Yamamoto's Laboratory
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LaTeX化学mhchem.sty を使おう

LaTeX での化学関係の書き方を説明します.LaTeX のユーザーは数学や物理系,近頃は情報系の人が多いと思います.mhchem.sty を使うと,化学系の人にも LaTeX を便利に使うことができます.私は化学の専門家ではないので,間違いがある可能性があります.

フラスコでの反応の図

目次


はじめに

概要

TeX を使うと複雑な数式を素早く生成でき,その仕上がりも綺麗です.化学関係の表記も「mhchem.sty」を使えば,綺麗に仕上げることもできます.mhchem を使わないで,数式モードで化学記号を出力することは可能ですが,とても面倒です.化学に関する記号を記述する場合,mhchem を使うことを強く推奨します.

数式同様に化学に関わる式や記号も書き方が厳密決まっています.mchem は,その決まった書式で忠実に出力します.

設定

TeX Live の場合,インストールは不要です.自分でインストールしたい場合は,mhchem — Typeset chemical formulae/equations and Risk and Safety phrases からダウンロードしてインストール可能です.

mhchem.sty を使うためには,プリアンブルに「\usepackage[version=4]{mhchem}」と記述するだけです.version は mhchem の古いパッケージを使うための指定です.

mhchem を使うためには,いくつかのパッケージが必要です.例えば,expl3 や amsmath,calc などです.TeX Live ならインストールされているはずなので,きいする必要はないです.エラーが起きた場合,追加インストールすれば問題ありません.

化学式と反応式,分子,原子

ここでは,mhchem のマニュアルに沿って,mhchem の使い方を示します.

化学式

化学式は以下のように記述します.下付きにする数字が自動的に下付きになります.

化学式
コマンド 出力
\ce{H2O}
\ce{Sb2O3}

mhchem.sty ではスペースの位置は重要です.表の「H2O」を例に考えます.三つの文字 (H, 2, O) をスペース無しで連続で記載すると「H2O」と普通の水の分子の式になります.その一方,H と 2 の間にスペースが入る「\ce{H 2O}」とすると,「H2O」になります.スペースなしで三つの文字が並びます.次に,2 と O の間にスペースが入る「\ce{H2 O}」とすると,「H2 O」になります.下付きの2のあとにスペースが入ります.

化学量論係数・電荷

化学量論係数は化学式の前に付く整数で,引き続く分子の数を示します.下の表の左の列のような書き方ができます.分子 (イオン) の電荷量を書く場合は,化学式の最後に符号「+」あるいは「-」を書くだけです.複数の価数の場合は,数学と同じ上付きの記号「^」を使います.

化学量数・酸化状態・電荷
コマンド 出力 コマンド 出力
\ce{2H2O} \ce{H+}
\ce{2 H2O} \ce{CrO4^2-}
\ce{0.5H2O} \ce{[AgCl2]-}
\ce{1/2H2O} \ce{Y^99+}
\ce{(1/2)H2O} \ce{Y^{99+}}
\ce{$n$H2O}

不対電子・ラジカルドット

不対電子 (unpaired electron) とラジカルドットは,以下のように記述します.

不対電子とラジカルドット
コマンド 出力
\ce{OCO^{.-}}
\ce{NO^{(2.)-}}

化学反応式

化学反応式は以下のように記述します.矢印が自動的に伸びます.mhchem.sty には化学反応式のためのいろいろな矢印が用意されています.

化学反応式
コマンド 出力
\ce{CO2 + C -> 2 CO}
\ce{Hg^2+ ->[I-] HgI2 ->[I-] [Hg^{II}I4]^2-}
\ce{HCl + NaOH -> H2O + NaCl}
\ce{NH3 + H2O <=> NH4^+ + OH^-}

アイソトープ

アイソトープ (同位体) は,以下のように記述します.原子番号 (陽子数) とともに質量数 (陽子+中性子数) を記述します.

アイソトープ (同位体)
コマンド 出力
\ce{^{227}_{90}Th+}
\ce{^227_90Th+}
\ce{^{0}_{-1}n^{-}}
\ce{^0_-1n-}

状態

沈殿とガス

沈殿 (Precipitate) とガス (Gas) は以下のように記述します.上矢印がガスで,下矢印が沈殿です.下矢印は小文字の v を使います.また,矢印の前にはスペースが必要です.スペースが無いと「^」は上付き開始,「v]はただの v です.

沈殿とガス
コマンド 出力
\ce{SO4^2- + Ba^2+ -> BaSO4 v}
\ce{A v B (v) -> B ^ B (^)}

凝集

凝集 (Aggregation) の書き方は,以下のとおりです.凝集はコロイド粒子が集まってより大きな粒子になることです.

凝集
コマンド 出力
\ce{H2(aq)}
\ce{CO3^2-{}_{(aq)}}
\ce{NaOH(aq,$\infty$)}

酸化

酸化状態を表す場合も上付きの記号「^」を使います.

酸化状態
コマンド 出力
\ce{Fe^{II}Fe^{III}2O4}

括弧・演算子

括弧

化学式の部分構造を示すために (丸括弧) や [角括弧],{波括弧} が使われます.閉じ括弧の右下付き添え字は,括弧で括られた部分構造がその添え字の回数だけ繰り返されます.ワイルドカードを示すために n, m などの英小文字が使用される場合もああります.

化学式の括弧の書き方
コマンド 出力
\ce{(NH4)2S}
\ce{[\{(X2)3\}2]^3+}
\ce{[Fe(CN)6]^4-}
\ce{CH4 + 2$\left(\ce{O2 + 79/21 N2}\right)$}
\ce{CH3CO[O(CH2)2]_n OCOCH3}
\ce{[Fe^{II}(CN)6]^4-}

演算子

化学反応のための演算子です.

演算子
コマンド 出力
\ce{A + B}
\ce{A - B}
\ce{A = B}
\ce{A \pm B}

変数

化学式中の変数はイタリックで,その他の元素記号はローマン体とします.LaTeX の数式環境を使えば,この通りのフォントになります.

変数
コマンド 出力
$\ce{NO_x}$
$\ce{Fe^n+}$
$\ce{x Na(NH4)HPO4 ->[\Delta] (NaPO3)_x + x NH3 ^ + x H2O}$

結合

分子中の原子の結合様式を図式的に表わした化学式で,結合を表わす線を価標と言います.単結合の場合は1本線,二重結合では2本線,三重結合は3本線を使います.点線や矢印も使えますが,その意味は私には分かりません.

結合を表す記号
コマンド 出力
\ce{C6H5-CHO}
\ce{A-B=C#D}
\sffamily\bfseries\ce{A-B=C#D}
\ce{A\bond{-}B\bond{=}C\bond{#}D}
\ce{A\bond{1}B\bond{2}C\bond{3}D}
\ce{A\bond{~}B\bond{~-}C}
\ce{A\bond{~--}B\bond{~=}C\bond{-~-}D}
\ce{A\bond{...}B\bond{....}C}
\ce{A\bond{->}B\bond{<-}C}

矢印

化学反応を表す様々な矢印が使えます.

化学反応式の矢印
コマンド 出力 コマンド 出力
\ce{A -> B} \ce{A <- B}
\ce{A <-> B} \ce{A <--> B}
\ce{A <=> B} \ce{A <=>> B}
\ce{A <<=> B} \ce{A ->[H2O] B}
\ce{A ->[{txt a}][{txt b}] B} \ce{A ->[$x$][$x_i$] B}
\ce{A ->[${x}$] B}

ページ作成情報

参考資料

更新履歴

2021年08月01日 ページの新規作成


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