オペアンプ
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電気/電子回路オペアンプ (基本)「オペアンプとはなにか?」という問いに答えるために,オペアンプの基本を述べます. 目次オペアンプとはアナログ信号を整形する場合,トランジスターや FET の素子を裸で使うことはまずありません.代わりに,オペアンプを使います.オペアンプを使うと,簡単にアナログ回路が出来上がります.アナログ回路の設計方法は後で述べるとして,ここではオペアンプというアクティブ素子を簡単に紹介します. オペアンプの動作理想のアンプ理想的なアンプ (増幅器) を考えよう.それは,入力信号を指定の増幅率で歪なく増幅するものです.さらに,信号源 (ソース) のインピーダンスに影響を受けず,どんな負荷でも駆動することができる — を付け加えることができます.歪が少ないということは,ゲインの周波数特性が広帯域でフラットであることを要請します.電圧を増幅する場合,信号源のインピーダンスの影響を受けないということは,アンプの入力インピーダンスが高いことを意味します.どんな負荷でも駆動するためには,アンプの出力インピーダンスが十分低いことが求められます. 実際,このようなアンプを作ることは大変難しいです.その代わりに,ゲインの高いだけのアンプは比較的容易に作ることができます.そこで,ゲインの高いアンプの出力をフィードバックすることが考えられました.すると,理想に近いアンプが出来上がります.これを実現するための素子がオペアンプです. 理想のオペアンプオペアンプ (演算増幅器, Operational amplifier) は,非反転入力端子(+)と反転入力端子(−),ひとつの出力端子(out)を備えた増幅器のことです(図2).このオペアンプの動作は単純です.入力電圧(V1, V2)と出力電圧Voutの関係は, \begin{align} V_{out}=A(V_2-V_1) \end{align} です.入力電圧の差分を増幅率\(A\)で増幅し,出力します.オペアンプの増幅率はとても大きいですが,出力電圧/電流の上限もあります.このあたりは,オペアンプのデータシートに詳しく書かれています.実際の回路では,オペアンプの端子 (+, −) に電圧を印加して増幅することはありません.増幅率が高すぎて,すぐに出力は飽和してしまいます.回路に詳しい人であれば,増幅率と共に入力/出力インピーダンスが気になるところです. 理想的なオペアンプは,以下のように動作します.
この特性を持つオペアンプを使うと,理想的な増幅器ができます.具体的な増幅器については,次節以降に示します. フィードバック理想的な増幅器の例のひとつを,図3に示します.出力の一部を抵抗 \(R_2\) を通してフィードバックする回路です.この回路の増幅率を考えます.抵抗 \(R_1\) に流れる電流 \(I\) は,全て抵抗 \(R_2\) に流れます.理想のオペンプのインピーダンスは無限大なので,電流が流れ込まないからです. \begin{align} V_{in}-I(R_1+R_2) = V_{out}\\ -A(V_{in}-IR_1) = V_{out} \end{align}最初の式はオームの法則で,二番目の式は増幅率の式です.この連立方程式の電流 \(I\) を消去すると, \begin{align} V_{out} = -\frac{AV_{in}R_2}{R_1+R_2+AR_1} \end{align}が得られます.増幅率 \(A\) は無限大なので, \begin{align} V_{out} = -\frac{R_2}{R_1}V_{in} \label{eq:invert_amp} \end{align}となります.符号は反転していますが,ちょうど抵抗の比\((R_2/R_1)\)で増幅する回路になっています.符号が反転していますので,反転増幅器です.これが理想的な増幅器にっていることは後で述べます. 出力回路を接続次に,この増幅器に負荷 (抵抗: RL) を接続した場合の動作を考えます (図4).前節の式から,R1 と R2 の抵抗に流れる電流は \begin{align} I=\frac{V_{in}}{R_1} \end{align}です.次に,オペアンプの出力端に流れる電流 I0 と負荷に流れる電流を考えます.理想的なオペアンプの出力インピーダンスはゼロなので,どんな負荷を接続してもオペアンプの電圧 \(V_{out}=-(R_2/R_1)V_{in}\) は変わりません.したがって,負荷 (\(R_L\)) に流れる電流 (\(I_L\)) は, \begin{align} I_L = -\frac{R_2}{R_1R_L}V_{in} \end{align}となります.オペアンプの出力電流 \(I_o\) は,キルヒホッフの法則 (\(I_L=I+I_o\)) から \begin{align} I_o = -\frac{R_2+R_L}{R_1R_L}V_{in} \end{align}となります.オペアンプの動作は,入力電圧が \(V_{in}\leq 0\): ソースで,\(0\leq V_{in}\): シンクとなります. 考察入力端子電圧は?図3のフィードバック入力端子の電圧V−を考えよう.単純な考察から,この電圧は, \begin{align} V_- = V_{out}+(V_{in}-V_{out})\frac{R_2}{R_1+R_2} \end{align} となります.式(\(\ref{eq:invert_amp}\))を使い整理すると, \begin{align} V_-=0 \end{align} が得られます.入ロ端子電圧は 0 [V] になります.正確には「オペアンプの二つ入力端子 (−, +) の電圧は等しくなる」です. 入力端子の片側に電圧を印加次に,図に示す回路を考える.オペアンプの正極側の入端子に電圧V+を印加した場合である.これまで同様に,式で表すと \begin{align} V_{in}-I(R_1+R_2) = V_{out}\\ V_+-A(V_{in}-IR_1) = V_{out} \end{align} となります.この式を整理すると,出力電圧は \begin{align} V_{out} = V_+-\frac{AV_{in}R_2}{R_1+R_2+AR_1} \end{align} です.増幅率が無限大(非常に大きい)というオペアンプの特性から, \begin{align} V_{out} = V_+-\frac{R_2}{R_1}V_{in} \end{align} が得られます. フィードバック端子を逆にすると?フィードバックする端子をオペアンプの正極 (+) にするとどうなるだろうか? 普通には,(1)適当に収束する,(2)発散する,(3)発信する — のいずれかである. 増幅率ここでは,フィードバックする端子をオペアンプの正極 (+) にした図5に示す回路の増幅率を考える.先に示したフィードバック回路,図3と比較すると,フィードバック信号の接続先が異なります. この図の回路でも,オペアンプの入力端子 (+) には電流が流れ込みません.さらに,出力電圧Voutはオペアンプの入力信号電圧差が増幅率A倍されます.式で書くと以下のとおりです. \begin{align} V_{in}-I(R_1+R_2) = V_{out}\\ A(V_{in}-IR_1) = V_{out} \end{align} この式から増幅率は, \begin{align} V_{out} = \frac{AV_{in}R_2}{R_1+R_2-AR_1} \end{align} が得られます.増幅率 A は無限大なので, \begin{align} V_{out}= -\frac{R_2}{R_1}V_{in} \end{align} となります.結果は式(\(\ref{eq:invert_amp}\))と同一です.オペアンプの正極 (+) にフィードバック信号を戻しても,反転増幅します.この結果はなかなか良さそうですが,実際にはダメです.次に述べるように,発散するので使いものになりません. 安定性図5に示す回路のオペアンプの正極の入力電圧は,理想的には 0 [V] です.もしここに,ΔVの正の電圧が加わったとします.すると,オペアンプの出力端子の電圧は,Vout=AΔVとなります.これはとても大きな電圧です.すると, \begin{align} V_+ &= A\Delta V+(V_{in}-A\Delta V)\frac{R_2}{R_1+R_2} \nonumber\\ &=V_{in}\frac{R_2}{R_1+R_2}+A\Delta V\frac{R_1}{R_1+R_2} \end{align} となります. 増幅率が周波数に依存する場合ページ作成情報参考資料
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