単相半端整流回路では,変圧器二次側電圧が負の半波の間は負荷には電流が流れな いため,脈動が大きい.そのため,実際には平滑回路を通して使用する.
単相全波整流回路では,変圧器の二次側巻線の中性点を利用することによって,負の半波 の間はもう一方の整流素子を通して負荷に電流が流れる仕組みになっている.この場合に も脈動分を小さくするため,実際には平滑回路を通して使用する.
図3の全波整流回路では整流素子を2個用いて全波整流を実現して いるが,これでは変圧器の利用効率が悪い(半波毎に交互に半分ずつしか利用していない). そこで,図3のように整流素子4個をブリッジ状に接続することに よって変圧器の利用効率を上げる回路が大電力用の単相全波整流回路としよく用いられる.
平滑回路には,図4に示すコンデンサー入力型と図 5に示すチョーク入力型がある.
いま,電源とダイオードの抵抗を無視すれば,コンデンサーはダイオードの導通時に まで充電され,その後,交流入力の瞬時値がより小さくなり,ダイオー ドが非導通になるとはを通して放電(との時定数に従って)を開始する. この状態は,交流入力の瞬時値が再び上昇してコンデンサーの端子電圧より高くなるまで 続く.このようにして,コンデンサーの充放電が繰り返される.
なお,全波整流の場合も,放電時の周期が半分になるだけで,平滑の仕組みは半波整流の 場合とまったく同様である.
この平滑回路は軽負荷の場合には交流入力の最大値近くまでの直流が得られる利 点があるが,負荷に対する電圧変動率がやや大きいという欠点もある.
図9にチョーク入力型平滑回路の出力特性を示す. この図では,出力電圧は出力電流がある値を超えると変化が極めて小さくなっている.
すなわち,臨界点を超えるとチョークコイルに流れる電流の直流成分が交流分(リップル) を上回り,そのためチョークコイルに流れる電流は連続して流れ,決してゼロになること はない.ところが,臨界点に達するまでは交流分のほうが直流分を上回り,そのためチョー クコイルを流れる電流が不連続になってしまうのである.
したがって,半波整流のようにチョークコイルに流れる電流が半周期毎に切れ目を生じる 場合は,電源抵抗が大きくなって電源回路としては適さない.全波整流の場合には,この 切れ目が生じないので,チョーク入力型平滑回路は全波整流の場合にのみ使用できるとい える.