この場合は、2次元で考えるのはやっかいなので3次元で考えることにする。3次元の閉じ
た空間内での熱の流れを考える。単位面積、単位時間あたりの熱の流れ
[
]はベクトル場である。これを
で表すことにする。ここ
では、この空間から出入りする熱量の総和を考える。この閉じた空間の表面の微少面積
から出ていく熱量
は、
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(14) |
である。ここで、
は図
3この微少面積の法線方向の単位ベクト
ルである。この熱の流れのベクトルと面積の内積を熱流束(一般にはフラックス)と言う。
この式から、空間から出入りするトータルの熱量は、
となる。
次に、先ほどの空間を図4のようにとの2つの部分に分割した
場合を考える。この場合、閉じた空間からの熱量の出入りの総和は、それぞれの部分の熱
流速を足しあわせれば良い。すなわち
である。先ほどの式(
15)と同じになる理由は、以下のことから分かる。
- と、あるいはの共通の表面の部分は変わらない。
- と積分が異なるのは、図4のの部分である。この
部分では、とでの熱の流れのベクトルは同一である。しかし、積分を
する場合の法線の方向が反対で、
の関係がある。すると、
この部分での積分は、とを足しあわせるとキャンセルされる。
先ほどは2つに分割したが、この分割方法は任意で2つ以上に分割しても良いことは明らか
である。図5のようにに個に分割した場合は、
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(17) |
である。これを非常に大きな数で分割して、
の極限を考える。すると、
である。ここで、
とする。これが発散と呼ばれる量で、ベクトル場の微分を表すスカラー量である。この発
散を用いると、トータルの熱量は、
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(20) |
となる。式(
15)と比べると、
である。これをガウスの発散定理といい、熱にこだわらずどんなベクトル場についても成
り立つ。この定理は、「微分の体積積分は表面での面積分に置き換えることができる」と
言っている。
ここで考えた熱流速の場合、発散
は単位体積あたりの熱の出入りを表している。
これは、その微少体積で熱が発生量を表している。そのため、発散とは言わずにこの微分
を「湧き出し」と呼ぶ人もいる。
発散は式(
19)で定義されるベクトル場の微分である。実際の微分につい
て、カーテシアン座標系で考える。ベクトル場
があったとする。それは座標の関
数で、
と書けるであろう。図
に示したような微
少な空間でのそのフラックス
を考える。まずは、
平面である。これは、
と
の面のフラックスを足しあわせれば良い。
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,
なので |
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の周りで、テイラー展開すると |
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(22) |
,
平面も同様にして、
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(23) |
となる。
これから発散は、
となる。
これは、先週示した式と同じである。また、円柱座標系や極座標系については、私のweb
ページを見よ。
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Yamamoto's laboratory著者:
山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年6月24日