5 力の伝わり方

5.1 遠隔作用

2の電荷1が電荷2に及ぼす力が,媒介が無くても伝 わると考えるのが遠隔作用である.この解釈は受け入れがたく,通常は使われない.ニュー トンが万有引力の法則を発表したとき,それは遠隔作用で,なかなか受け入れがたかった ようである.何もない真空を通過して,力が伝わることに人々は難色を示したのである. 日常,見たり感じたりする力は,何かの媒質が介在するものである.液体や固体,気体を 通して力は感じるものである.でも,当時は磁石による力は分かっていて,それは遠隔作 用に思える.人々はどのように考えていたのか興味がある8

気とか超能力とか言う人は,遠隔作用を支持しているように思えるが,いかがなものか.

5.2 近接作用

2の電荷$ Q_1$が直接$ Q_2$に作用するのではない. まず$ Q_1$は,その近くの空間の物理的な状態を変化させ,それ変化が次々と伝わり, $ Q_2$に達した時点で,それに影響を及ぼす.$ Q_1$は空間(場)に作用を及ぼし,$ Q_2$は 空間から作用を及ぼされるのである.これは,明らかに遠隔作用ではなく,近接作用と呼 ばれる.これが場の考え方である.

観測される結果が遠隔作用と同じであれば,ただの言い換えに過ぎない.遠隔作用と近接 作用の決定的に異なることがある.それは,作用が伝わる時間である.遠隔作用では瞬時 に影響が伝わるが,近接作用では有限の時間が必要である.観測の結果,影響が伝わる速 度は,光速度と同じである.

電荷を急激に変化させて,その影響が有限の時間で伝わることが分かっている.電波など がその例で,人類はそれを利用しているのである.同じように質点を急激に変化させると その波(重力波)が観測されると理論的に考えられている.しかし,前にも述べたとおり, 重力は非常に小さいのでその観測は大変難しく,まだ重力波のはっきりした証拠は見つかっ ていない.



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著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年7月12日


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