式(
5)は,無限に長い電流が作る磁場である.これが
分かると,微小な長さ
が作る磁場の式が欲しくなる.磁場は全ての電流を積分
して得られる--となると理論を考えるのに大変都合が良い.図
6のような状況を考える.図中の点
の作る磁場は,
式
5から分かっている.ここの磁場は,
が
作る磁場
を足しあわせたもの--積分--になるはずである.したがって,
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(6) |
となる
があるはずである.このように表すと,
が作る磁場
は
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(7) |
となる.ここまでくれば,
の関数形を求めることが重要な問題となる.
ビオとサバールはここまで考えて歴史に名前を残した.だれでもここまでたどり着ければ,
関数形を見つけることはできるであろう.科学史に名前を残すためには,時代の最先端に
たどり着くことが如何に大事か--がわかる.
がベクトルなので,
もベクトルになる必要がある.幸いな
ことに,磁場は電流
とも位置
にも垂直である.そこで,微小磁場
は,ベクトル積
に関係がある--と類推できる.また,遠
距離が離れると,磁場が小さくなることも理解できるであろう.問題は距離の何乗で
小さくなるか?--である.ここでは,距離の2乗としてみよう.間違っていれば,1乗に
したり,3乗にしてみて,正しい関数形を探せばよい.科学史に名前を残すことを考える
と,これくらいの努力をしてもよいだろう.これまでの直感から,
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(8) |
とかける.比例定数の
は後から調整すればよい.
この式を地道に積分を行う.計算する積分は
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(9) |
である.ベクトルの積分となっており,通常はやっかいである.しかし,幸いなことに,
と
はいつも同じ平面内にあり,
の位置が変わってもベクトル積の向
きは変化しない.したがって,スカラーの積分を行った後,方向を考えればよい.
この結果と式(
5)を比べる.先の述べたように方向
は合っている.また,係数
を
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(11) |
とすれば,大きさも合う.したがって,微小領域
がつくる微小磁場
は
と考えても良い.普通,これをビオ-サバールの法則と言う.また,
を
として,
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(13) |
と書かれる場合もある.
式(
12)は,
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(14) |
と書き表すことができる.ここで,
は電流密度である.
をつかっている.
これから,磁場を観測する位置ベクトルを
とした場合の磁場は,
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(15) |
となる.これが磁場を表す方程式の全てである.これは,
と書き表すことができる.なぜならば,
を定ベクトルとした場合,
が成り立つからである.
式(16)は,
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(18) |
と書くことができる.ただし,
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(19) |
である.この
をベクトルポテンシャルと言う.ちょうど電場のときのスカラーポ
テンシャル
に対応している.
この式から磁場を表す微分方程式を求める.ベクトル場を表す微分方程式は,発散と回転
である.先の磁場を表す方程式に発散と回転の演算を行えばよい.この辺の話は,文
献 [
1]を参考にした.
式(16)から,直ちに,
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(20) |
が求められる.なぜならば,回転の発散は恒等的にゼロとなるからである.
つぎに回転をもとめる.この場合,任意のベクトル場
に関しての恒等式
を使う.式式
(16)の両辺に回転の演算を施すと,
ここで,
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(22) |
を使う.これらの式については,
第5回の講義ノートを見よ.これらを使うと,
が得られる.
この式の右辺第一項を計算するために,任意のベクトル場と任意のスカラー場の積
の発散を考える.それは,
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(24) |
となる.これを少しばかり変形すると
が得られる.式(
23)のように微分が含まれる積分を行うときの定石であ
る.部分積分である.
式(25)を式(23)に適用すると,
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(26) |
となる.このうち,左辺の第一項はゼロとなる.なぜならば,電荷保存則より静電場ではいつでも
が成り立つからである.そして,右辺第二項は,ガウスの発散定理を使
うと,
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(27) |
が得られる.右辺第一項の積分は,全空間,すなわち宇宙全体にわたっての面積分である.
宇宙の端には電流が無い,あるいは電流密度が
よりも早く小さくなると右辺第一項
はゼロになる.自然は,これら二つのうちどちらかを満たしている.なぜならば,ここで
観測している磁場は宇宙の果てからの影響を受けていない.したがって,静磁場の回転は,
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(28) |
となる.電流密度は,磁場の回転(の密度)を作るのである.
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Yamamoto's laboratory著者:
山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年7月25日