2 原理

一般に,電源回路はトランスと整流回路,平滑回路から構成される.以降,整流回路と平 滑回路について簡単に説明する.

2.1 整流回路

単相交流の整流回路としては,整流素子の接続の仕方によって多くの回路がある.その 代表的なものとして,単相半波整流回路(図1)や単相全波整流回路(図 2),単相ブリッジ整流回路(3)がある.

単相半端整流回路では,変圧器二次側電圧が負の半波の間は負荷には電流が流れな いため,脈動が大きい.そのため,実際には平滑回路を通して使用する.

単相全波整流回路では,変圧器の二次側巻線の中性点を利用することによって,負の半波 の間はもう一方の整流素子を通して負荷に電流が流れる仕組みになっている.この場合に も脈動分を小さくするため,実際には平滑回路を通して使用する.

3の全波整流回路では整流素子を2個用いて全波整流を実現して いるが,これでは変圧器の利用効率が悪い(半波毎に交互に半分ずつしか利用していない). そこで,図3のように整流素子4個をブリッジ状に接続することに よって変圧器の利用効率を上げる回路が大電力用の単相全波整流回路としよく用いられる.

図 1: 単相半波整流回路
\includegraphics[keepaspectratio, scale=0.8]{figure/DC_ps/hw_recti.eps}
図 2: 単相全波整流回路
\includegraphics[keepaspectratio, scale=0.8]{figure/DC_ps/fw_recti.eps}
図 3: ブリッジ整流回路
\includegraphics[keepaspectratio, scale=0.8]{figure/DC_ps/bridge_recti.eps}

2.2 平滑回路

整流された出力電圧には直流分のほかに多くの脈動分が含まれるので,このままでは直流 とはみなせない.より完全な直流電圧とするためには,整流出力に含まれている脈動分を 除去する必要がある.それには,コンデンサーやチョークコイルを用いた回路が使用され る.この回路を平滑回路という.

平滑回路には,図4に示すコンデンサー入力型と図 5に示すチョーク入力型がある.

図 4: コンデンサー入力形平滑回路
\includegraphics[keepaspectratio, scale=0.8]{figure/DC_ps/CapacitorSmoothingCircuit.eps}
図 5: チョーク入力形平滑回路
\includegraphics[keepaspectratio, scale=0.8]{figure/DC_ps/ChokeSmoothingCircuit.eps}

2.2.1 コンデンサー入力型平滑回路

半波整流回路にコンデンサー入力型平滑回路を接続した例について述べる.図6がそ の回路で,図7はその出力波形である.図において,$ R_l$は負荷抵抗,$ V_a$は交流 入力(平滑回路に対して),$ V_{am}$はその最大値である.

いま,電源とダイオードの抵抗を無視すれば,コンデンサー$ C$はダイオードの導通時に $ V_{am}$まで充電され,その後,交流入力の瞬時値が$ V_{am}$より小さくなり,ダイオー ドが非導通になると$ C$$ R_l$を通して放電($ C$$ R_l$の時定数に従って)を開始する. この状態は,交流入力の瞬時値が再び上昇してコンデンサーの端子電圧より高くなるまで 続く.このようにして,コンデンサーの充放電が繰り返される.

なお,全波整流の場合も,放電時の周期が半分になるだけで,平滑の仕組みは半波整流の 場合とまったく同様である.

この平滑回路は軽負荷の場合には交流入力の最大値$ V_{am}$近くまでの直流が得られる利 点があるが,負荷に対する電圧変動率がやや大きいという欠点もある.

図 6: コンデンサー入力形平滑回路
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/DC_ps/CapacitorSmoothingCircuit_with_rectify.eps}
図 7: コンデンサー入力回路の出力波形
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/DC_ps/CapacitorSmoothingCircuit_wf.eps}

2.2.2 チョーク入力型平滑回路

チョーク入力型平滑回路を図8に示す.この場合に は,交流入力(整流出力)中の基本波および高調波分は直列の高インピーダンス($ i\omega
L$)によって阻止された後,並列の低インピーダンス( $ 1/i\omega C$)で短絡されて,負荷 にはほとんど流れない.また,コイルの抵抗は小さいので,このための電圧降下は極めて 小さい.

9にチョーク入力型平滑回路の出力特性を示す. この図では,出力電圧は出力電流がある値を超えると変化が極めて小さくなっている.

すなわち,臨界点を超えるとチョークコイルに流れる電流の直流成分が交流分(リップル) を上回り,そのためチョークコイルに流れる電流は連続して流れ,決してゼロになること はない.ところが,臨界点に達するまでは交流分のほうが直流分を上回り,そのためチョー クコイルを流れる電流が不連続になってしまうのである.

したがって,半波整流のようにチョークコイルに流れる電流が半周期毎に切れ目を生じる 場合は,電源抵抗が大きくなって電源回路としては適さない.全波整流の場合には,この 切れ目が生じないので,チョーク入力型平滑回路は全波整流の場合にのみ使用できるとい える.

図 8: チョーク入力形平滑回路
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/DC_ps/ChokeInputSmoothingCircuit.eps}
図 9: チョーク入力形平滑回路の出力特性
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/DC_ps/ChokeSmoothingCircuitOutput.eps}

2.2.3 平滑回路とろ波回路

平滑回路だけでは脈動分の除去は不十分であるので,さらに図 10に示すようなRCフィルターやLCフィルターを接続し て脈動分を除去する.この場合,ろ波回路は一般に平滑回路に含められて考えられ,両者 の区別はされない.
図 10: 平滑回路とろ波回路
\includegraphics[keepaspectratio,scale=1.0]{figure/DC_ps/SmoothingCircuit_filter.eps}

ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成17年10月21日


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