4 軸対称問題

軸対称問題は、円柱座標系を使うのがセオリーである。この場合、解析する機器の形状は完全軸対 称で、電荷分布も同じである。スカラーポテンシャルはスカラー量なので、ベクトルポテンシャ ルのように煩わしいことはなにもない。有限要素法で計算するときには、ただ汎関数の値 を求めれば良いのである。

静電場の汎関数は式(9)で示したとおりである。この式 にはスカラーポテンシャルの勾配の演算が含まれる。円柱座標系の勾配は、以前示したとおり、

$\displaystyle \nabla \phi$ $\displaystyle =\frac{\partial\phi}{\partial r}\hat{\boldsymbol{r}}+ \frac{1}{r}...
...}\hat{\boldsymbol{\theta}}+ \frac{\partial\phi}{\partial z}\hat{\boldsymbol{z}}$ (14)

である。軸対称構造の静電場には、 $ \boldsymbol{E}_\theta$がゼロである。従って、スカラーポ テンシャルの勾配の $ \hat{\boldsymbol{\theta}}$成分はゼロになる。そのため、スカラーポテン シャルは

$\displaystyle \nabla \phi$ $\displaystyle = \frac{\partial\phi}{\partial r}\hat{\boldsymbol{r}}+ \frac{\partial\phi}{\partial z}\hat{\boldsymbol{z}}$ (15)

となる。

この回転の結果を汎関数の式(9)に適用すると、

$\displaystyle F[\phi]$ $\displaystyle =\int\left[\frac{\varepsilon}{2}\left\{ \left( \if 11 \frac{\part...
...{1} \phi}{\partial r^{1}}\fi \right)^2 \right\} -\rho\phi\right]2\pi rdrd\theta$ (16)

となる。

特に静電場の場合は、ラプラス方程式を計算することが多く、その場合は、式 (16)を$ \rho=0$とすればよい。するの、その式は 静電場のエネルギーを表す式になる。その第一変分がゼロということは、安定状態はエネ ルギーが停留値になることで、一般には最低エネルギーになる。エネルギーがもっとも小 さいときが安定なのである。



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著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年8月20日


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