Yamamoto's Laboratory
共同研究
KEK

基本的なこと

コンデンサー(キャパシター)とは

電気回路に使うコンデンサーは,英語ではありません.ドイツ語の「Kondensator」です.英語では「capacitor」(キャパシター)と言います.図1に電池と接続した様子を示します.コンデンサーの構造は単純で,絶縁された二枚の金属の板やフィルムなどを対向させています.電池を接続すると,それぞれの金属板に正負の電荷を蓄えることができます.実際は,金属板中の自由電子が動き,片側の板に電子が集まります.電子の移動元の板は電子が減るので,正に帯電したように見えます.

without secoudary
電池とコンデンサー

コンデンサーを特徴付ける重要な式

without secoudary
コンデンサーが関わる物理量

コンデンサーの問題を解く場合に,以下の3つの式がとても大事です.

\begin{align} & Q=CV & & C=\cfrac{\varepsilon S}{d}& & U=\cfrac{1}{2}CV^2 & \label{eq:capacitor_basic} \end{align}

電荷が一定の場合

この問題は,比較的簡単です.電池の作用が無いため,外部の力とコンデンサー内部の静電気力のみが働きます.これらの力をいきなり計算するのは大変なので,エネルギーから計算します.

電極に加わる力

問題設定と解き方

コンデンサーの両端の電極(金属板)の電荷量が一定の場合,そこに加わる力を計算します.具体的には,図の回路の次に動作に動作させるとコンデンサーの両端の金属板の電荷量が一定になります.

  1. 図3の回路のスイッチを閉じます.しばらくすると,コンデンサーの両端に電荷が蓄えられます.
  2. しばらくして,電流が流れなくなったなら,スイッチを開きます.

このように回路を動作させると,コンデンサーの電荷は一定のままになります.

この状態で,図4のようにコンデンサーの片側の電極(金属板)を固定し,もう一方を力\(F_x\)で引き上げます.その反作用は,コンデンサーの静電気力\(F_C\)です.これらの力は,いずれも座標と同じ,上方向を正の向きとしています.作用反作用の法則から, \begin{align} F_x=-Fc \label{eq:action-reaction_law} \end{align} となります.これらの力を求めます.

without secoudary without secoudary
コンデンサーの電荷量を一定にする回路 電荷が一定の場合,電極に働く力を求める概念図

コンデンサーの静電エネルギーの変化

元の状態である電極間の距離が\(x\)の時のコンデンサーのエネルギーを\(U_C\)として,\(\Delta x\)移動したときの増分を\(\Delta U_C\)とします.

\begin{align} U_C+\Delta U_C = \cfrac{1}{2}(C+\Delta C)(V+\Delta V)^2 &= \cfrac{Q^2}{2(C+\Delta C)} \nonumber \\ &= \cfrac{Q^2}{2}\cfrac{x+\Delta x}{\varepsilon S} \nonumber \\ &= \cfrac{Q^2}{2}\cfrac{x}{\varepsilon S}\left( 1+\cfrac{\Delta x}{x} \right) \nonumber \\ &= \cfrac{Q^2}{2C}\left( 1+\cfrac{\Delta x}{x} \right) \end{align}

途中の式の変形で,\(Q=CV=(C+\Delta C)(V+\Delta V)\)と言う関係式を使っています.電荷量\(Q\)が変化しないという条件です.以上から,

\begin{align} \Delta U_C = \cfrac{Q^2}{2C}\cfrac{\Delta x}{x} \label{eq:CC_plate:Delta_U_C} \end{align}

となります.電極間隔が増える(\(0\lt\Delta x\))とコンデンサーの蓄積エネルギーは増えます.このエネルギーの増加は,電極を引き上げる外部の力(\(F_x\))による仕事の結果です.

外力がした仕事

外力が\(F_x\)した仕事\(\Delta W\)は,静電気力\(F_C\)逆らって,\(\Delta x\)電極を引き上げた分です.

\begin{align} \Delta W = F_x\Delta x \label{eq:CC_plate:work_external_force} \end{align}

静電気力

エネルギー保存則から,外力がした仕事はコンデンサーの蓄積エネルギーの変化になります.すなわち,

\begin{align} \Delta W = \Delta U_C \end{align}

です.これに,式\eqref{eq:CC_plate:work_external_force}と\eqref{eq:CC_plate:Delta_U_C}を適用すると,

\begin{align} F_x\Delta x = \cfrac{Q^2}{2C}\cfrac{\Delta x}{x} \end{align}

が得られます.これから,外力は

\begin{align} F_x = \cfrac{Q^2}{2C}\cfrac{1}{x}=\cfrac{Q^2}{2}\cfrac{1}{\varepsilon S} \end{align}

です.電極間隔に寄らず一定の力で引き上げなくてはなりません.この引き上げる力の反作用がコンデンサーの内部エネルギーによる力\(F_C\)です.上方向を正とした場合,式\eqref{eq:action-reaction_law}の作用反作用の法則が成り立ちます.したがって,静電気力によりコンデンサーの電極が受ける力\(F_C\)は,

\begin{align} F_C =-\cfrac{Q^2}{2}\cfrac{1}{\varepsilon S} \end{align}

となります.この値は負となるので,静電気力で上の電極は下に引かれることが分かります.一方,下の電極は上方向に力を受けます.コンデンサーの両側の電極は引き合います.

誘電体に加わる力

問題設定と準備,解き方

次に,コンデンサーの両端の電極の電荷が一定の場合,その内部の誘電体に働く力を計算します.

Const charge dielectric Const charge circut
誘電体が受ける力を計算する概念図 誘電体の有無で回路に分割

この誘電体が受ける力を計算する時に必要な等比級数を示しておいた方が良いでしょう.公比 \(r\) の大きさ(絶対値)が 1に比べて,十分小さい場合は

\begin{align} \cfrac{1}{1-r}&=1+r+r^2+r^3+r^4+\cdots &\simeq 1+r \label{eq:geometric_series} \end{align}

となります.

コンデンサーの静電エネルギーの変化

静電容量の計算

解くべきモデルは図5ですが,これは図6のように二つのコンデンサーが並列接続したと考えます.この場合,二つのコンデンサーの電圧(\(V=Q/C\))は等しくなります.等しくないと,電荷が移動します.電圧が等しくなるように電荷が移動すると言っても良いでしょう.また,電荷保存則により,それぞれの電荷の合計(\(Q_1+Q2\))は,元の電荷量(\(Q\))と等しくなります.したがって,

\begin{eqnarray} \begin{cases} \cfrac{Q_1}{C_1}=\cfrac{Q_2}{C_2} & \\ Q_1+Q_2=Q & \end{cases} \end{eqnarray}

が成り立ちます.この連立方程式は,簡単に解けます.

\begin{align} &Q_1=\cfrac{C_1Q}{C_1+C2}& &Q_2=\cfrac{C_2Q}{C_1+C2}& \end{align}

これから,電荷はコンデンサーの容量の比で分配されることが分かります.両者の電圧が等しいからです.この式は,いつでも成立します.

誘電体の先端が \(x+\Delta x\) の時のそれぞれのコンデンサーの容量は,

\begin{align} & C_1=\cfrac{\varepsilon S(x+\Delta x)}{dL} & & C_2=\cfrac{\varepsilon_0 S(L-x-\Delta x)}{dL} & \label{eq:total_cap} \end{align}

となります.

後で使うことになる誘電体が\(\Delta x\)移動することによるコンデンサーの合成容量の変化\(\Delta C\)を計算しておきます.合成容量は

\begin{align} C+\Delta C & = C_1+C_2 \nonumber \\ \end{align}

と書けるので,

\begin{align} &C=\cfrac{\varepsilon Sx}{dL}+\cfrac{\varepsilon_0 S(L-x)}{dL}& &\Delta C = \cfrac{(\varepsilon-\varepsilon_0) S\Delta x}{dL} & \end{align}

となります.

エネルギーの計算

誘電体の先端が \(x\) の時のコンデンサーのエネルギーを \(U_C\),\(x+\Delta x\) の時のエネルギーを \(U_C+\Delta U_C\) とします.

\begin{align} U_C+\Delta U_C &= \frac{Q_1^2}{2C_1}+\frac{Q_2^2}{2C_2} \nonumber \\ &=\cfrac{C_1Q^2}{2(C_1+C_2)^2}+\cfrac{C_2Q^2}{2(C_1+C_2)^2} \nonumber \\ &=\cfrac{Q^2}{2(C_1+C_2)} \qquad \text{(並列コンデンサーのエネルギー)}\nonumber \\ &=\cfrac{Q^2}{2(C+\Delta C)} \nonumber \\ &=\cfrac{Q^2}{2C(1+\Delta C/C)} \nonumber \\ &=\cfrac{Q^2}{2C}\left(1-\cfrac{\Delta C}{C}\right) \qquad\text{(式\eqref{eq:geometric_series}を使った)} \\ \end{align}

したがって,誘電体が\(\Delta x\)移動したときのエネルギーの変化は,

\begin{align} \Delta U_C = -\cfrac{Q^2}{2C}\cfrac{\Delta C}{C} \label{eq:CC_dielec:Delta_U_C}\\ \end{align}

となります.この式と式\eqref{eq:CC_dielec:Delta_U_C}から,誘電体が\(\Delta x\)移動したことによるコンデンサーの蓄積エネルギーの変化は,

\begin{align} \Delta U_C &= -\cfrac{Q^2}{2}\cfrac{d^2L^2}{S^2\left[ (\varepsilon-\varepsilon_0)x+\varepsilon_0L\right]^2 }\cfrac{(\varepsilon-\varepsilon_0) S\Delta x}{dL} \nonumber \\ &= -\cfrac{Q^2}{2}\cfrac{dL(\varepsilon-\varepsilon_0)\Delta x}{S\left[ (\varepsilon-\varepsilon_0)x+\varepsilon_0L\right]^2 } \label{eq:CC_dielec:Delta_UC} \end{align}

とまとめられます.

誘電体の誘電率は高いので,\(0\leq(\varepsilon-\varepsilon_0)\)です.したがって,誘電体が正の方向(右側)に\(\Delta x\)移動すると,蓄積エネルギーの変化\(\Delta U_C\)は負になることが分かります.誘電体が右に移動すると,コンデンサーの蓄積エネルギーは減少します.この減少分は,蓄積エネルギーが外部に仕事をしたことになります.外力は負の仕事をすることになります.

外力がした仕事

外力が\(F_x\)した仕事\(\Delta W\)は,静電気力\(F_C\)逆らって,\(\Delta x\)電極を右に移動させた分です.

\begin{align} \Delta W = F_x\Delta x \label{eq:CC_dielec:work_external_force} \end{align}

静電気力

エネルギー保存則から,外力がした仕事はコンデンサーの蓄積エネルギーの変化になります.すなわち,

\begin{align} \Delta W = \Delta U_C \end{align}

です.これに,式\eqref{eq:CC_dielec:work_external_force}と\eqref{eq:CC_dielec:Delta_UC}を適用すると,

\begin{align} F_x\Delta x = -\cfrac{Q^2}{2}\cfrac{dL(\varepsilon-\varepsilon_0)\Delta x}{S\left[ (\varepsilon-\varepsilon_0)x+\varepsilon_0L\right]^2 } \end{align}

が得られます.これから,誘電体を正の方向に動かすために加える力は,

\begin{align} F_x=-\cfrac{Q^2}{2}\cfrac{dL(\varepsilon-\varepsilon_0)}{S\left[ (\varepsilon-\varepsilon_0)x+\varepsilon_0L\right]^2 } \end{align}

となります.ここで,式\eqref{eq:action-reaction_law}が示す加える力\(F_x\)と静電気力\(F_C\)の作用反作用の法則が成り立ちます.したがって,静電気力により誘電体が受ける力は,

\begin{align} F_C=\cfrac{Q^2}{2}\cfrac{dL(\varepsilon-\varepsilon_0)}{S\left[ (\varepsilon-\varepsilon_0)x+\varepsilon_0L\right]^2 } \end{align}

となります.コンデンサー内部の物質は誘電体なので,\(0\leq(\varepsilon-\varepsilon_0)\)です.したがって,静電気力は正になります.力の方向は,座標の正の方向を正としたので,誘電体は静電気力により左に引かれることが分かります.何もしなければ,誘電体は引き込まれます.

電圧が一定の場合

ここでもまた,前節同様にコンデンサー内部の力を,エネルギーを介して求めます.ただし,エネルギーの増減(受け渡し)が,外部の力とコンデンサー,電池の3つに増えます.そのため,やや計算が面倒になります.

電極に加わる力

問題設定と解き方

図7のようにコンデンサーの両端の電圧が一定の場合の電極間に働く力を求めます.電圧を一定にするために,電池を接続します.この電池は,コンデンサーの両端の電極の電荷量を調整します.すなわち,電荷を供給や受け取りが可能です.上側の電極に正の電荷を供給した場合,電池は仕事(エネルギーを供給)をしたことになります.逆に,上側の電極から電荷を受け取った場合には,エネルギーをもらったことになります.実際には,エネルギー保存則や式\eqref{eq:capacitor_basic}が成り立つように,電荷の移動が生じます.ここでは「電荷の移動が可能」ということが,前節と異なります.

Constant voltage. Fx
電圧が一定の場合,電極に働く力を求める概念図

電池を接続した状態で,図7のようにコンデンサーの片側の電極(金属板)を固定し,もう一方を力\(F_x\)で引き上げます.その反作用は,コンデンサーの静電気力\(F_C\)です.先ほどと同様に,これらの力はいずれも座標と同じ,上方向を正の向きとします.もちろん,ここでも式\eqref{eq:action-reaction_law}の作用反作用の法則が成り立ちます.

ここでは,静電気力が電極に及ぼす力\(F_C\)を計算します.そのために,上側の電極の引き上げるたことによる(1)コンデンサーの蓄積エネルギーの変動,(2)電池のエネルギーの変動,(3)電極を引き上げるための外力\(F_x\)の仕事の関係を調べます.

コンデンサーの静電エネルギーの変化

電極間の距離が\(x\)の時のコンデンサーのエネルギーを\(U_C\)として,\(\Delta x\)移動したときの増分を\(\Delta U_C\)とします.

\begin{align} U_C+\Delta U_C &= \cfrac{1}{2}(C+\Delta C)V^2 \nonumber \\ &= \cfrac{V^2}{2}\cfrac{\varepsilon S}{x+\Delta x} \nonumber \\ &= \cfrac{V^2}{2}\cfrac{\varepsilon S}{x}\cfrac{1}{1+\Delta x/x} \nonumber \\ &= \cfrac{V^2}{2}\cfrac{\varepsilon S}{x}\left( 1-\cfrac{\Delta x}{x} \right) \qquad\text{(式\eqref{eq:geometric_series}を使った)} \nonumber \\ &= \cfrac{CV^2}{2}\left( 1-\cfrac{\Delta x}{x} \right) \end{align}

以上から,コンデンサーの電極を\(\Delta x\)引き上げると,その内部のエネルギーは

\begin{align} \Delta U_C = -\cfrac{CV^2}{2}\cfrac{\Delta x}{x} \label{eq:CV_plate:Delta_UC} \end{align}

となります.電荷一定とした場合と異なり,電極間隔が増える(\(0\lt\Delta x\))とコンデンサーの蓄積エネルギーは減少します.このことから,静電気力は電荷一定の場合と逆で,上向きと考えてはいけません.電極を持ち上げるためにする仕事\(F_x\Delta x\)は,コンデンサーのエネルギーの増加と電池への仕事(電荷を戻す)に費やされます.電池の分を計算する必要があります.

電池のエネルギーの変化

電池へのエネルギーの流れを計算するために,コンデンサーの電荷量の変化を調べます.電極の位置\(x\)時のコンデンサーの電荷を\(Q\)とし,それを\(\Delta x\)引き上げたときの電荷の増分を\(\Delta Q\)とすると,式\eqref{eq:capacitor_basic}から,

\begin{align} Q+\Delta Q &= \cfrac{\varepsilon S}{x+\Delta x}V \nonumber \\ &= \cfrac{\varepsilon SV}{x}\cfrac{1}{1+\Delta x/x} \nonumber \\ &= \cfrac{\varepsilon SV}{x}\left(1-\cfrac{\Delta x}{x}\right) \qquad\text{(式\eqref{eq:geometric_series}を使った)} \nonumber \\ &= Q\left(1-\cfrac{\Delta x}{x}\right) \\ \end{align}

となります.したがって,コンデンサーの電荷量の変化は

\begin{align} \Delta Q &= -Q\cfrac{\Delta x}{x} \nonumber \\ &= -CV\cfrac{\Delta x}{x} \\ \end{align}

となります.電圧一定にして電極間隔を拡げると,蓄えられている電荷は減少します.静電容量が減っているから,電荷が減少しています.この減少した電荷は電池に戻されています.エネルギーが戻されているといっても良いでしょう.電池に戻されているエネルギー\(\Delta U_B\)は電荷量と電圧の積,

\begin{align} \Delta U_B &=-\Delta QV \nonumber \\ &=CV^2\cfrac{\Delta x}{x} \label{eq:CV_plate:Delta_UB} \end{align}

となります.コンデンサーの蓄積エネルギーの減少分のちょうど2倍が電池に戻っています.

外力がした仕事

外力が\(F_x\)した仕事\(\Delta W\)は,静電気力\(F_C\)逆らって,\(\Delta x\)電極を引き上げた分です.

\begin{align} \Delta W = F_x\Delta x \label{eq:CV_plate:work_external_force} \end{align}

静電気力

エネルギー保存則から,外力がした仕事はコンデンサーの蓄積エネルギーと電池のエネルギーの変化になります.すなわち,

\begin{align} \Delta W = \Delta U_C+\Delta U_B \end{align}

です.これに,式\eqref{eq:CV_plate:work_external_force}と\eqref{eq:CV_plate:Delta_UC},\eqref{eq:CV_plate:Delta_UB}を適用すると,

\begin{align} F_x\Delta x = -\cfrac{CV^2}{2}\cfrac{\Delta x}{x}+CV^2\cfrac{\Delta x}{x} \end{align}

となります.これから,電極を引き上げるための外力\(F_x\)は

\begin{align} F_x = \cfrac{CV^2}{2x} \end{align}

です.電荷一定の場合とは異なり,電極間隔に依存して,外力は変化させる必要があります.この引き上げる力の反作用がコンデンサーの内部エネルギーによる力\(F_C\)です.上方向を正とした場合,式\eqref{eq:action-reaction_law}の作用反作用の法則が成り立ちます.したがって,静電気力によりコンデンサーの電極が受ける力\(F_C\)は,

\begin{align} F_C =-\cfrac{CV^2}{2x} \end{align}

となります.この値は負となるので,静電気力で上の電極は下に引かれることが分かります.一方,下の電極は上方向に力を受けます.コンデンサーの両側の電極は引き合います.

誘電体に加わる力

問題設定と解き方

次に,コンデンサーの両端の電極の電圧が一定の場合,その内部の誘電体に働く力を計算します.

Const charge dielectric Const charge circut
誘電体が受ける力を計算する概念図 誘電体の有無で回路に分割

コンデンサーの静電エネルギーの変化

解くべきモデルは図8ですが,これは図8のように二つのコンデンサーが並列接続したと考えます.

誘電体の先端が \(x\) の時のコンデンサーのエネルギーを \(U_C\),\(x+\Delta x\) の時のエネルギーを \(U_C+\Delta U_C\) とします.

\begin{align} U_C+\Delta U_C &= \frac{C_1 V^2}{2}+\frac{C_2 V_2^2}{2} \nonumber \\ &=\cfrac{V^2}{2}(C_1+C_2) \nonumber \\ &=\cfrac{V^2}{2}\left [ \cfrac{\varepsilon S(x+\Delta x)}{dL}+\cfrac{\varepsilon_0 S(L-x-\Delta x)}{dL} \right ] \nonumber \\ &=\cfrac{V^2}{2}\left [ \cfrac{\varepsilon Sx}{dL}+\cfrac{\varepsilon_0 S(L-x)}{dL} \right ] + \cfrac{V^2}{2}\left [ \cfrac{S(\varepsilon-\varepsilon_0)\Delta x}{dL}\right ] \label{eq:CV:U+DU} \end{align}

この左辺の第一項は,誘電体の右端が\(x\)にある時のコンデンサーの蓄積エネルギーです.

したがって,誘電体が\(\Delta x\)移動したときのエネルギーの変化は,

\begin{align} \Delta U_C = \cfrac{V^2}{2}\left [ \cfrac{S(\varepsilon-\varepsilon_0)\Delta x}{dL}\right ] \label{eq:CV_dielec:Delta_UC}\\ \end{align}

となります.蓄積エネルギーは増加しています.また,式\eqref{eq:CV:U+DU}から

\begin{align} &C=\cfrac{\varepsilon Sx}{dL}+\cfrac{\varepsilon_0 S(L-x)}{dL} & &\Delta C=\cfrac{S(\varepsilon-\varepsilon_0)\Delta x}{dL} & \label{eq:CV:C_DC} \end{align}

が分かります.

電池のエネルギーの変化

電池へのエネルギーの流れを計算するために,コンデンサーの電荷量の変化を調べます.電極の位置\(x\)時のコンデンサーの電荷を\(Q\)とし,それを\(\Delta x\)引き上げたときの電荷の増分を\(\Delta Q\)とすると,式\eqref{eq:capacitor_basic}から,

\begin{align} Q+\Delta Q &= C_1V+C_2V \nonumber \\ &= (C_1+C_2)V \nonumber \\ &= (C+\Delta C)V \end{align}

となります.したがって,コンデンサーの電荷量の変化は

\begin{align} \Delta Q &= \Delta CV \\ &= \cfrac{S(\varepsilon-\varepsilon_0)\Delta xV}{dL} \end{align}

となります.コンデンサーの電荷は増えています.電池がコンデンサーや外部にエネルギーを与えたことになります.電池のエネルギーの変化は,この電荷量と電圧の積

\begin{align} \Delta U_B &= -\Delta QV \\ &= -\cfrac{S(\varepsilon-\varepsilon_0)\Delta xV^2}{dL} \label{eq:CV_elec:Delta_UB} \end{align}

です.\(\Delta Q\)はコンデンサーのエネルギーの変化で,これが増えると電池のエネルギーは減るのでマイナスがかかっています.

外力がした仕事

外力が\(F_x\)した仕事\(\Delta W\)は,静電気力\(F_C\)逆らって,距離\(\Delta x\)誘電体を移動させた分です.

\begin{align} \Delta W = F_x\Delta x \label{eq:CV_elec:work_external_force} \end{align}

静電気力

エネルギー保存則から,外力がした仕事はコンデンサーの蓄積エネルギーと電池のエネルギーの変化になります.すなわち,

\begin{align} \Delta W = \Delta U_C+\Delta U_B \end{align}

です.これに,式\eqref{eq:CV_elec:work_external_force}と\eqref{eq:CV_dielec:Delta_UC},\eqref{eq:CV_elec:Delta_UB}を適用すると,

\begin{align} F_x\Delta x &= \cfrac{V^2}{2}\left [ \cfrac{S(\varepsilon-\varepsilon_0)\Delta x}{dL}\right ] -\cfrac{S(\varepsilon-\varepsilon_0)\Delta xV^2}{dL} \nonumber \\ &= -\cfrac{V^2}{2}\left [ \cfrac{S(\varepsilon-\varepsilon_0)\Delta x}{dL}\right ] \end{align}

となります.外力は負の仕事,すなわちエネルギーを受け取ったことになります.これから,誘電体を右に移動させるための外力\(F_x\)は

\begin{align} F_x = -\cfrac{V^2}{2}\left [ \cfrac{S(\varepsilon-\varepsilon_0)}{dL}\right ] \end{align}

です.電荷一定の場合とは異なり,外力は一定の大きさになります.この誘電体を右に移動させる力の反作用がコンデンサーの内部エネルギーによる力\(F_C\)です.右方向を正とした場合,式\eqref{eq:action-reaction_law}の作用反作用の法則が成り立ちます.したがって,静電気力により誘電体が受ける力\(F_C\)は,

\begin{align} F_C =\cfrac{V^2}{2}\left [ \cfrac{S(\varepsilon-\varepsilon_0)}{dL}\right ] \end{align}

となります.この値は正となるので,静電気力で上の誘電体は引き込まれることが分かります.

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2014年03月08日 ページの新規作成


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