オームの法則(ohm law)もさんざん学習してきたので、分かっていると思う。ここでは、それを場の
式に書き改める。
まず、図5のような棒である。この両端に定常電流
を流すと、それ
に比例した電圧
が発生する。これをオームの法則と言い、
![$\displaystyle V=IR$](img59.png) |
(12) |
と書き表せる。この比例定数
![$ R$](img60.png)
を電気抵抗(あるいは抵抗)と呼ばれる量で、かなり広い
範囲で電圧や電流に依存しないで一定の値である。しかし、物質やその状態、形には依存
する。抵抗の単位は[
![$ \Omega$](img61.png)
]と書き、オームと読む。SI組み立て単位だと、[
![$ m^2\cdot
kg S^{-3}A^{-2}$](img62.png)
]である。
実験によると、この抵抗は導体の長さ
に比例して、断面積
に反比例する。すなわち、
![$\displaystyle R=\rho\frac{L}{S}$](img65.png) |
(13) |
である。この比例定数
![$ \rho$](img66.png)
を抵抗率と言う。この抵抗率は導体の形に依存しないで、導
体固有の値である。すなわち、導体の物性値である。また、抵抗が断面積に比例すると言
うことは、電流は導体の内部全体にわたって流れていることを表している。
それでは、次にいつものようにこれを場の量で表すことにする。まずは、オームの法則を
![$\displaystyle V=I\rho\frac{L}{S}$](img67.png) |
(14) |
と書き改める。これはいつでも成立するので、非常に小さい領域で考えることにする。す
ると、
![$\displaystyle \Delta V=\Delta I\rho\frac{\Delta L}{\Delta S}$](img68.png) |
(15) |
が成り立つ。これを変形して、
![$\displaystyle \frac{\Delta V}{\Delta L}=\rho\frac{\Delta I}{\Delta S}$](img69.png) |
(16) |
である。左辺は電場、右辺の
![$ \Delta I/\Delta S$](img70.png)
は電流密度を表す。従って、
![$\displaystyle \boldsymbol{E}=\rho \boldsymbol{j}$](img71.png) |
(17) |
である。通常、
![$ \rho$](img72.png)
の逆数である電気伝導率
![$ \sigma$](img73.png)
をつかって、この式は
![$\displaystyle \boldsymbol{j}=\sigma \boldsymbol{E}$](img74.png) |
(18) |
と書かれる。これが、場の量で書かれたオームの法則である。
ここでは、オームの法則が成り立つためには、導体中で電子の運動について述べる。この
辺の話は、文献 [
1]を参考にしている。
導体中では、電子の移動が電流を担う。固定された金属原子のイオンの間を電子が通りす
ぎて、それが電流となる。電流は電荷の移動であったことを思い出せ。金属に外部から電
場をかけない場合、その電子は熱運動のため、勝手な方向に運動をして、トータルな電子
の移動は生じない(図6)。すなわち電流が生じない。ここで、
外部から電場をかけるとその方向とは逆に電子は移動し始める(図
7)。これが電流である。電流が流れ始めても、その速度は圧倒
的に熱運動に起因するものの方が大きい。
図 6:
電子は熱運動により、勝手な方向に動いている。
|
|
図 7:
熱運動と電場から受ける力による運動が合成される。
|
|
抵抗がどのようにして生じるかは、電子の運動を考えなくてはならない。電子はイオン
と衝突を繰り返して、移動する。1回の衝突で、電子は曲げられて運動量が変化する。こ
れを何回か繰り返すと初期状態によらず、全ての方向の同じ確率で運動量を持つようにな
る。ここでは、話を簡単にするために、1回の衝突で最初の運動量の記憶を忘れて全ての
方向に同じ確率で運動量を持つとしよう(図8)。
それでは、ある時刻
での運動量を考えよう。そのために、各電子の最後の衝突から、
この時刻
までの時間
と言うものを導入する。すると、ある時刻の運動量は、
![$\displaystyle <m\boldsymbol{v}>=\frac{1}{N}\sum_j(m\boldsymbol{v}_j+e\boldsymbol{E}t_j)$](img82.png) |
(19) |
となる。ここで、
![$ <m\boldsymbol{v}>$](img83.png)
は平均の運動量、
![$ m\boldsymbol{v}_j$](img84.png)
は衝突直後の
![$ j$](img85.png)
番目の電
子の運動量を表す。右辺最後の項は、運動量の変化は力積(力
![$ \times$](img86.png)
時間)に等しいと言
うことから出てくる。
ここで、左辺第1項の平均はゼロとなる。これは、衝突するとそれ以前の情報は失われて
運動量は全ての方向に等確率で分配されると言う仮定による。従って、運動量はいつも同
じで、
![$\displaystyle m<\boldsymbol{v}>=e\boldsymbol{E}\frac{1}{N}\sum_j t_j$](img87.png) |
(20) |
となる。
![$ t_j$](img88.png)
の平均は、平均衝突間隔
![$ \tau$](img89.png)
に等しい。したがって、電子の平均速度は、
![$\displaystyle <\boldsymbol{v}>=\frac{e\tau}{m}\boldsymbol{E}$](img90.png) |
(21) |
となる。
電子の平均速度が求まったので、電流を求めるのは簡単である。電子の平均密度を
と
すると、電流密度
である。この式から、抵抗率は
![$\displaystyle \rho=\frac{m}{ne^2\tau}$](img96.png) |
(23) |
となる。
電気回路と水の流れを図
9に示す。
ホームページ:
Yamamoto's laboratory著者:
山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年6月24日