2 方眼紙について

諸君が使う方眼紙は,普通の方眼紙(名前??),型対数方眼紙,両対数方眼紙が主である. これらをデータに応じて使い分ける必要がある.まず,これらの方眼紙の特徴を述べる.

2.1 普通の方眼紙

これは,もっともおなじみの,x軸とy軸ともリニアーになっているものである.説明する までもなく,よく知っているだろう.これはグラフ上の基準点からの距離($ X, Y$)に,デー タ$ (x,y)$

  $\displaystyle X=C_{0x}+C_{1x}x$   $\displaystyle Y=C_{0y}+C_{2y}y$   (1)

のようにプロットする.$ C_{1x}$$ C_{1y}$はグラフのスケールを決める定数,$ C_{0x}$$ C_{0y}$はオフセットである.難しいことを言わなくても,x軸とy軸の交点(基準点)を $ (C_{0x},C_{0y})$として,等間隔に目盛りを付けていると言うだけのことである.

したがって,x軸とy軸ともリニアーになっている方眼紙では,$ y=ax+b$の一次関数が

$\displaystyle \frac{\mathrm{d}Y}{\mathrm{d}X}$ $\displaystyle =\frac{C_{1y}}{C_{1x}}\frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}$    
  $\displaystyle =\frac{C_{1y}}{C_{1x}}a$ (2)

のように,グラフ用紙で直線になる.なぜならば,$ x$に依存しないで,傾きが一定となっ ているからである.このグラフの傾き $ \mathrm{d}Y/\mathrm{d}X$と,スケールの比$ C_2/C_1$から,デー タの1次関数の係数$ a$が分かるのである.

2.2 片対数方眼紙

この方眼紙の軸は,ちょっと変わっていて,片方はリニアーで,もう一方は対数軸となっている.横軸,縦軸のいずれも対数軸にすることができる.ここでは話を簡単にするために,縦軸を対 数軸とする.そうすると,横軸はリニアー軸になる.先ほどと同様にグラフ上の基準点か らの距離を$ (X,Y)$とする.この場合は,

  $\displaystyle X=C_{0x}+C_{1x}x$   $\displaystyle Y=C_{0y}+C_{1y}\log_{10}y$   (3)

となる.ここで,$ C_{0x}$$ C_{0y}$はグラフの原点を決めるオフセット値である.$ C_{1x}$$ C_{1y}$はグラフのスケールを決める定数である.

このようなグラフで直線となる関数を考えることにする.そのために,値$ (x,y)$がちょっとだけ変化した場合,グラフ上の点の動きを調べてみよう.それは,

  $\displaystyle \mathrm{d}X=C_{1x}\mathrm{d}x$   $\displaystyle Y=\frac{C_{1y}}{\log_e 10}\frac{\mathrm{d}y}{y}$   (4)

となる.これから,グラフ上で,傾き$ \alpha$を持つ直線は,

$\displaystyle \frac{\mathrm{d}Y}{\mathrm{d}X}=\frac{C_{1y}}{C_{1x}}\frac{1}{y\log_e 10}\frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}=\alpha$ (5)

となる.ここで,縦軸と横軸のスケールの比 $ C_{1y}/C_{1x}$は1にしたグラフが多い2.そこで,この比を1として,話を進める.グラフ上で直線になる関数は,式13の微分方程式の解である.この微分方程式は

$\displaystyle \frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}=(\alpha\log_e 10)y$ (6)

と見覚えがあるものに書き換えることができる.この方程式の解は,

$\displaystyle y$ $\displaystyle =ke^{(\alpha\log_e 10)x}$ (7)
  $\displaystyle =k\times 10^{\alpha x}$ (8)

となる.ここで,$ k$は積分定数である.この結果から,方対数グラフ上では指数関数が直線で表されるのである.いうまでもないが,

$\displaystyle k\times 10^{\alpha x}=k\times\exp\left(\frac{\alpha}{\log_{10}e}x\right)$ (9)

となるので,底が10であろうが,ネピア$ e$であろうが,その他なんでも指数関数が直線で表せる.

ようするに方対数グラフの傾き$ \alpha$が,指数関数 $ 10^{\alpha x}$となるのである.

2.3 両対数方眼紙

両対数グラフは,片対数方眼紙と同じように考えることができ,データ$ (x,y)$は,グラフ 上の$ (X,Y)$

  $\displaystyle X=C_{0x}+C_{1x}\log_{10}x$   $\displaystyle Y=C_{0y}+C_{1y}\log_{10}y$   (10)

に変換される.

先ほどと同様にグラフ上で直線となる関数を考えることにする.値$ (x,y)$がちょっとだけ変化した場合,グラフ上の点の動きは,

  $\displaystyle \mathrm{d}X=\frac{C_{1x}}{\log_e 10}\frac{\mathrm{d}x}{x}$   $\displaystyle \mathrm{d}Y=\frac{C_{1y}}{\log_e 10}\frac{\mathrm{d}y}{y}$   (11)

である.これから,グラフ上で,傾き$ \alpha$を持つ直線は,

$\displaystyle \frac{\mathrm{d}Y}{\mathrm{d}X}= \frac{C_{1y}}{C_{1x}}\frac{x}{y}\frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}$ (12)

となる.両対数グラフでは,縦軸と横軸のスケールの比 $ C_{1y}/C_{1x}$は1にする.

グラフ上で,傾き$ \alpha$を持つ直線は,

$\displaystyle \frac{\mathrm{d}Y}{\mathrm{d}X}= \frac{x}{y}\frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}=\alpha$ (13)

となる.この微分方程式の解は,

$\displaystyle y=kx^{\alpha}$ (14)

である.従って,両対数グラフにプロットして,それが直線であれば,$ x^\alpha$の関数系であることが分かる.そして,グラフの傾きにより,$ \alpha$を求めることあできる.
ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年6月24日


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