完全流体の渦の速度は、半径に反比例する。
![$\displaystyle v=\frac{\Omega}{2\pi r}$](img1.png) |
(1) |
ここで、
![$ \Omega$](img2.png)
は渦の強さを表し、これがある位置が渦の中心である。そう
して、渦が半時計回りの時、
![$ \Omega \geq 0$](img3.png)
とする。これを取り囲むように
積分を行うと、
となる。これは、これは渦の中心を取り囲んで、一回りすれば、積分の経路に
よらずいつも同じ値をとる。それは、次のように考える。渦の中心を中心に同
心円の積分の値はいつも同じ、
![$ \Omega$](img2.png)
になることは、簡単な計算で分かる。
これが成り立つのは、流速
![$ \boldsymbol{v}$](img5.png)
が半径に反比例しているからである。ここ
で、図
1のように、1周の
![$ \Delta\theta/2\pi$](img6.png)
を考える。当
然、
![$ \Delta\theta$](img7.png)
は非常に小さいとする。この場合、同心円状の積分の一部
である、線分1の積分は
![$ \boldsymbol{v}\cdot d\boldsymbol{l}=vr\Delta\theta$](img8.png)
になるのは、
直ちに分かる。次に、任意の積分経路の一部である線分2を考える。
![$ \Delta\theta$](img7.png)
が非常に小さいので、線分2の平均的な流速も
![$ v$](img9.png)
になるであろ
う。線分の長さは
![$ r\Delta\theta/\cos(\phi)$](img10.png)
となる。ただし、式
(
2)の積分は内積となっているため、
となる。したがって、線分1に沿っても、線分2に沿っても積分の値は同じであ
る。このことから、どこのパスで積分しても値は同じことが理解できる。
これまでの話は渦であったが、電流と磁場は
![$\displaystyle \boldsymbol{B}=\frac{\mu_0 I}{2\pi r}$](img12.png) |
(4) |
という関係があるので、同じことが言える。この式の左辺はベクトル、右辺は
スカラーになっており矛盾しているが、今は細かいことを考えないこととする。
後で、静磁場を学習するときに矛盾ない式を示すので我慢してほしい。磁場の
式(
2)に対応するものは、
となる。
次に、教科書に従い、微小領域でベクトル場の回転を考える。ただし、教科書
の表現は気に食わないので、少し図
2のように変える。積分
は、図の矢印に沿って一周、積分を行う。
まず、図の下の部分と上の部分の積分を考える。ただし、
と
が非常に小さいので、積分は積の和に置き換えられる。同じx座標
で、上の部分と下の部分の積分は
となる。テイラー展開の1次まで計算し、2次以降の高次を無視するのは常套手
段でよく覚えておく必要がある。同様に、左右の積分は、
![$\displaystyle \int_{\text{left,right}}=\frac{\partial v_y}{\partial x}\delta x \delta y$](img18.png) |
(7) |
となる。この上下の積分と左右の積分を足し合わせて、一周の積分とする。そ
れは、
となる。この式の右辺の括弧内は、まさに応用解析で学習したベクトル場の回
転である。すなわち、
である。したがって、微小区間の積分は、
![$\displaystyle \oint \boldsymbol{v}\cdot d\boldsymbol{l} =\nabla\times\boldsymbol{v}\cdot d \boldsymbol{S}$](img21.png) |
(10) |
と書き改めることができる。この積分の値は、微小領域
![$ \delta S=\delta x
\delta y$](img22.png)
の含まれる渦に等しくなる。式で表すと、
![$\displaystyle \nabla\times\boldsymbol{v}\cdot d \boldsymbol{S}=\Omega$](img23.png) |
(11) |
となる。次に渦の密度
![$ \boldsymbol{\omega}$](img24.png)
を次式より
![$\displaystyle \Omega=\delta \boldsymbol{S} \cdot \boldsymbol{\omega}$](img25.png) |
(12) |
定義する。すると、
![$\displaystyle \nabla\times\boldsymbol{v}=\boldsymbol{\omega}$](img26.png) |
(13) |
という関係が導かれる。要するにベクトル場を微分(
![$ \nabla\times$](img27.png)
)すれば、
その部分の渦の中心の密度が得られるわけである。これと、同じ関係
![$\displaystyle \nabla\times\boldsymbol{B}=\mu_0\boldsymbol{i}$](img28.png) |
(14) |
が磁場と電流にもある。ここで
![$ \boldsymbol{i}$](img29.png)
は電流の密度である。この式の言って
いることは、磁場(ベクトル場)を微分(
![$ \nabla\times$](img27.png)
)すれば、その部分の電
流の密度が得られるわけである。これは、電流が渦の中心、磁場が流体の速度
と同じ関係になっているからである。
先ほどの
![$ \nabla\times\boldsymbol{B}\cdot d\boldsymbol{S}$](img31.png)
は、微小区間の回転であった。
それを教科書の図2.7のように足し合わせると、隣同士の同じ積分領域はキャ
ンセルされるので、
という関係が得られる。これをストークスの定理という。
このストークスの定理から、
![$\displaystyle \oint\boldsymbol{B}\cdot d\boldsymbol{l}=\mu_0 I$](img13.png) |
(16) |
が得られる。この式が言っていることは、ある閉じた領域で一周にわたり磁場
を積分すれば、電流が分かるということである。
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Yamamoto's laboratory著者:
山本昌志
Yamamoto Masashi
平成16年9月28日