静電場と静磁場はともにベクトル場である.ベクトル場を記述する微分方程式の完全な組は,その発
散と回転であることは以前に示したとおりである.そこで,電場
と磁場
の発散と回転を示すことにする.
これが静電場のすべてで,どんな問題でもこれを計算すれば原理的に解ける.宇宙全体の 電荷をすべて計算すればよいのであるが,それは実際的でない.そのため,いろいろと数 学的な工夫がなされた.ただ,数学的に式を変形したと思ってはならない.かなり重要な 概念が導入されることになる.
導入された概念のうち最も重要なものは,場の概念である.このクーロンの法則から静電
場と言うものが考えられる.電荷が静電場を作り,その静電場が電荷に力の作用を及ぼす
のである.先のクーロンの法則から,電荷は
の位置に
と言う電場を
作るのである.この電場が電荷
に作用して,
という力を及ぼすのであ
る.これは,
電場求めることが静電場の中心的な問題となる.これが分かれば全ての静電場の性質が分
かるからである.
の位置にある電荷
が
の位置につくる電場
を求める.これは式(4)から,直ち
に
電荷が電荷密度
で連続的に分布する場合,位置
での電場
は,式(6)より
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(7) |
式(8)の両辺の発散を計算する.
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ベクトル場の微分方程式の片割れが分かった.残りは,回転である.先ほど,同様に一般 化されたクーロンの法則の式(8)の両辺の回転を計算する. 式(8)の両辺の発散を計算すると次のようになる.
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ベクトル恒等式
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以上をまとめると,電場を表す微分方程式は,
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実際に磁場を作るものは電流である.1本の無限に長い直線電流
が作る磁場は,
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以上の結果をまとめると,磁場が満たす方程式は,
静磁場の微分方程式の導出は静電場に比べて,汚い.静電場の方は教科書から離れて少し 理論的に示した.それに対して,静磁場は教科書のとおりとしている.静磁場の方も静電 場同様に美しく導き出すことも可能である.ビオ-サバールの法則を出発点として,ベク トル解析とデルタ関数を上手に使う方法である.思い出してほしい,静電場ではクーロン の法則を出発点として,ベクトル解析とデルタ関数を使って,場の方程式を示した.
デルタ関数を使うと直観に頼らなくて済む分,すっきりとした理論展開ができる.しかし, 物理的なイメージがわかり難くなる弊害がある.両方を教えるべきと思うが,大変多くの 時間が必要となる.