完成度の高い良い製品を作るために,最も重要なことは,前より進歩することである.毎回,少しずつでも改良を加えれば,徐々に完成度が上がる.工学の分野では,常に前進することにより技術を蓄積する.これはあたりまえのことのように思えるが,歴史を見ると,逆のことが生じることもある.文明が後退し,技術が失われるのである.エジプトのピラミッドやマヤ文明,その他いたるところで技術の衰退が見られる.
改良して少しでも良いものを造ることが技術者の最大の使命と考える.以前の製品を分析し,改良の余地のある部分を探し,再設計を行うことになる.この一連の作業では,技術情報の伝達が重要な役割を果たす.過去の設計時のデータ,再設計の考え方をまとめたもの,試験データなどの情報をもとに改良を進めていくことになる.このような技術情報をまとめることは,技術者の最も重要な任務の一つである.もし,技術情報をまとめないで,人間の記憶に留めるならば,技術はほとんど進歩しないであろう.人間は忘れる動物である.
技術者は,レポートと言う形で技術情報をまとめ,後々まで活用する.このようなことから,正確に記述することがレポートでは最も重要となる.誤った情報やうその情報は,害を及ぼすことになる.加えて,記録として残すものであるから,全てをきちんと書く必要がある.記述しない項目があれば,それは記録として失われ,技術の進歩に寄与しない.
技術者のレポートは,個人のメモとは異なり,他人が読むものである.一般に,技術者はチームで仕事を進め,情報伝達にレポートが使われることが多いからである.そのため,レポートは他人が読むことを前提にて書き,分かりやすく記述しなくてはならない.
言うまでもないが,会議等での議論も極めて重要な情報伝達である.この場合でも,技術的な会議の内容は書類に残され,いつでも使える形にする.いつでも,技術者は文字にした記録を重要視するのである.人間の記憶は,いいかげんで,すぐに忘れてしまい,頼りにならない.
このようなことから,技術者はレポートを重要視する.レポートの提出をもって,仕事が完結したと考えている.将来,諸君が技術者になったならば,大量のレポートを書くことになるだろう.実験実習のレポートはそのための訓練である.
まとめ(レポートの役割)
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