この力と重力の大きさを比べてみよう.2つの電子間に働く力の比は
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全ての物質は正の陽子と負の電子との混合体で,この強い力で引き合い反発しあっ ている.しかしバランスは非常に完全に保たれているので,あなたが他の人の近くに立っ ても力を感じることは全くない.ほんのちょっとでもバランスの狂いがあれば,すぐに 分かるはずである.人体の中の電子が陽子より1パーセント多いとすると,あ なたがある人から腕の長さのところに立つとき,信じられない位強い力で反発するはず である.どの位の強さだろう.エンパイア・ステート・ビルを持ち上げるくらいだろう か.エベレストを持ち上げるくらいだろうか.それどころではない.反発力は地球全体 の重さを持ち上げるくらい強い.この非常に強い力により,物質全体は中性になる.そうでないと,物質はバラバラになってし まう.また,物質を電子や原子のオーダーで見ると,電荷の偏りがあり,そこではこのクー ロン力が働く.この強い力により,原子が集合して,固い物質が形作られるのである.
そうなると,電子が原子核に落ち込んでしまうのではないか--という疑問が湧く.実際 にはそのようなことは起きていない.この現象は不確定性原理から説明がつく.仮りに, 電子が原子核に衝突するくらい狭いところに近づいたとする.そうなると,位置が正確に 分かるので,運動量の不確定性が増す.したがって,電子はとても大きな運動量を持つこ とになる.すると,遠心力が大きくなり,原子核から離れようとする.近づこうとすると 大きな運動量を持つことになり,遠心力が働き近づけなくなるのである.
大きなクーロン力により,原子核がバラバラにならないのか--という疑問も湧く.例え
ばウラン235の原子核は,92個の陽子と143個の中性子からできている.その半径は,大体
である.この狭い中に,正の電荷をもつ92個の陽子が,クー
ロン力に抗して押し込められているのである.クーロン力によりバラバラにならない理由
は,強い力が作用しているためである.この強い力により,原子核ができあがっている.
最初に述べたように,強い力の範囲は
程度である.したがって,
ウランより大きな原子核を作ることは難しくなる.そのため,ウランより大きな原子番号
をもつ元素は自然では,存在しない.
ほとんどの元素の原子核では,クーロン力よりも強い力の方が圧倒的に大きい.そのため, 原子核は極めて安定となる.一方,ウラン235の場合,両者の力の大きさの差は小さく, 強い力の方がちょっとだけ大きい.そのため,他の物質に比べるとウラン235の原子核は 不安定となる.ちょっと刺激を与えると,原子核はバラバラになってしまう.原子核に中 性子をぶつけることにより,刺激を与えることができる.ウラン235原子核に中性子をぶ つけるのが原子爆弾であり,原子力発電である.バラバラになった原子核は,クーロン力 により,とても高速に加速される.そのため,大きなエネルギー持ち,最終的には熱に変 わるのである.原子力といえども,そのエネルギーの源は電磁気力である.
言葉で述べると複雑な現象が,ベクトルを用いると式 (6)のように簡単に書ける.ベクトル解析は,まことに 便利である.
クーロンの法則について,次のことについて考察してみよう.
クーロンの法則も,この作用・反作用の法則が成り立っていることを示す.電荷量
の物体がが電荷量
の物体に及ぼす力
は,式
(6)のとおりである.逆に,電荷量
の物体がが電
荷量
の物体に及ぼす力
はどうなっているだろうか?.
の物体につ
いてもクーロンの法則が成り立つはずであるから,この力を求めるためには式
(6)の添え字の1と2を入れ替えればよい.
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キャベンディッシュの実験は非常に巧妙で,クーロンのものよりも精度はかなり高かった ようである.その実験は,今で言うノーベル賞級の発見ではあるが,彼はそれを公表しな かった.その発見の価値も知っていたにも関わらずである.ということで,物理学者中の 変人ナンバーワンとしても良いだろう.
その後,キャベンディッシュは,ねじれ秤を使って,1789年に万有引力定数を測定してい る7.ここでは,クーロンのねじれ秤を使っている ことが,面白い.