これまでの話で,ベクトルは矢で表されることが分かった.矢で表すと直感的に分かり易
いが,計算には不向きである.そこで,別の表現を考えることにする.図
8のようにその矢の始まりをカーテシアン
2座標系の原点におい
て,先端の座標で表すことができる.そうすると,位置ベクトル
![$ \boldsymbol{r}$](img52.png)
の場合,
![$\displaystyle \boldsymbol{r}_1=(x_1,y_1,z_1)$](img70.png) |
(21) |
のような表現が可能であろう.この,
![$ x_1,\,y_2,\,z_3$](img71.png)
をベクトル
![$ \boldsymbol{r}$](img52.png)
の成分,あ
るいは射影と言う.我々は3次元(相対論では4次元)の世界に住んでいるので,物理学で取
り扱うベクトル量は3つの成分からなる.
図 8:
カーテシアン座標系をつかったベクトルの表現
|
このようにすると,ベクトルの表現は全く便利になる.今までの矢を用いた方法だと,ベ
クトル量の計算が大変やっかいである.計算するとなると数値で表すことになるが,長さ
と角度みたいな量で表すことになる.2つのベクトル量をそれぞれ長さと角度の数値
![$\displaystyle \boldsymbol{A}=(r_A, \theta_A)$](img73.png) |
(22) |
![$\displaystyle \boldsymbol{B}=(r_B, \theta_B)$](img74.png) |
(23) |
で表現したとする
3.これを加算することを考えると,かなり面倒
である.
一方,座長を用いた表現だと
のように簡単に演算ができる.成分同士を加算すれば良いのである.これは,まったくもっ
て便利である!!!!.
ここで,先ほどのカーテシアン座標の各軸に沿った単位ベクトルを導入すると,便利な場
合がある.図9のようにすると,
のように表現できる.ここで,
![$ \boldsymbol{i}$](img85.png)
,
![$ \boldsymbol{j}$](img86.png)
,
![$ \boldsymbol{k}$](img41.png)
が各軸に沿った単位ベクト
ルである.
成分を使った表現では,ベクトルの大きさも簡単に計算でき,ピタゴラスの定理より
![$\displaystyle \vert\boldsymbol{A}\vert^2=A_x^2+A_y^2+A_z^2$](img87.png) |
(28) |
となる.
後に,方向余弦と言う話も出てくるので,少し説明をしておく.図
8に示したように成分を使って,ベクトルは表現可能である.
ベクトルの大きさを
![$ r$](img89.png)
として,各軸との角度をそれぞれ図
10のよ
うにすると,
の関係がある.ここで,
![$ r$](img89.png)
はベクトル
![$ \boldsymbol{r}$](img52.png)
の大きさを表す.これらの
![$ r\cos\alpha,\,r\cos\beta,\,r\cos\gamma$](img93.png)
を方向余弦と言う.
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Yamamoto's laboratory著者:
山本昌志
Yamamoto Masashi
平成18年5月26日