3 勾配

勾配から電磁場を求めるのは、静電場の問題に現れる。即ち、

$\displaystyle \boldsymbol{E}=-\nabla \phi$ (18)

である。ここではこの勾配の計算方法について述べる。

3.1 要素内

静電場の問題はスカラーポテンシャルを計算するのが一般的である。それがもっとも計算 が簡単であるからである。我々は、 軸対称構造の静電場 の問題を計算している。軸対 称なので、ポテンシャル$ \phi$$ (r,z)$の関数で、$ \theta$方向には依存しない。従って、こ のポテンシャルの勾配から求められる電場は、

$\displaystyle E_r=- \if 11 \frac{\partial \phi}{\partial r} \else \frac{\partial^{1} \phi}{\partial r^{1}}\fi$ (19)
$\displaystyle E_z=- \if 11 \frac{\partial \phi}{\partial z} \else \frac{\partial^{1} \phi}{\partial z^{1}}\fi$ (20)

となる。

本図書の回転で示したのと同様に、有限要素法では図1で示され る三角形要素の頂点でスカラーポテンシャル$ \phi$の値を計算する。これら3つのスカラー ポテンシャルから、要素内の電場$ E_r$$ E_z$を求めなくてはならない。要素内の任意の位置で のスカラーポテンシャルをを計算する式を導く。今のところ、我々の計算は1次近似なので、 要素内のスカラーポテンシャルは

$\displaystyle \phi(z,r)=\alpha +\beta z + \gamma r$ (21)

となる。

ポテンシャルの値が分かれば、電場は計算できる。式(21)を式 (19)や(20)に代入すると、

$\displaystyle E_r=-\gamma$ (22)
$\displaystyle E_z=-\beta$ (23)

となる。スカラーポテンシャルの値を示す1次近似の係数$ \gamma$$ \beta$を計算すれば、 電場が分かるのである。非常に単純な式である。

電場を計算するための係数$ \alpha$$ \gamma$$ \beta$の計算は、回転の場合と同様に すればよく、

$\displaystyle \begin{bmatrix}\alpha \\ \beta \\ \gamma \end{bmatrix} = \begin{b...
... y_k \end{bmatrix}^{-1} \begin{bmatrix}\phi_i \\ \phi_j \\ \phi_k \end{bmatrix}$ (24)

となる。もちろん、 $ (x_i,\,y_i)$ $ (x_j,\,y_j)$ $ (x_k,\,y_k)$は頂点の座標、 $ \phi_i$$ \phi_j$$ \phi_k$はその位置のスカラーポテンシャルである。これで、要素 内の電場の値は計算できる。

3.2 内部要素の頂点

内部要素で共有された頂点での電場の値を求めるときには、回転の時と同様に問題が生じ る。図2のように要素A,B,C,D,E,Fが、頂点$ i$を共有し、 その点での電場の値をどうするかである。A〜Fのそれぞれの要素で電場の値が微妙に異な ることが問題である。その差は小さいので、とりあえず平均値とするのが良いであろう。

3.3 軸上

式(22)や(23)を見ても分かるように、 回転の時のように値が発散するようなことはない。しかし、境界条件について、少し考え てみるのも良かろう。軸対称問題の静電場の場合、その軸上では、自然境界条件

$\displaystyle \left(\nabla\phi\right)\cdot\boldsymbol{n}=0$ (25)

を満たす必要がある。ここで、 $ \boldsymbol{n}$は軸に垂直で外側に向かっている単位ベクトルで ある。これは、$ -r$方向を向いている。 $ \nabla\phi$$ -r$方向成分は、 $ -\partial\phi/\partial r=\gamma$である。従って

$\displaystyle \gamma=0$ (26)

となる必要がある。

軸上の要素、例えば図3の要素A, B, Cの$ \gamma$がそのようになってい るかは不明である。計算精度にも依存するであろう。従って、ここでは変な小細工をしな いで、軸上でも$ E_r$が出てきても、それは計算誤差として考えるのが良いであろう。こ のことから、我々は回転の計算同様に、図3の要素A, B, Cが共有するノー ドでの電場($ E_r$$ E_z$)は、要素AとCの平均とする。要素Bのように軸上の1つのノード しかない要素は、平均の計算に入れないこととする。

3.4 境界

この場合も回転と同様に考える。即ち、図4の様な境界があるとき、 要素A,B,Cが共有するノードの電場の値は、要素AとBの平均とする。要素Bは考えないもの とする。
ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成19年8月20日


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