5 使い方

5.1 高級電卓

まずは,円周率$ \pi$の値を1000桁計算してみよう.入力ウインドウに

$\displaystyle N[\pi,1000]$    

と入れて,[Shift]+[Enter]と計算を実行させてみよう.すると,1000桁の円 周率が打ち出されたはずである.ここで使ったコマンドはNで,N[計算式,桁数] と使う.

次に,簡単な分数の計算

$\displaystyle \frac{987654321}{123456789}$    

を行う.計算の結果は分数で,正確な値が得られる.これは非常に驚くべきこ とで,CやFORTRANでは不可能である.正確な値ではなく,近似値が欲しい場合 は,

$\displaystyle \texttt{N}\left[\frac{987654321}{123456789},1000\right]$    

とすればよい.これで,1000桁の近似値が得られる.

もう少し便利な電卓としての使い方は,

\begin{equation*}\begin{aligned}&\theta_1=\frac{\pi}{6};\ &\theta_2=\frac{\pi}{...
...ta_2] -\texttt{Sin}[\theta_2]\texttt{Cos}[\theta_1] \end{aligned}\end{equation*}

である.1行目と2行目のセミコロン`;`は,C言語の行の区切りではない.その行の計算結 果を出力しないという意味である.計算結果である3行目は出力させたいため,セミコロ ンが無い.3行目を

$\displaystyle \texttt{Simplify}\left[\texttt{Sin}[\theta_1]\texttt{Cos}[\theta_2] -\texttt{Sin}[\theta_2]\texttt{Cos}[\theta_1]\right]$    

と書き換えれば,整理した結果が得られる.言うまでも無いが,3行目を

$\displaystyle N\left[\texttt{Sin}[\theta_1]\texttt{Cos}[\theta_2] -\texttt{Sin}[\theta_2]\texttt{Cos}[\theta_1]\right]$    

と書き換えれば,近似値を求めることができる.

複素数の計算も問題なくできる.複素数が関係する最も美しい式

$\displaystyle e^{i\pi}$    

を計算してみよう.ネピア数$ e$と虚数単位$ i$は,パレットから選択する必要がある.計 算の結果は,-1になるはずである.

線形代数の計算も簡単にできる.例えば,

\begin{equation*}\begin{aligned}&A=\{a_x,a_y,a_z\};\ &B=\{b_x,b_y,b_z\};\ &A.B\ &\texttt{Cross}[A,B] \end{aligned}\end{equation*}

でベクトルAとBの内積と外積が計算できる.固有値や固有ベクトル,行列式の計算もでき る.行列は,メニューの[入力] $ \;\rightarrow\;$[表・行列・パレットの作成]を用いて 入力する.次の

\begin{equation*}\begin{aligned}&U= \begin{pmatrix}1 & 2 & 3 \ 3 & 1 & 2 \ 2 &...
...}[U]\ &\texttt{Eigenvectors}[U]\ &\texttt{Det}[U] \end{aligned}\end{equation*}

のようにすれば行列の計算ができる.

5.2 微分と積分

5.2.1 微分

微分は,Dというコマンドを用いても,パレットから$ \partial$を使っても可能である. 次の例のように,

\begin{equation*}\begin{aligned}&\texttt{D}[\texttt{Sin}[x],x]\ &\partial_x\texttt{Sin}[x] \end{aligned}\end{equation*}

できる.高次の微分は,

$\displaystyle \texttt{D}[x^n,\{x,4\}]$    

のようにする. $ \frac{\partial^3 \sin(x^2y)}{\partial x \partial^2y}$の ような偏微分は

$\displaystyle \partial_{x,y,y}\texttt{Sin}[x^2\; y]$    

とすればよい.また,

$\displaystyle \partial_xf[g[x]]$    

のようなこともできる.

5.2.2 積分

不定積分は,コマンドIntegrate,あるいはパレットから$ \int$で可能である.たとえば,

\begin{equation*}\begin{aligned}&\texttt{Integrate}[x^n,x]\ &\int x^ndx \end{aligned}\end{equation*}

のようである.次のような複雑な積分

$\displaystyle \int \sqrt{a+b\;\texttt{Cos}[c\;x]}dx$    

も可能である.結果は楕円関数になっている.積分記号も根号もパレットから選択する.

定積分は,

\begin{equation*}\begin{aligned}&\texttt{Integrate}[\frac{1}{1+x^2},\{x,0,1\}]\ &\int_0^1\frac{1}{1+x^2}dx \end{aligned}\end{equation*}

のようにしてできる.

数値積分は,

$\displaystyle \texttt{NIntegrate}[(\texttt{Sin[x])}^2,\{\texttt{x},0,2\pi\}]$    

のように,NIntegrateコマンドを使う.

通常のプログラミング言語で計算できるのは,この数値積分だけである.Mathematicaで は不定積分や定積分の計算が可能である.これは,驚くべきことである.

5.3 グラフィックス

グラフィックの機能は豊富で,通常必要なグラフはほとんどMathematicaで書くことがで きる.C言語などの計算結果をMathematicaで出力することも行われており,グラフ作成が 非常に容易である.

5.3.1 2次元のグラフ

まずは,非常に単純な三角関数を例にして,グラフの書き方を示す.最初の例は,

$\displaystyle \texttt{Plot}[\texttt{Sin}[x],\{x,0,2\pi\}]$    

である.

計算結果をグラフにする場合は,

\begin{equation*}\begin{aligned}&f[x\_]=\partial_x\texttt{Sin}[x^2];\ &\texttt{Plot}[f[x],\{x,-2\pi,2\pi\}] \end{aligned}\end{equation*}

のようにする.計算結果である微分を関数と定義して,プロットしている.関数を定義す るときは,変数の後に下線をつける.

媒介変数を使ったプロットは,

$\displaystyle \texttt{ParametricPlot}[\{\texttt{Sin}[2t],\texttt{Sin}[3t]\}, \{t,0,2\pi\}]$    

のようにする.これは,リサジューの図形である.

グラフの形に不満があれば,オプションを使って,整形できる.論文などに計算結果のグ ラフを貼り付ける場合,オプションを駆使して,見栄えを整えるべきである.

5.3.2 3次元のグラフ

3次元グラフは

$\displaystyle \texttt{Plot3D}[\frac{\texttt{Sin}[\sqrt{x^2+y^2}]}{\sqrt{x^2+y^2}}, \{x,-4\pi,4\pi\},\{y,-4\pi,4\pi\}]$    

と書けばよい.このままだと少し分かり難いので,オプションをつけるて分かり易くでき る.

\begin{equation*}\begin{aligned}&\texttt{Plot3D}[\frac{\texttt{Sin}[\sqrt{x^2+y^...
...,\ &\quad \texttt{PlotPoints -> 100}\ &\texttt{]} \end{aligned}\end{equation*}

媒介変数による3次元プロットは,

$\displaystyle \texttt{ParametricPlot3D[\{Cos[t]\;(3+Cos[u]), Sin[t]\;(3+Cos[u]), Sin[u]\}, \{t,0,2$\pi$\}, \{u,0,2$\pi$\}]}$    

のようにする.

その他,濃淡プロットや等高線プロットもできるので,各自,必要に応じて勉強するのが 良いだろう.

5.4 方程式

Mathematicaでの方程式の解き方は,いろいろある.ここでは,Sloveを用いた非線形方程 式と連立方程式,NDSolveを用いた微分方程式の計算方法を示す.

5.4.1 非線形方程式

普通,紙と鉛筆を用いて非線形方程式を解くことはできない.通常であれば,プログラム を作成して,ニュートン法等のアルゴリズムで方程式の近似解を得ることになる.

まず,簡単なところからはじめる.二次方程式は

$\displaystyle \texttt{Solve[a x$^2$ + b x + c == 0,x]}$    

とする.二次方程式の解析解が得られるはずである.このように解析解がない場合は, ニュートン法を使うことになる.例えば $ \cos x-x=0$のような方程式は

$\displaystyle \texttt{FindRoot[Cos[x]-x== 0,\{x,0.5\}]}$    

とする.最初に式を書き,次に変数とその初期値をあたえる.これでニュートン法により 計算できる.

5.4.2 連立方程式

連立方程式は,Solveコマンドで計算できる.例えば,

$\displaystyle \texttt{Solve[\{x+2y==3,4x+5y==6\},\{x,y\}]}$    

のようにする.これは, となっている.

5.4.3 常微分方程式

次は,常微分方程式の計算方法を示す.解くべき常微分方程式は

$\displaystyle \left\{ \begin{aligned}&\frac{d^2x}{dt^2}+x=\sin t\ &\frac{dx}{dt}=0\quad(t=0)\ &x=0\quad(t=0) \end{aligned} \right.$

とする.これは,強制振動の方程式である.この系の固有振動数は, $ \omega_0=1$である. そして,外力の角振動数も$ \omega=1$となって,共振している.

Mathematicaで数値計算して解くには,

\begin{equation*}\begin{aligned}&\texttt{result=NDSolve[}\ &\qquad\texttt{\{x''...
...x[t] /. result;}\ &\texttt{Plot[f[t],\{t,0,500\}]} \end{aligned}\end{equation*}

とする.ここで,使われているコマンドの内容は,次の通りである. さあ,実行してみよう.どのような解が得られるか?.次に,外力の振動数を少し変化さ せた場合どのようになるか,調べよ.

先ほどのコマンドは,パレットを用いて

\begin{equation*}\begin{aligned}&\texttt{result=NDSolve[}\ &\qquad\texttt{\{$\p...
...x[t] /. result;}\ &\texttt{Plot[f[t],\{t,0,500\}]} \end{aligned}\end{equation*}

としても良い.この方が,式の内容が分かりやすい.パレットを使って,数学で使う表記 にした方が,ミスが少ないし,後で内容を再考しやすい.

C言語などで,プログラムを作成して計算することを考えると,いかにMathematicaが簡単 かが分かるであろう.

5.5

任意の波形の音を出すこともできる.例えば,音階のラの音--440[Hz]--は

\begin{equation*}\begin{aligned}&\texttt{ra = 440;}\ &\texttt{Play[Sin[2 $\pi$ ra t],\{t, 0, 5\}]} \end{aligned}\end{equation*}

とする.これで,440[Hz]の$ \sin$波の音が5秒間鳴る.

[練習0]
440[Hz]と441[Hz]の音を重ね合わせて,1[Hz]のうなりを聞いてみよ う.

5.6 その他

Mathematicaでは画像処理もできる.ここでは,割愛するので,興味がある人は,自分で 学習して欲しい.
ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年6月24日


no counter