ここでは、スカラー場の微分を考える。温度を例にして考えることに
するが、ここでの話はスカラー場一般について成り立つ。この温度は、位置の関数なので
![$ T(x, y, z)$](img3.png)
と書くことができるであろう。いろいろな微分が考えることができる。た
とえば、
![$\displaystyle \if 11 \frac{\partial T}{\partial x} \else \frac{\partial^{1} T}{\partial x^{1}}\fi$](img4.png) |
(1) |
である。これは、座標軸の取り方に依存してる。座標軸を変えれば、値が変わってしまう
のは明らかである。従って、スカラー量はないし
2、ベクトル量でない
3のも明らかである。スカラー量でもベクトル量でも無いものは、
座標軸を変えると式が変わってしまい、物理的な考察をするときには役に立たない。
まだ他に、スカラー場の微分はいろいろ考えられる。しかし、実際問題、スカラー場の微分で役に
立つのは、勾配
と呼ばれる量である。私は、これ以外の微分に出会ったことはない。スカラー場の微分で
役に立つものはこれしか無いと考えよい。
この勾配には3つの成分があり、ベクトル場になっている。それぞれは、位置の関数であ
るので場の量であることは確かである。また、
はなめらかな関数なので、この3成分
もなめらかに変化するのも確かである。後の問題は、この3成分がベクトル量であること
を示せば良い。それを2つの方法で示す。
式(2)がベクトルであることを示す。非常に近くの2点の温度を考える。
それぞれを
と
とす
る。温度差は、
となる。2点の距離を0の極限まで近づけると、最後の式は等号で結ばれることになる。そ
して、変位ベクトル
![$ \Delta\boldsymbol{R}=(\Delta x, \Delta y, \Delta z)$](img14.png)
と、記号
![$ \nabla T$](img15.png)
なるものを
![$\displaystyle \boldsymbol{\nabla} T=\left( \if 11 \frac{\partial T}{\partial x}...
...{\partial T}{\partial z} \else \frac{\partial^{1} T}{\partial z^{1}}\fi \right)$](img16.png) |
(4) |
を導入すると
となる。左辺は温度差なので座標軸を回転させても値は変わらないから、スカラー量であ
る。変位
![$ \Delta\boldsymbol{R}$](img20.png)
もベクトル量である。
![$ \boldsymbol{\nabla} T$](img21.png)
は、ベクトル量
![$ \Delta\boldsymbol{R}$](img20.png)
との内積をとることによりスカラー量
![$ \Delta T$](img22.png)
になる。従って、
![$ \boldsymbol{\nabla} T$](img21.png)
はベクトル量である。これをスカラー場
![$ T$](img6.png)
の勾配と言い、
![$ \mathrm{grad} T$](img23.png)
と書いたりもする。まとめると、
である。
つぎに式(6)がベクトル量になっていることを、座標軸の回転により証
明しよう。3次元は大変なので2次元の場合で説明するが、3次元に拡張しても同じことが
言える。元の座標を
、それを
回転させた座標を
とした場合、それらには、
|
![$\displaystyle \begin{bmatrix}x^\prime y^\prime \end{bmatrix}= \begin{bmatrix...
...a -\sin\theta & \cos\theta \end{bmatrix} \begin{bmatrix}x y \end{bmatrix}$](img28.png) |
|
あるいは |
|
![$\displaystyle \begin{bmatrix}x y \end{bmatrix}= \begin{bmatrix}\cos\theta & ...
...ta & \cos\theta \end{bmatrix} \begin{bmatrix}x^\prime y^\prime \end{bmatrix}$](img29.png) |
(7) |
という関係がある。変位ベクトル
![$ (\Delta x, \Delta y)$](img30.png)
も同じ変換なので、
となる。先ほどと同じように距離を無限小にとった場合の温度差をプライムが付いた座標
系で考える。温度変化は、
となる。この式の右辺の左側のベクトルと式(
5)の2次元
の場合を比較すると、
となる。これを見て分かるように、
![$\displaystyle \left( \if 11 \frac{\partial T}{\partial x} \else \frac{\partial^...
...{\partial T}{\partial y} \else \frac{\partial^{1} T}{\partial y^{1}}\fi \right)$](img41.png) |
(12) |
はという量は、座標軸の回転に対して、座標が受けるのと同じ変換を受ける。従って、ベ
クトル量である。これと同じことが、3次元の式(
6)についても成り立つ
のでベクトル量である。
ホームページ:
Yamamoto's laboratory著者:
山本昌志
yamamoto masashi
平成17年5月14日