Yamamoto's Laboratory
オペアンプ
フィードバック
  安定性
研究 電気/電子回路 フィードバック: 安定性

フィードバック安定性(ナイキストの判別法)

出力の一部を入力に戻す「フィードバック」はいろいろな場面で使われています.制御システムよく使われる方法は,誤差をフィードバックすることで,とても精度よく目標値に近づけることができます.しかし,フィードバックは使い方により発振することが有ります.ここでは,フィードバックシステムの安定性を判別するナイキストの方法を説明します.

目次


フィードバック回路

ナイキストの安定性判別法

フィードバック回路

1に,フィードバック回路を示します.Esは元の入力信号です.Egは増幅器の入力信号で,元の信号Esとフィードバック信号βEoの和です.Eoは増幅器からの出力です.その出力のβ倍したものがフィードバック信号となり,入力に帰還されます.

図1: フィードバック回路

この回路を式で表すと \begin{align} E_g &= E_s+\beta E_o \label{eq:Eg} \\ E_o &= AE_g \label{eq:Eo}& \end{align} となります.ここで,Aは増幅率,βは帰還率です.一般的には,これら(A, β)はいずれも複素数です.実数部は振幅の大きさの変化,虚数部は位相の変化を表します.これらの式を整理すると, \begin{align} E_o = \frac{AE_s}{1-A\beta} \end{align} が得られます.Aβの値により,出力Eoにいくつかのパターンがあります.

  • Aβ=1の場合 出力Eoは無限大に発散します.

周波数領域の解析

これまでは暗に,増幅率Aと,機関率βは定数としてきました.見方を変えるために,これらの変数は周波数の関数とします.このようにしても一般性は失われません.入力信号はEse-iωtとした場合の出力信号は \begin{align} E_o e^{-i\omega t}= \frac{AE_se^{-i\omega t}}{1-A\beta} \end{align} です.

図2: 正常動作

安定性

フィードバック回路の安定性を考えるために,式\eqref{eq:Eg}と式\eqref{eq:Eo}を別の切り口から考えます.これらの式から, \begin{align} E_o = AE_s+A\beta E_0 \end{align} が得られます.次に入力信号がない場合 (Es=0) を考えます.フィードバック回路が不安定な場合,入力信号が無くても出力が現れるからです.もちろん,不安定な場合には入力信号があっても勝手な出力信号になりますが,解析を容易にするために,入力信号が無い場合を考えます.すると, \begin{align} (1-A\beta)E_0=0 \end{align} が得られます.これには二つの解, \begin{align} &E_0=0 \\ &1-A\beta=0 \label{eq:unstable_condition} \end{align} が存在します.前者は普通の解で,入力がゼロ(Es=0)のときに,出力はゼロ(Eo=0)になります.後者のほうは問題で,入力が無くても(Es=0),出力は有限(Eo≠0)になります.これは回路的には不安定な状態と言われ,制御不要です.

ここからは,不安定な状態を示す式\eqref{eq:unstable_condition}を対象にします.これまでは暗に,増幅率Aは時間の関数,βは定数としてきました.見方を変えるために,これらの変数は周波数の関数とします.そうしても,式の形は変わらず \begin{align} &1-A(\omega)\beta(\omega)=0 \label{eq:unstable_condition_freq} \end{align} となります(図2).増幅率も帰還率も周波数の関数ですが,線形の応答です.入力が正弦波であれば出力は正弦波です.出力に高調波は含まれません.図3は,不安定な状態です.

図3: 不安定

ページ作成情報

参考資料

  1. このページの多くの内容は,ジョージ・アルフケン著「基礎物理数学2 関数論」を参考にしています.この基礎物理数学のシリーズは大変な名著です.学生諸君には是非,読んだもらいたいものです.
    基礎物理数学 (Vol.2) 関数論と微分方程式 KS理工学専門書
    ジョージ.ブラウン・アルフケン ハンス.J・ウェーバー
    講談社
    売り上げランキング: 165,288

更新履歴

2017年10月27日 新規作成


no counter