(1) |
つまり、行列
![$ \boldsymbol{A}$](img1.png)
はベクトルを変換するが、それが固有ベクトルの場合、固有値の乗じ
た変換しかしないのである。要するに、行列
![$ \boldsymbol{A}$](img1.png)
には特別の方向
![$ \boldsymbol{x}$](img3.png)
と大きさ
![$ \lambda$](img2.png)
があるのである。
固有値は、式(1)を変形して、
![$\displaystyle (\boldsymbol{A}-\lambda\boldsymbol{I})\boldsymbol{x}=0$](img5.png) |
(2) |
から求める。もちろん、この式から
![$ \boldsymbol{x}=0$](img6.png)
という解もあるが、これはつまらないので
興味の対象外である。それ以外の有用な解は、
![$\displaystyle \det(\boldsymbol{A}-\lambda\boldsymbol{I})=0$](img7.png) |
(3) |
の場合に生じる。この方程式を特性方程式という。
![$ \boldsymbol{A}$](img1.png)
がn次の正方行列であれば、
これはn次方程式になるので、n個の解がある。またそれに応じて、n個の固有ベクトルが
ある。
このようにして、何がうれしいかというと、線形の連立微分方程式を解いたりするときに
この方法は大変役に立つのである。
固有ベクトルを列ベクトルとして、n個並べる行列
![$ \boldsymbol{S}$](img8.png)
を考える。即ち、
![$\displaystyle \boldsymbol{S}=[\boldsymbol{x}_1,\boldsymbol{x}_2,\boldsymbol{x}_3,\cdots,\boldsymbol{x}_n ]$](img9.png) |
(4) |
である。そして、対角成分に固有値を並べた対角行列
![$\displaystyle \Lambda=\left[ \begin{array}{@{\,}ccccc@{\,}} \lambda_1 & & & & \...
...smash{\Huge$0$}}\quad} & & \ddots & \\ & & & & \lambda_n \\ \end{array} \right]$](img10.png) |
(5) |
を考える。
これらの行列から、
![$\displaystyle \boldsymbol{A}\boldsymbol{S}=\boldsymbol{S}\Lambda$](img11.png) |
(6) |
が直ちに分かる。従って、行列
![$ \boldsymbol{A}$](img1.png)
は、固有ベクトルからなる行列を用いて
と対角化できる。この
![$ \boldsymbol{S}$](img8.png)
をを
![$ \boldsymbol{A}$](img1.png)
の対角化行列と言い、これにより固有値が並
ぶ行列に対角化できる。
この様に行列を変形して、なにがうれしいのか。それは、次に示すように、行列を何回も
乗算するときに計算がうんと楽になるのである。
2.3 行列の乗算
先ほどの式は、
![$\displaystyle \boldsymbol{A}=\boldsymbol{S}\Lambda\boldsymbol{S}^{-1}$](img13.png) |
(8) |
のように書くことができる。次に行列をn回乗算することを、
![$ \boldsymbol{A}^n$](img14.png)
と書くことにす
る。通常の記号とおなじである。すると、
となる。ここで、
![$ \Lambda$](img20.png)
は対角行列なので、その計算は簡単で、
![$\displaystyle \Lambda^n=\left[ \begin{array}{@{\,}ccccc@{\,}} \lambda_1^n & & &...
...ash{\Huge$0$}}\quad} & & \ddots & \\ & & & & \lambda_n^n \\ \end{array} \right]$](img21.png) |
(10) |
となる。これことは、固有値と固有ベクトルを使ってベクトルを表現すると、そのn乗は
感単に計算できると言っている。
ホームページ:
Yamamoto's laboratory著者:
山本昌志
Yamamoto Masashi
平成16年12月14日