雑多な基本事項
電磁石
コイル位置
真空
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電磁石: コイル位置コイルの位置と漏れ磁場の関係を調べました.ノーマルワインディングとバックレグワインディングを比較し,ノーマルワインディングの方が漏れ磁場が少ないことが分かりました. 目次はじめに最初の疑問は,「偏向磁石のどこにコイルを設置すれば漏れ磁場を最小にできるか?」です.様々な偏向磁石をネットで調べたところ,全て磁極にコイルを巻いることが分かりました(図3 と図4).さらに, コイルを付ける位置であるが、鉄の透磁率が無限大であれば、リターンヨークのどの位置に付けても良いが、透磁率が無限大ではないので、リターンヨークから、どんどん磁束が漏れてゆくので、通常、ギャップに近い所にコイルを付ける。ギャップの反対側のリターンヨークにコイルを付けるのをバックレグワインディングというが補正用とか特別の場合にしか使わない。
と明言されています (中山久義, OHO 2009 高ネルギー加速器セミナー「ビーム輸送の基礎」). なるほど,これは納得できる理由に思えます.しかし,すぐさま次のよう疑問が浮かびました. 図3と図4とで,青線のパスに沿った積分:
\begin{align}
\oint H\cdot\diff l=I
\end{align}
を考えます.上下の水平の積分は大きな値を持たないでしょう.さらに,垂直右側のパスを磁極から離すと,そこでの積分はゼロに近づきます.残りは,垂直の左側の積分です.これは,囲む電流がない分,バックレグワインディングの方が小さい.すると,漏れ磁場は,バックレグワインディングの方が小さいように思えます.これって本当だろうか?
世界中の施設でギャプ付近にコイルを巻く (本図書では,「ノーマルワインディング」という) の磁石を使っているからには,バックレグワインディングよりも漏れ磁場は少ないと思われますが,疑問は残ります.そこで,実際に計算して確かめることにしました. 数値方法と条件計算方法(おことわり)まずはじめに,断っておくことがあります.このページは,アマチュアーが自宅で趣味の範囲で作成しています.そのため,三次元の解析が不可能で,自由に使える二次元の磁場解析ソフトウェアー (POISSON) で計算を行います.ちょっとばかりいい加減なところもありますが,本質的には正しいと考えています.この辺りのいい加減さはご容赦願います. 二次元で解析するため,本質的に興味があるビーム軸に沿った解析ができません.そこで,図5に示す「計算軸」に沿った磁場を解析します.加速器設計で興味がある漏れ磁場は,ビーム軸に沿ったものでありますが,それと直交した軸を対象にします.いずれの漏れ磁場も磁極からの関係では似たものでしょう(?).計算軸の垂直方向のポールピースの長さは,かたや無限,もう一方は比較的短い有限ということが気になります. さらに,POISSONでの解析なので,z軸 (ビーム軸) には一様の並進対称性を仮定します. 計算条件先に述べたように,計算には POISSON を使います.そのため,以下の条件で計算します.
POISSONによる漏れ磁場の計算ここでは,POISSON を使った数値解析の結果を示します. 数値計算ノーマルワインディングとバックレグワインディングについて,起磁力を変えて計算を行いました.それぞれの結果を示します. ノーマルワインディング図8に,POISSON で計算するノーマルワインディングの計算の形状を示します.上下に対称な磁石を解析するので,上半分のみを計算します.二通りの起磁力(起磁力小:3000[AT],起磁力大:30000[AT])で計算します.座標は,ギャップの中心を $x=0$ とします.計算で得れれた磁場分布 (磁力線) を図9と図10に示します.水平面に沿った磁場分布のプロットは,次節に示します. バックレグワインディング図11に,POISSON で計算するバックレグワインディングの計算の形状を示します.ノーマルワインディング同様に,上半分のみを二通りの起磁力(起磁力小:3000[AT],起磁力大:30000[AT])で計算します.計算で得れれた磁場分布 (磁力線) を図12と図13に示します.水平面に沿った磁場分布のプロットは,次節に示します. 比較図14と図15に,二通りの起磁力の水平方向 (図5の計算軸) の磁場 ($B_y$) の分布を示します.明らかに,磁極の外側ではノーマルワインディングの方が漏れ磁場が少ないです. まとめここでの計算を通して,バックレグワインディングよりもノーマルワインディング (ギャップ付近にコイルを巻く) 方が,漏れ磁場が少ないことが分かりました. ページ作成情報参考資料更新履歴
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