このように電荷と磁荷はよく似ているが、決定的に異なることがある。電荷は単独で取り 出すことができるが、磁荷は絶対に単独では存在しないのである4。このことは、図1で示すように、磁石を 半分にしてやはりN極とS極があり、それを半分にしてもその断片にも両方の極が存在する ことからも分かる。N極あるいはS極のみの断片は作れないのである。それに対して、電荷 の場合、図2のように帯電した棒を分割すると、正または負のみに帯電し た断片を作ることができるのである。
電荷の場合と異なり単独の磁荷が存在しないと言うことは、式(1) が成り立つ状況は自然には起きえないと言うことである。しかし、磁荷の考えが全く間違っ ているとも言えない場合がある。適当に、正負の磁荷が等量分布していると仮定すると、 観測される磁場と同じものを計算上、作ることが可能である。これは計算のテクニック 上で正しい磁場を作っているにすぎず、単独の磁荷はやはり存在しないことを忘れてはな らない。このテクニックは磁石の磁場を考える場合使われることがある。
電荷のクーロンの法則を使うことは多いが、磁荷の式(1)はほとん ど使われない。少なくとも、私は一回も使ったことがない。したがって、諸君は磁荷のクー ロンの法則は忘れて良い。
それならば、クーロンはこの磁荷の式(1)をどのようにして発見し たのであろうか?。興味があるものは、実験方法について、調べよ。
どのようにして、この考えに至ったかは分からないが、電流を流すと方位磁石は力を受け て、方向が変わると考えた。磁石は力を受けて、電流と同じ方向、あるいは反対の方向に 向くと考えた。これはもっともなことで、電線に流れている電流が、磁石の北の先端が受 ける力は、対称性から考えて、右や左であるわけがない。電流と同じ方向か、その反対で ある。そこで、学生の前で、図3のように、磁石と電線を配置して、 スイッチを入れた。結果は、期待に反して、磁石は動かなかったのである。これは、磁石 の方向と電流が作る磁場の方向が一致していたために動かなかったのである。ここで、電 流を反対にすれば、磁石が180度回転して、それはドラマチックなことが起きたはずであ るが、なぜかエルステットは、反対に電流を流していない。それにしても、1/2の確率で エルステットは運がなかった。
しばらく、自分の考えがうまくいかないことに、悶々としていたエルステットは、何を思っ たか、あるいは実験を間違えたか、磁石と電線を同じ方向に向けて、電流を流した。そう すると、磁石が90度回ったのである。これには、エルステットも驚いたに違いない。対称 性から考えて、どうしてもありえないことが起こったのである5。1820年の春のことである。エルステットはなかなか納 得がいかなかったが、実験を繰り返し、その事実を認めた。そして、その発見について、 その年の7月に報告書を書いた。
この報告書が他の研究所に届くや否や、多くの実験が行われ、新たな発見が相次いだ。
この電流が流れる導体間に働く力について、近接作用の考えを取り入れることにしよう。 電流は場を作り、その場からもう一方の導線に力が作用すると考える。この場を磁場と言 い、それを用いると、式(2)は、
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この磁場については、導線の方向を変えたりして詳細に調べられて。その結果、1本の直 線電流が作る磁場は、