まずは、静電場が満たす方程式を示す。これはマクスウェルの方程式の時間の項をゼロとした式になる。それは、
と書き表せる。ここで、
は電束密度、
は電場の強さ、
は電
荷密度を表す。ただし、物質中では
の関係がある。ここで、
は誘電率である。これは、異方性の物質では2階の
テンソルとなる。しかし、ほとんど実用に使われている物質は、等方的である。そこで、
ここでは、等方的な物質のみを考えることにする。すると、それはスカラー量として取り
扱うことができ、計算が簡単になる。静電場の問題は、全て電束密度と電場の関係式
(3)を用い、連立偏微分方程式(1)と
(2)を解くことになる。これで、全てであるが、問題によっては簡
単に解けないのである。問題に応じた解法が必要となってくるが、基本はこれらの方程式
であることを忘れてはならない。
通常、静電場の問題では電場
を計算するより、ポテンシャルを計算する方が簡単
である。電場はベクトルで未知数が3個あるが、ポテンシャルはスカラーなので未知数が1
個で済む。どう見ても計算が簡単である。このポテンシャルは、正確にはスカラーポテン
シャルと言い
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(4) |
と定義される。こうすることにより、静電場のマクスウェルの方程式
(2)が自動的に満足される2。
これで、静電場のマクスウェルの方程式のひとつが満足したので、残りを満足させるため
のスカラーポテンシャルの条件を探せばよい。残りの式(1)と式
(3)、そしてスカラーポテンシャルの定義とから、
が直ちに分かる。これが静電場を計算するときのスカラーポテンシャルが満たすべき偏微
分方程式である。右辺と左辺を入れ替えて、見栄えよく記述すると
となる。以前求めた、静磁場のベクトルポテンシャルが満足す
る偏微分方程式と似た形をしている。次節では、この汎関数を示す。
汎関数を示す前に、もう少し一般的なことを述べておく。誘電率は一定と考えることが多
い。その場合、誘電率は積分の外に出すことができ、
となる。これは、ポアッソン(Poisson)方程式と呼ばれる。また、計算する領域内に電荷
が無い問題も多く、その場合は
となる。これは、ラプラス(Laplace)方程式と呼ばれる。
実際の静電場の問題では、マクスウェルの方程式から直接導かれる式
(1)や(2)の代わりに、適当な境界条件を
課して、式(6)や(7)、
(8)を計算することにある。これらの式のうち、条件に適合した最も
簡単式を選択するのは言うまでもない。次節ではもっとも条件の厳しい、式
(6)の汎関数を示す。
静磁場の汎関数から、静電場のそれは
と想像できる。本当かどうか、この式の第一変分を計算し、それがゼロになる条件を
考えることにする。第一変分は、を
変化させたときの微小変化量で
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2次の微少量を無視すると |
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ベクトル恒等式
を 上 手につかう |
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とする。 |
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この式の第1項に発散定理を使い、式を整理すると |
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(10) |
となる。
いつものように、任意の
に対して、この第一変分がゼ
ロになる条件を考える。そのためには、式(10)の右辺の第1項と
第2項の被積分関数がともにゼロになる必要がある。まず、第1項であるが、それは
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(11) |
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(12) |
のいずれかである。最初の条件はノイマン条件で、何も境界条件を指定しなければ、電場
と境界は平行になると言うことであ。2番目のものは、境界でのスカラーポテンシャルを指定するディレ
クレ条件である。即ち、第一変分の右辺第1項は境界条件を表すのである。
次に、第2項であるが、これは計算している領域で
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(13) |
となる必要がある。これは、スカラーポテンシャルを用いた静電場のマクスウェルの方程
式そのもので、式(6)と等しい。
以上のことから、静電場を計算するためには、式(9)の
第一変分をゼロにすればよいことが分かる。静電場のマクスウェルの方程式は、式
(9)の第1変分をゼロにするのと等しいのである。
ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年8月20日