5 ベクトルの別の表現

5.1 成分を用いた表現

これまでの話で、ベクトルは矢で表されることが分かった。矢で表すと直感的に分かり易 いが、計算には不向きである。そこで、別の表現を考えることにする。図 7のようにその矢の始まりをカーテシアン 2座標系の原点におい て、先端の座標で表すことができる。そうすると、位置ベクトル $ \boldsymbol{r}$の場合、

$\displaystyle \boldsymbol{r}_1=(x_1,y_1,z_1)$ (3)

のような表現が可能であろう。この、 $ x_1, y_2, z_3$をベクトル $ \boldsymbol{r}$の成分、あ るいは射影と言う。我々は3次元(相対論では4次元)の世界に住んでいるので、物理学で取 り扱うベクトル量は3つの成分からなる。
図 7: カーテシアン座標系をつかったベクトルの表現
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/vector_cartesian.eps}

このようにすると、ベクトルの表現は全く便利になる。今までの矢を用いた方法だと、ベ クトル量の計算が大変やっかいである。計算するとなると数値で表すことになるが、長さ と角度みたいな量で表すことになる。2つのベクトル量をそれぞれ長さと角度の数値

$\displaystyle \boldsymbol{A}=(r_A, \theta_A)$ (4)
$\displaystyle \boldsymbol{B}=(r_B, \theta_B)$ (5)

で表現したとする3。これを加算することを考えると、かなり面倒 である。

$\displaystyle \boldsymbol{C}$ $\displaystyle =\boldsymbol{A}+\boldsymbol{B}$    
  $\displaystyle =($長さの表現複雑$\displaystyle ,$   角度の表現複雑$\displaystyle )$ (6)

一方、座長を用いた表現だと

$\displaystyle \boldsymbol{C}$ $\displaystyle =\boldsymbol{A}+\boldsymbol{B}$    
  $\displaystyle =(A_x, A_y, A_z)+(B_x,B_y,B_z)$ (7)
  $\displaystyle =(A_x+B_x, A_y+B_y, A_z+B_z)$ (8)

のように簡単に演算ができる。成分同士を加算すれば良いのである。これは、まったくもっ て便利である!!!!。

ここで、先ほどのカーテシアン座標の各軸に沿った単位ベクトルを導入すると、便利な場 合がある。図8のようにすると、

$\displaystyle \boldsymbol{A}$ $\displaystyle =(A_x, A_y, A_z)$    
  $\displaystyle =A_x\boldsymbol{i}+A_y\boldsymbol{j}+A_z\boldsymbol{k}$ (9)

のように表現できる。ここで、 $ \boldsymbol{i}$, $ \boldsymbol{j}$, $ \boldsymbol{k}$が各軸に沿った単位ベクト ルである。

成分を使った表現では、ベクトルの大きさも簡単に計算でき、ピタゴラスの定理より

$\displaystyle \vert\boldsymbol{A}\vert=A_x^2+A_y^2+A_z^2$ (10)

となる。
図 8: 単位ベクトル
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/unit_vector.eps}
[練習1]
2つのベクトル

$\displaystyle \boldsymbol{A}=(1,2,3)$    
$\displaystyle \boldsymbol{B}=(3,2,1)$    

$ \boldsymbol{A}+\boldsymbol{B}$ $ \boldsymbol{A}-\boldsymbol{B}$を示せ。
[練習2]
[練習1]のベクトル $ \boldsymbol{A}$ $ \boldsymbol{B}$の大きさを示せ。

5.2 方向余弦について

後に、方向余弦と言う話も出てくるので、少し説明をしておく。図 7に示したように成分を使って、ベクトルは表現可能である。 ベクトルの大きさを$ r$として、各軸との角度をそれぞれ図9のよ うにすると、

  $\displaystyle r_x=r\cos\alpha$   $\displaystyle r_y=r\cos\beta$   $\displaystyle r_z=r\cos\gamma$ (11)

の関係がある。ここで、$ r$はベクトル $ \boldsymbol{r}$の大きさを表す。これらの $ r\cos\alpha, r\cos\beta, r\cos\gamma$を方向余弦と言う。
図 9: 方向余弦
\includegraphics[keepaspectratio, scale=1.0]{figure/houkou_yogen.eps}

ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
yamamoto masashi
平成17年5月14日


no counter