ほとんどの物理法則は、1階微分あるいは2階微分方程式で書かれる。3階の微分方程式な
んかお目にかかったことはないし、5階や23階とかも無い。実に不思議なことである。こ
こでは、ベクトル演算子を使ったスカラー場とベクトル場の2階微分を考える。
ベクトル演算子を使った1階微分は先ほど示したとおりである。2階微分もしばしば現れる
ので、それを示しておく。先程述べたようにベクトル演算子も、ベクトルと同じように振
る舞う。そこで、ベクトルに関する式を先に示しておいた方が良いだろう。
と
をベクトルとして、重要なベクトル恒等式は、
である。これらの証明は、各自ベクトル解析の教科書を見よ。
スカラー場を
ベクトル場を
とした場合、ベクトル演算子を使った2階微
分の可能な組み合わせは、次の通りである。
これら、全ての組み合わせについて、どうなるか考えよう。
まずは、通常のベクトルの演算で0になるものを探し、その関係を利用して式
(23)〜(27)の演算で0になるものを類推する。以下の
ベクトルの演算が0になることは直ちに分かる。
|
式(19) |
(28) |
|
式(20)そのもの |
(29) |
これらの関係から、
を
、
を
とすると
|
|
(30) |
|
|
(31) |
と類推できる。類推ではあるが、これは正しい式である。学生諸君は、成分を計算してこ
れが成立することを確認すること。
次にベクトル公式
を用いた場合を考える。
と
を
で置き換え、
を
とすると、
となる。右辺第2項の
が変である。この困難を避
けるために、少し技巧的であるが、式(
32)を
|
(34) |
とすればよい。右辺第2項は、ベクトル
とスカラー
との積であるため、演算の順序を入れ替えても良い。こ
うすると、式(
33)は
となり、正しそうである。事実、これは正しい式である。成分ごとに、きちん
と微分を行えば分かる。
以上で、最初に示した2階の微分のうち、式(24)と
(26)、(27)の公式を導いた。残りは、特に興
味のあるものは無い。そこで、以上の結果をまとめると
となる。
ここで、 という演算子が現れている。これは、ラプラス演算子と言われるも
ので、いろいろな場面で活躍する。これについては、後でのべる。
これまでの話をまとめると、ベクトル演算子
は通常のベクトルの演算
規則が成り立ち、便利である。諸君は、これを上手に使えばよい。もし、その
公式が気になるようであれば、成分に分けて、こつこつと微分をしてみれば良
い。
先ほど、ベクトル演算子
は通常のベクトル演算と同様に扱えると述べ
たが、注意が必要である。例えば、通常のベクトル公式
|
(41) |
である。
もし、
を
と置き換えると
?????? |
(42) |
となる。ベクトル
の方向は
に関係するし、
も
同様である。したがって、0になるのは特殊な場合である。
これは、次のように考える。最初の
はに作用し、つぎのものは
に作用する。したがって、同じ
でも異なるベクトルと考える。
だからと言って、
が成り立たないというわけでは
ない。この場合、2つの
は同じに作用する。
ベクトル演算子
を
としてスカラー積やベクトル積を計算して、勾配や発散、回
転を計算できるのは、カーテシアン座標系のみである。ほかの座標系になると、かなり複
雑になる。詳細は、私のwebページに載せている。
http://www.akita-nct.jp/ yamamoto/study/electromagnetics/coodinate_transform/html/coodinate_trans.html
を参考にせよ。
ホームページ:
Yamamoto's laboratory著者:
山本昌志
yamamoto masashi
平成17年5月14日