実験では,H8マイコンを動作させるための周辺機器を組み込んだCPUボード(秋月電子
AKI-3664N)を使う.周辺機器をボードに組み込むことにより,ユーザーの利便を図ってい
る.表4に,実験で用いている端子と機能を載せておく.
端子台 | ピン番号 | 3664N名称 | 機能 |
CN1 | 7 | AN3 | A/D変換器のアナログ入力端子3 |
8 | AN2 | A/D変換器のアナログ入力端子2 | |
9 | AN1 | A/D変換器のアナログ入力端子1 | |
10 | AN0 | A/D変換器のアナログ入力端子0 | |
12 | RES | グランド電圧にするとリセット.プログラムは最初から実行. | |
14 | P50 | PDR5レジスターの最下位ビットのが出力される(0:0[ ] 1:5[ ]) | |
15 | P51 | PDR5レジスターの下位から2番目のビットのが出力される. | |
16 | P52 | PDR5レジスターの下位から3番目のビットのが出力される. | |
17 | P53 | PDR5レジスターの下位から4番目のビットのが出力される. | |
24 | PS-IN | 電源入力.JP1を未接続:5[ ] JP1をジャンパー 7-12[ ]. | |
25 | GND | グランド電圧.ここの電位がグランド電位の基準となる. | |
CN2 | 11 | FTIOB | PWM信号出力. |
13 | FTIOD | PWM信号出力. | |
24 | RXD | PCとの通信につかう. | |
25 | TXD | PCとの通信につかう. | |
26 | GND | PCとの通信につかう. |
赤外線センサーは,赤外線を発生するLEDとそれを関知するフォトトランジスターから構 成されている.具体定期な動作を図13を使って説明しよう.LEDに電流を 流すと赤外線を発生する.レンズを通過した後,この赤外線はライントレースカー下の床 に当たる.もし床が白ければ(図13の左側)赤外線は反射され,フォトトラ ンジスターに入る.この場合,フォトトランジスターのエミッターとコレクターの間に電 流が流れる.一方,床が黒いとき(図13の右側)には,赤外線は反射され ず,フォトトランジスターには光が入らない.この場合には,フォトトランジスターには 電流が流れない.
フォトトランジスターに電流が流れる場合,その抵抗は小さいので,コレクターの電圧は, ほぼ0[ ]になる.図中のコレクターに接続された抵抗に比べて,フォトトランジス ターの抵抗が無視できるくらい小さいからである.一方,赤外線が反射されないでフォト トランジスターに電流が流れない場合,コレクターの電圧は大体2.4[ ]となる.こ のとき,コレクターに接続された抵抗に比べて,フォトトランジスターの抵抗がかなり大 きいためである.
このフォトトランジスターの動作は,図14のように考えることができ る.丁度,反射してくる赤外線によりスイッチがON/OFFしているのである.そうして,ス イッチの電源側の電圧を測定すれば,スイッチのON/OFFが分かる 赤外線の 反射の有/無が分かる 床の白/黒が分かる.
スイッチの電源側の電圧は,H8マイコンのA/D変換器で測定することができる.しかし, ここの実験では,ON/OFFの信号を二値化するために,インバーター;論理回路のNOTを介し て,A/D変換器へ入力している.
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このDCモーターは,次のような長所と短所を持っている.ここで述べている短所は,全て ブラシと整流子の接触部分で起きている.簡単な回路で直流モーターを作ると避けること ができないことである.
それに対して,Pulse Width Modulation(PWM)制御は簡単な回路で,DCモーターの速度制 御ができる.PWM制御では,図16のように信号がHになったときにモーターに 電流が流れ回転のトルクが生じる.Lの時は,電流が流れないのでトルクは発生しない. このHとLを高速に繰り返すとON/OFFを繰り返すが,モーターはなめらかに回転する.慣性 があるからである.
PWM信号のデューティ比8に応じて, DCモーターの速度が変わる.デューティ比が大きいほど,ONの時間が長くなるので回転 速度が速くなる.
H8マイコンは,このPWMのための信号出力ができる.ここの実験では, p.の図11に示しているマイコ ンのCPUボードのCN2の11番と13番ピンにPWM信号を出力している.この出力信号をダーリ ントン接続したトランジスターでスイッチングを行いDCモーターに電力を供給している. 出力するPWM信号のデューティ比はプログラムで決める.
繰り返し周期は,p.のB.2.2節の「制御用の 関数」で述べているリスト4で決めている.このプログラムでは,繰り返 し周期は32.76[ ]となる.
ここで使っているトランジスターは,バイポーラー型と呼ばれるものである.このタイプ のトランジスターの増幅率は,大体数十から数百である.普通に回路を作れば,ベースとエミッター間に 1[ ]の電流を流すと,コレクターとエミッター間に100[ ]程度の電流を流す ことができる.
トランジスターはスイッチとして使うことができる.ベースとエミッターの間に流す小さ な電流により,スイッチをON/OFFするように動作させることができる.増幅作用と同じこ とであるが,小さな電流の方を一定の電流とし,それを流したり/切ったりすることによ りあたかもスイッチのように使うのである.その様子を図18に示す.
H8マイコンのように,大きな電流が得られない措置で,モーターのように大電流が必要な 機器をON/OFFするときにトランジスターをスイッチとして使うことができる.H8マイコン の出力は高々,1[ ]程度である.それに対して,ここの実験で使うモーターは数百 [ ]程度の電流が必要である.直接,H8マイコンの出力をモーターに接続してもモー ターを回転させることはできないし,H8マイコンが破損するだけである.そこで,H8マイ コンの小電流の出力はトランジスターのスイッチを駆動するためだけ使い,そのスイッチ のON/OFFでモーターを制御する.
ここの実験では,ダイオードのこの特性を利用して,DCモーターのエネルギー効率の向上 に使っている.この様子を図20を使って説明する.
さらに,このダイオードにより,逆起電力の緩和の効果もある.スイッチをOFFにした瞬 間,コイルの作用により逆起電力が発生する.そうなると,スイッチ--多くの場合半導 体--に大きな逆電圧が印可される.ダイオードがあると,図20 の(B)のように電流が流れ,スイッチには大きな逆電圧が印可されない.なぜならば,ダ イオードの抵抗はほぼゼロと考えることができるからである.
スイッチのON/OFFの回数が多い場合に,フライホイールダイオードの効果が現れる.ここ の実験ではPWM制御で,1秒間に30回,ON/OFFを繰り返している.十分効果が期待できる. DCモーターをPWM制御する場合,必ず取り付けるべきである.
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