ここでは、曲線座標系での微分演算子について、説明する。なんと言ってもよく使われる
微分演算子は、勾配と発散、回転である。カーテシアン座標系では、これらの表現は簡単
であるが、曲線座標系ではどうなるだろうか?。いろいろな方法で曲線座標系のこれらの
微分演算子を導出することができるが、これまでに求めたスケール因子を使うと非常に簡
単でわかりやすい。
スカラー場の勾配は、
と定義できる。座標を
変化させると、スカラー場の値は変わるので
ある。スカラー場の変化は、勾配に座標の変化量の内積である。スカラー場の変化量はス
カラー量、座標の変化はベクトル量であるため、勾配はベクトル量である。勾配の方向は、
式(28)から分かるように、スカラー場の正の変化量が最大の方向で
ある。内積は、各々のベクトルの大きさと、それらのなす角の余弦を乗じた値になるから
である。
ここで、曲線座標系の微少変位ベクトル
は、式(18)
に示されている。これが、式(28)が右辺の
の項になる。次に、勾
配
はベクトル量なので、係数
を使って、
と表すことができる。この式の
を求めることができれば、曲線座標系の勾
配が分かる。そのために、これと式(18)を
式(28)に代入すると
となる。
一方、スカラー場は位置の関数であるため、独立変数
を使って、
|
(31) |
と書くことができる。この関数の全微分は、
|
(32) |
である。この結果と式(30)を比べると、
となる。これから
を求め、式(29に代入する
と、曲線座標系の勾配が
と求められる。これで、この節の目的である、曲線座標系の勾配を求める式を得ることが
できた。
この式の解釈は簡単で、とを固定して
変化させた場合の
の変化は、
|
(35) |
となる。ここで、
6の極限の操作をおこなうと、これは
となる。を固定しているので偏
微分になるのである。この偏微分がのみを変化させたときのスカラー場の変化
率、即ち、勾配の
方向成分である。ちょうど、式(34)の
右辺の第1項である。やも同様である。ここでも、スケール因子が重要な役
割を果たしている。
おまけとして、7.1節に、非常に危なっかしい方法でこの勾配の
求め方を示す。
ベクトル場
の発散
は、ある体積要素から流れ出る
フラックス7の総量をその体積で割ることにより求めら
れる。これは、スカラー量になる。例えば、図7のようにベクトル場に閉
じた領域を考え、その表面から流れ出るフラックスの総量を体積で割るのである。体積要
素をどんどん小さくすると、形状に依存しないである値に近づく。そして、この体積要素
をゼロにした極限が発散と定義できる。これを式で表すと、
となる。ここで、分母は体積となり、分子は表面積とその法線方向のベクトル場の積分と
なる。これは、分母分子の極限を計算しているので、ベクトル場の微分となっている。
それでは、曲線座標系の微少体積要素を用いて、その微分の内容を求めてみよう。微少体
積要素は局面からなる6面体で、図8のようになっている。この微少体積要素
のベクトル場の変化やスケール因子の変化をよく考えて、発散を求める。式
(36)を全て計算するのは紙面の都合上厳しいので、まずは
方向のフラックスを計算する。図でも分かるように、ベクトル場
の
方向成分
8
は、一方の面では入り込み、他方では出ている。さらに、この2面で、ベクトル
の値とスケール因子の値が異なることに注意が必要である。の面でのそれぞれ
の値を
とすると、でのそれらは、
となる。フラックスは面積とベクトルの成分の積なので、この2面の寄与は
となる。ここでは丁寧に計算したが、で一つの関数と考え
を
独立変数と考えれば、もっと簡単に式(40)を求めることができる。即ち、
この関数の一次の変化量は、
|
(41) |
となる。これに、を乗算すれば、式(40)と同じ結果が得られる。
残りの面に関しても、式(40)を
の順にサイ
クリックに入れ替えれば求めることができる。これらの全てのフラックスを合計して、局
面座標の微少体積要素で式(36)を考えると
となる。これが、局面座標系の発散を求める式である。
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図 8:
面での発散
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ベクトル場
の回転
は、面積要素の縁のベクトルの
線積分をその面積で割ることにより求められる。これは、面の法線方向に向かったベクト
ル量となる。図9のように計算する面は任意で、値はその放線方向のベク
トルの成分となる。通常は、計算が便利な、あるいは、が一定のそれぞ
れの面で計算する。図10に示すように、3つの面が交わるところが、
の位置を示し、その曲面の微少面で回転を計算する。そして、計算され
た回転の成分は、この曲面の法線方向で表すことができる。例えば、図9
のようにが一定の曲面の閉じた領域を考える。ここで、その領域の縁のベクトルを
線績分してその面積で割るのである。面積要素をどんどん小さくすると、形状に依存しな
いである値に近づく。この一定の値が、ベクトル場の回転の方向成分である。これ
は、、一定のそれぞれの面で考えることができるので、ベクトル場のある点で
3成分の値を持つことになる。そして、これはベクトル量になる。これが、ベクトル場の
回転である。これを式で表すと、
となる。ここで、分母は面積となり、分子は面の縁の接線方向のとベクトル場の線積分と
なる。これもまた、分母/分子の極限を計算しているので、ベクトル場の微分となっている。
発散のときと同様に、曲線座標系の微少面積要素を用いて、その微分の内容を求めてみよ
う。が一定の場合の微少体面積要素は、とからなる面で、図
11のようになっている。ベクトル場の変化やスケール因子の変化をよく考え
て、回転を求める。式(43)の
方向の成分を計算
することにする。この式の右辺の分母の面積要素は、式(24)で示さ
れているので、回転の総量を表す分子の計算を行う。これは、反時計回りにベクトル場の
接線成分を線積分することにより求められる。図から分かるように、ベクトル場
の
方向成分は、一方の辺では積分の方向と同じで、対向する辺で
は逆になる。また、この2辺ではで、ベクトルの値の他にスケール因子の値も異なる
ことに注意する事は発散のの計算と同じである。
方向のでの、そ
れぞれの値を(図11の右の辺) とすると、でのそれらは、
となる。従って、この2面(図の右と左の辺)の回転の寄与は、
となる。符号に気をつけて、同様のことを図11の上と下の辺で行うと、そこ
での回転の総量は
|
(47) |
となる。以上より、上下左右のすべての辺の線積分がわかった。面積要素は、
と分かっている。これから、線積分を面積で割った
方
向の回転は
となる。残りの2成分は、成分を表す記号を
とサイクリック
に変えれば求められる。従って、回転は
となる。ただ、この式は長くて憶えにくい。そこで、通常は、
とする事が多い。
図 11:
面での発散
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ホームページ: Yamamoto's laboratory
著者: 山本昌志
Yamamoto Masashi
平成20年3月24日