この場合は、2次元で考えるのはやっかいなので3次元で考えることにする。3次元の閉じ
た空間内での熱の流れを考える。単位面積、単位時間あたりの熱の流れ
[
![$ \mathrm{Jule/m^2sec}$](img54.png)
]はベクトル場である。これを
![$ \boldsymbol{A}$](img55.png)
で表すことにする。ここ
では、この空間から出入りする熱量の総和を考える。この閉じた空間の表面の微少面積
![$ \mathrm{d}
S$](img56.png)
から出ていく熱量
![$ \mathrm{d}Q$](img57.png)
は、
![$\displaystyle \mathrm{d}Q=\boldsymbol{A}\cdot\boldsymbol{n}\mathrm{d}S$](img58.png) |
(14) |
である。ここで、
![$ \boldsymbol{n}$](img59.png)
は図
3この微少面積の法線方向の単位ベクト
ルである。この熱の流れのベクトルと面積の内積を熱流束(一般にはフラックス)と言う。
この式から、空間から出入りするトータルの熱量は、
となる。
次に、先ほどの空間を図4のように
と
の2つの部分に分割した
場合を考える。この場合、閉じた空間からの熱量の出入りの総和は、それぞれの部分の熱
流速を足しあわせれば良い。すなわち
である。先ほどの式(
15)と同じになる理由は、以下のことから分かる。
と、
あるいは
の共通の表面の部分は変わらない。
と積分が異なるのは、図4の
の部分である。この
部分では、
と
での熱の流れのベクトルは同一である。しかし、積分を
する場合の法線の方向が反対で、
の関係がある。すると、
この部分での積分は、
と
を足しあわせるとキャンセルされる。
先ほどは2つに分割したが、この分割方法は任意で2つ以上に分割しても良いことは明らか
である。図5のようにに
個に分割した場合は、
![$\displaystyle Q=\sum_i \int_{\Delta V_i}\boldsymbol{A}\cdot\boldsymbol{n}\mathrm{d}S$](img76.png) |
(17) |
である。これを非常に大きな数で分割して、
![$ V_i\to 0$](img77.png)
の極限を考える。すると、
である。ここで、
とする。これが発散と呼ばれる量で、ベクトル場の微分を表すスカラー量である。この発
散を用いると、トータルの熱量は、
![$\displaystyle Q=\int_V \div{\boldsymbol{A}}dV$](img83.png) |
(20) |
となる。式(
15)と比べると、
である。これをガウスの発散定理といい、熱にこだわらずどんなベクトル場についても成
り立つ。この定理は、「微分の体積積分は表面での面積分に置き換えることができる」と
言っている。
ここで考えた熱流速の場合、発散
は単位体積あたりの熱の出入りを表している。
これは、その微少体積で熱が発生量を表している。そのため、発散とは言わずにこの微分
を「湧き出し」と呼ぶ人もいる。
発散は式(
19)で定義されるベクトル場の微分である。実際の微分につい
て、カーテシアン座標系で考える。ベクトル場
![$ \boldsymbol{A}$](img88.png)
があったとする。それは座標の関
数で、
![$ \boldsymbol{A}(x,\,y,\,z)$](img89.png)
と書けるであろう。図
![[*]](crossref.png)
に示したような微
少な空間でのそのフラックス
![$ F$](img90.png)
を考える。まずは、
![$ \mathrm{xy}$](img91.png)
平面である。これは、
![$ z$](img92.png)
と
![$ z+\Delta z$](img93.png)
の面のフラックスを足しあわせれば良い。
![$\displaystyle F_z$](img94.png) |
![$\displaystyle = F\left(x+\frac{\Delta x}{2},\,y+\frac{\Delta y}{2},\,z+\Delta z\right)+ \left(x+\frac{\Delta x}{2},\,y+\frac{\Delta y}{2},\,z\right)$](img95.png) |
|
|
![$\displaystyle = \boldsymbol{A}\left(x+\frac{\Delta x}{2},\,y+\frac{\Delta y}{2}...
...a x}{2},\,y+\frac{\Delta y}{2},\,z\right)\cdot \boldsymbol{n}_0\Delta x\Delta y$](img96.png) |
|
|
,
なので |
|
|
![$\displaystyle = A_z\left(x+\frac{\Delta x}{2},\,y+\frac{\Delta y}{2},\,z+\Delta...
..._z\left(x+\frac{\Delta x}{2},\,y+\frac{\Delta y}{2},\,z\right) \Delta x\Delta y$](img99.png) |
|
|
![$\displaystyle =\left[ A_z\left(x+\frac{\Delta x}{2},\,y+\frac{\Delta y}{2},\,z+...
...x+\frac{\Delta x}{2},\,y+\frac{\Delta y}{2},\,z\right) \right]\Delta x \Delta y$](img100.png) |
|
|
の周りで、テイラー展開すると |
|
|
![$\displaystyle =\left[\left( A_z+ \if 11 \frac{\partial A_z}{\partial x} \else \...
...{1} A_z}{\partial y^{1}}\fi \frac{\Delta y}{2} \right) \right]\Delta x \Delta y$](img102.png) |
|
|
![$\displaystyle = \if 11 \frac{\partial A_z}{\partial z} \else \frac{\partial^{1} A_z}{\partial z^{1}}\fi \Delta x \Delta y \Delta z$](img103.png) |
(22) |
![$ \mathrm{yz}$](img104.png)
,
![$ \mathrm{zx}$](img105.png)
平面も同様にして、
|
![$\displaystyle F_x= \if 11 \frac{\partial A_x}{\partial x} \else \frac{\partial^{1} A_x}{\partial x^{1}}\fi \Delta x \Delta y \Delta z$](img106.png) |
|
![$\displaystyle F_y= \if 11 \frac{\partial A_y}{\partial y} \else \frac{\partial^{1} A_y}{\partial y^{1}}\fi \Delta x \Delta y \Delta z$](img107.png) |
|
(23) |
となる。
これから発散は、
となる。
これは、先週示した式と同じである。また、円柱座標系や極座標系については、私のweb
ページを見よ。
ホームページ:
Yamamoto's laboratory著者:
山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年6月24日