Yamamoto's Laboratory
はじめに
Z80

8ビット CPU Z80はじめに

目次


はじめに

私の青春時代,この言葉を使うようになったということは大昔のことですが,Z80は栄光のCPUでした.初めて購入したパソコン(マイコン)は Sharp MZ-2000 で,その CPU に Z80 が使われていました.私にとって思い出深い CPU です.当時,BASIC言語はすぐに会得できたので,引き続きマシン語を勉強するつもりでいました.ところが,ひとつずつの命令は理解できるのですが,それが全体として何をやっているのかがさっぱり理解できなかったことを記憶しています.その後に経験を積み,コンピューターの仕組みが少し分かると,マシン語の動作が理解できるようにな気になったものです.

私は数個の Z80 を持っています.少しずつ時間を見て,これを使った パソコン(マイコン)を作ろうと考えています.きっかけは,鈴木哲哉著「古典電脳物語」[参考資料 1]です.この書籍では,古いCPU(8085やZ80)を使い1970年代のコンピューターを再現しています.本当に,楽しそうだし,いろいろと勉強になります.

図1: ZiLOG Z80 CPU

Z80までの歴史

私の記憶 — といっても直接見たり関係者から聞いたわけではない,もちろん経験もない — やWEBページ,書籍からの情報をまとめると,Z80 が関わる歴史は次の通りです.

ワンチップのCPU,すなわちマイクロプロセッサーの開発には日本での「電卓戦争」が関わっています.1960年代の後半から70年代にかけて,日本の電卓メーカーは低価格化と小型化の猛烈な競争を行っていました[参考資料 2].そんな中,ビジコン社はユニークな電卓を開発していました[参考資料 3].最初はコアメモリーを使った電卓で,低価格で高性能だったためシェアーを伸ばしました.当時の競争は激烈で,次々とより良い製品を投入しないとすぐに淘汰されてしまいます.新製品を投入するということは,新規のIC(LSI)を開発することになり,なかなか厳しいことであっと想像できます.そこで,ビジコン社はプログラム制御の電卓の開発を進めることになりました.プログラムを変えることにより,ハードウェアー(IC)の変更をしないで機能を変えるというものです.このアイディアを実現するために,インテルにICの開発を依頼しました.それはプログラムにより制御ができる電卓用ICでしたが,テッド・ホフは4ビットの汎用コンピューターを提案しました.そのCPUが 4004です.嶋正利とフェデリコ・ファジンが中心となって,開発が進められ,1971年に完成します.これにより Intel 4004 は世界最初の CPU という栄誉に浴することになります.

4004以降,Intel は次々にマイクロプロセッサーを開発します.すぐに,8ビットのマイクロプロセッサーの時代になります.Intel 8080が1974年に発売されます.この CPU の命令は,8085 や Z80 に引き継がれます.このことから,8080 は 8ビット CPU のひとつの源流と考えられます.8ビットCPUの他の源流は,モトローラーの6800とモステクノロジー 6502 です.

Intel 8080の開発もまた,フェデリコ・ファジンと嶋正利を中心にして行われました.8080の開発が終わると,ファジンは ZiLOG 社を立ち上げます.そして,8ビット CPU の勝者である Z80を開発します.ここでも,ファジンと嶋正利が開発の中心にいました.Z80 の技術的な内容はおいおい述べるとして,初期のマイクロプロセッサーの開発に,ファジンと嶋正利が関わっていたことになります.それも,当時は小さな半導体メーカーに過ぎなかった Intel,会社が発足したばかりの ZiLOG でこのような大きな仕事をしたことに驚かされます.大変な努力があったことは疑いありませんが,情熱も持ち合わせたと思われます.私は,開発 — イノベーションといっても良い — では,この二つは必須の資質と考えています.どこへ行っても,自分の情熱を傾ける仕事をすることが大事です.

CPU が8ビットになったことで,コンピューターの自作の時代が訪れます.それは,1970年代のことです.8ビット CPU を使って,次々と個人用のコンピューターが作られます.そして,それに応じてソフトウェアーも爆発的な進化が始まります.

参考文献・WEBサイトなど

  1. 鈴木哲哉,古典電脳物語(マイコン黎明期のコンピューター自作法)
    古典電脳物語 8085,Z80,CP/M,タイニーBASIC…古典電脳物語 8085,Z80,CP/M,タイニーBASIC…
    鈴木 哲哉

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  2. 電卓戦争とそれに引き続くマイクロプロセッサーの発明については,NHK製作のドキュメンタリー番組 電子立国日本の自叙伝 の「第4回 電卓戦争」と「第5回 8ミリ角のコンピューター」で詳しく紹介されています.このドキュメンタリーは日本の半導体産業の興隆を描いた番組で,その最盛期に製作されました.非常におもしろいシリーズです.
  3. ビジコン社の歴史.電卓戦争のときの,ビジコン社の様子が分かります.


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