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この球を帯電していない状態で,静電場の中に置くことを考える.金属中の電場はどのよ うになるであろうか?.金属中に電場ができると,素早く電子が移動し,その電場を打ち 消すように移動する.その移動は,電場がなくなるまで続く.電場がなくなるまでの時間 はとてつもなく早い.したがって,通常の状態では,金属中の静電場はゼロとなる.
金属球を帯電させた場合は,どうなるであろうか?.金属球を絶縁体で支え,そこに向かっ て電子銃で電子を当てればよい.そのうち,電子がクーロン力により反発され,電子ビー ムがそれるが,ある程度の帯電は可能である.この場合でも,金属球内部では静電場はゼ ロになる.先ほどと同様の理由で,電場があると電子が動くからである.それでは,帯電 した電子は何処にいくのだろうか?.金属球には余分な電子があるはずである.金属球内 部に余分な電子があると,ガウスの法則により電場ができてしまう.そのようなことから, 金属内部には余分な電子はないはずである.余分な電子は,金属の表面の極薄い部分に集 まっているのである.内部に電場が生じないように表面に分布している.それらの電子は, 余分な電子から力を受けているが,他の力により金属表面にとどめられているのである.
以上のことから,金属内部での静電場はゼロと結論できる.いかなる場合でも,静電場は ゼロである.静電場ではなく,時間的に変動する電磁場でも周波数が低ければ,電場はゼ ロとなる.電場がゼロとならない周波数は,プラズマ周波数以上である.金属のプラズマ 周波数は可視光よりもずっと高い.
金属で囲まれた内部には,外部の静電場が侵入することができず,いつでも電場はゼロで ある.ノイズから機器を遮蔽するために,金属で覆うのはこのためである.静電場のみな らず,高周波の電磁場も侵入できない.完全に囲まれた空洞内部は電磁場がまったくない, 静かな世界となる.逆に,電磁場のソースが空洞内部にあると,それはまったく外に漏れ ない.外部にノイズを出さないように,金属で覆う理由となっている.
コーヒーブレイク
余談であるが,金属が光沢があるのは,この自由電子の作用である.光の電場が金属内に
入り込もうとすると,自由電子は非常に早く移動して,それを阻止する.光の電場と同期
して,電子が移動することになる.その移動により新たに電場がつくられ,入射光と反対
方向に電磁波(光)を放射する事になる.これが反射光となり,金属は光沢を持つのである.
一般に光るものは,自由電子がふんだんにあり,電気を通しやすい.
さらにこの自由電子は熱を伝える働きもする.金属の熱伝導率が高いのも,大量に自由電 子があるからである.熱と光と全く異なった現象であるが,同じ自由電子が関与してい るのはおもしろいことである. |